志谷さんがここの常連だったおかげで、撮影も快諾。
お勧めされた海鮮丼を振る舞うと同時にちょっとした雑談なんかも展開した。
今回は生配信でお送りする。
前回はオフだったのもあり、反応が乏しかった。
みう曰く、反応があった方が食べられるかも、ということで急遽生にした感じだ。
特に今回は風除け、じゃない大物ストリーマーとご一緒。
みうよりもそっちに意識が吸い寄せられるだろうと狙っての実行だ。
「こんにちは〜! みうだよ! 今日はですね、今回コラボしたこおりお姉たんや、ひかりお姉たんとは別行動中のお昼ご飯レポートとなります!」
:コラボお疲れ様( • ̀ω•́ )✧
:みうちゃんいつも通りできたね ٩(›´ω`‹ )ﻭ
:お兄たん、さっきのあれはちょっとよろしくなかったよ( ・᷄ὢ・᷅ )
:草( *˙ω˙*)و グッ!
草なのかヨシッなのかはっきりしてほしい。
が、ちょっとマッサージ効果が強すぎたのは反省している。
それでも相手型のリスナーは大喜びしてたし、いいだろう。
コラボを悪く言われたりはしなかったはずだ。
「今日は
「そうなの! そこですごい人と出逢っちゃって! コラボのお願いしたら快諾してくれちゃって! 今から紹介しますね?」
:誰だろ?_(:3 」∠)_
:ご飯系ストリーマー?( • ̀ω•́ )✧
:みうたんの推してる人とか?( ・᷄ὢ・᷅ )
:ご飯系はちょっとよくわからないかも ٩(›´ω`‹ )ﻭ
「しゃーす! バクバク!グルメレポートをやらせていただいてる志谷明日香と言います!」
手をワキワキさせながら、横合いから登場する志谷さん。
その動きは獰猛な神話生物に見えてならない。
が、見た目が可愛らしいので、全てを帳消しにしてしまえる魅力があった。
かわいい。APP18かな?
:かわいい ٩(›´ω`‹ )ﻭ
:かわいい_(:3 」∠)_
:みうちゃんの同年代かな?( *˙ω˙*)و グッ!
:推してる理由が判明した( • ̀ω•́ )✧
:これは保護者希望が多いのも頷ける( ・᷄ὢ・᷅ )
「はい、地元の
:全くのアウェイだとハズレのお店引くこともあるからね( ・᷄ὢ・᷅ )
:それ( *˙ω˙*)و グッ!
:お兄たんは調べてこなかったの?(*´ω`*)
「そうですね、近隣の大衆食堂ぐらいは調べたけど、やっぱり直に食べて回ってる人よりかは収集能力は落ちます。そして彼女はフードファイター。食べるのがお仕事の人ですから、ここは任せようと思いました」
:納得_(:3 」∠)_
:把握(*´ω`*)
:お兄たんもきちんとリサーチしてた( • ̀ω•́ )✧
:そりゃするでしょ筆頭保護者だし( ・᷄ὢ・᷅ )
「それで今回挑戦するメニューは! あ、ちょうど来ましたね。お兄たんカメラお願い」
「あいよ」
映し出される海鮮丼。
それは俺たちの想像している海鮮丼の斜め上の進化を見せていた。
:なんやこれ?( • ̀ω•́ )✧
:おい、どんぶりの間口が想像の斜め上すぎるんやが?_(:3 」∠)_
:どんぶり、と言うより寿司桶?(*´ω`*)
「うわ、すごいね!」
まるで高級寿司を頼んだかのような見た目。
桶にぎっしりと寿司ネタを詰め込んだ豪華な装いだった。
「ばらチラシって言ってわかるかな? 酢飯の上にネタをたくさん散らしたお寿司なんだけど、それを近海のネタで揃えちゃったのが
だろうな。これは普通に寿司桶だ。
5〜6人前で注文すると大概がこう言う桶に入って出前してくれる。
そう言うタイプの器に、酢飯ぎっしり、寿司ネタどっさり! それが一人に一個づつテーブルの上に置かれた。
お値段なんと980円!
安い!
けれど普通の胃袋を持ってる俺にはきつい!
「ここ、お持ち帰りなんかは?」
「できるよー」
「良かったね、お兄たん!」
良かったよ。まじで。
以前の
それを目の前の二人はワクワクしながら見つめている時点で、完食する気満々だ。
「それでは待ちきれない様子なのでいただこうか。あ、時間はあるからゆっくりね?」
「はーい」
「いただきます!」
元気よく手をあげるみうに対し志谷さんはここで食い溜めするぞーと言う顔で寿司桶に向かった。
おいおい、奢るとは言ったけど、まさかお代わりしないよな?
見ただけでお腹いっぱいになるような料理を前に、彼女は笑みを強めていた。
さて実食。
ん、これはまた見た目とは裏腹に優しい味付けだ。
最初は酢飯が強すぎるかなと思ったが、噛めば噛むほど口の中でネタと一体化するように調整されているな。
これは当たりの店を引いたなと言う実感が湧く。
この量でもすんなり食べてしまえそうな魅力があった。
「おいっしー!」
はい、かわいい。
みうのかわいい映像が撮れてお兄ちゃんは幸せである。
それはさておき、この寿司
全てが丁寧に仕事をされていて、
ちょっと油クドめなトロとかどうする気だ? と思って口に運べば、あら不思議。
これは漬けにしてあった。
しっかりと醤油につけたものではなく、あっさり目の付け込み具合。
だが、余分な油分は落ちていて、酢飯ともピッタリ合う感じ。
これはぜひ習いたいと思わせる逸品だ。
:お兄たん、意外と食べ進んでるね٩(›´ω`‹ )ﻭ
:本当だ、成長したね( ・᷄ὢ・᷅ )
「ここの海鮮丼はテレビが撮影しに来るくらい美味しいんですよ! 私でも三杯はいけちゃうくらいで、
もし本当に何かされてたら怖いので、そう言う発言はやめていただきたいものだ。
:みうちゃん帰ってきてー٩(›´ω`‹ )ﻭ
:でも美味しく食べてるみうちゃんも微笑ましくていいね( ・᷄ὢ・᷅ )
:もっといっぱい食べるんだよ_(:3 」∠)_
:ほらほら、お水も飲んで( • ̀ω•́ )✧
:たくさん食べられてえらいね?( *˙ω˙*)و グッ!
:え、お代わり? お兄たんいけそう?(*´ω`*)
俺は指で輪っかを作る。オッケーのサインだ。
みうはそれを読み取って、追加注文した。
その横では志谷さんが完食した寿司桶を寂しそうに見つめている。
ゲストをもてなすのも主催の務め。
一応こんな乞食みたいな人でも、みうの憧れの存在だ。
そして俺に当たりのお店を教えてくれた恩人でもある。
980円のおかわりくらい安いものだ。
:お代わりおっけーだって、良かったね( ・᷄ὢ・᷅ )
:明日香お姉たんも大喜び(*´ω`*)
:お兄たん太っ腹!( *˙ω˙*)و グッ!
:みててこっちまで微笑ましくなってくるよ( • ̀ω•́ )✧
「お兄たんありがとう! だーいすき!」
そんな志谷さんのコメントに、みうはギョッとしながら慌て始める。
「明日香お姉たん? お兄たんはみうのお兄たんなんだから取っちゃダメなんだよ?」
お、嫉妬か?
以前までは彼女できないやらモテないやら言ってたのに。
いざそれらしい振る舞いを見せられれば強烈な否定から入るか。
まぁ、実際に今俺にいなくなられると困るのはみうだしな。
だが安心しろ、みう。
俺はこんなかわいいだけの乞食にホイホイ引っかかるほど尻軽ではないぞ?
:みうちゃんが嫉妬を?( • ̀ω•́ )✧
:ジェラシー( *˙ω˙*)و グッ!
:みうちゃんもきちんと成長してるんだね(*´ω`*)
:お兄たんモテモテで羨ましいね_(:3 」∠)_
:どんな答えを出すんだろうね( ・᷄ὢ・᷅ )
「悪いが志谷さん、お兄たん呼びは家族限定なんだ」
「ちぇー」
「そ、そうだよ! お兄たんはあたしのお兄たんだもん! 明日香お姉たんは家族じゃないからお兄たんって呼んじゃダメなんだよ!」
:必死に自分の立場を守ろうとしてるみうたんきゃわわ(*´ω`*)
:いや、こんな有能お兄ちゃんそうそう手放せないでしょ( ・᷄ὢ・᷅ )
:それはそう( *˙ω˙*)و グッ!
:お兄ちゃん兼保護者だからね_(:3 」∠)_
「じゃあ、雇ってください。今行くとこないんです! 後生です」
:急に手のひら返してくるやん_(:3 」∠)_
:餌付けされた猫かな?( *˙ω˙*)و グッ!
:ありうる( • ̀ω•́ )✧
:この子食べっぷりいいもんね( ・᷄ὢ・᷅ )
:食費かかりそうな気配がプンプンするもんね(*´ω`*)
:お兄たんの経済力をアテにして?_(:3 」∠)_
:悪い女やで٩(›´ω`‹ )ﻭ
「あいにくとうちのクランに雇うとなると別件でな。瑠璃さん、九頭龍プロと相談した上で判断することになりそうだけど、大丈夫そ?」
「それでもなんでもいいので! あ、コラボはいつでもお待ちしてます!」
と言うことになった。
これ以上下世話な話が続くならと配信を停止。
編集に大幅なカットを入れてからデータを彼女に渡した。
流石に今後の雇用の話を持ち出されたら、彼女のチャンネルのリスナーもコメントに困るだろうし。
瑠璃さんに、もしかしたらみうと似たような契約者かもしれないと連絡を入れたら即採用。
理衣さんの寝かしつけ係に任命された。
彼女のスキル【かなり食べる子】はみうのアクティブ型攻撃とは異なり、常時発動型で周囲一体の魔力を食い散らかすという困り果てた能力だった。
が、これが理衣さんの【よく眠る子】の睡眠に反応してかなり起きられるようになったのは不幸中の幸いか。
そして志谷さんとコンビを解消したもう一人の子は、メキメキと実力を上げていき、今やEランクからCランクまで成長していた。
もしかして、その子の残存魔力を無意識に食い散らかしていた原因は志谷さんなんじゃないかって考えると怖くなった。
みうが魔法タイプじゃなくて本当に良かった。
そして威高さんとの約束は後日に持ち越した。
流石に縋り付いてくる志谷さんをそのままにしておくのは危なかったからな。
主に俺たちのチャンネル趣旨的に。