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第45話 コラボ配信《極光②》

「みなさま、本日もわたくしどもの探索配信にお付き合いいただきありがとうございますわ!」


「極光の探索配信、はっじまっるよー!」


:きちゃ!

:ひかりたん、今日も麗しい

:こおりたん、いつもよりテンション高くね?


「えへへ、実は本日は特別ゲストに来てもらってます。以前からオファーをかけてたんだけど、念願叶いまして、本日ようやくご対面するんですよー。いやぁ、今から緊張しますね」


:こおりたんが緊張するってどんな相手だろ?

:事前告知にあったけど、こおりたんの最推しらしいな

:そいつ強いの?

:なんか今日のフィルターいつもより強くね?

:思った。さっきから書き込み失敗しまくる

:『ちゃん』の部分も強制的に『たん』になるしな

:単発で打つ分にはいけるけど、前に人物名が入るとどうしてもダメ

:そこはほんと謎

:初見( • ̀ω•́ )✧

:初見さんいらっしゃい


「ゲストを紹介する前に、本日アタックを仕掛ける場所をご紹介いたしますわ。こおりさん」


「はいはーい! 今日はですね、夏到来ということで涼しさを感じられるインスマスのマリンピアダンジョンにやってきていまーす! 普段Cをメインに攻略してる私たちですけど、本日はゲストに合わせて少し低めに見積もっております!」


:テンション高っか

:本当にゲストとご対面するの楽しみにしてたんだねー

:遠足の前日に眠れなくなっちゃう子かな?_(:3 」∠)_

:インスマスでCって言えば難関だもんね

:あー、海底ダンジョンだっけ?

:そうそう

:あれはランク詐欺

:相性次第じゃB以上だからな

:こおりたん達、遠距離が苦手だもんね

:水棲系モンスターって遠距離タイプだっけ?

:基本能力に水魔法持ってるから、あいつら

:あー

:近接ファイターにタンクのコンビだと相性悪いか

:じゃあゲストは魔法特化型かな?

:楽しみ


「それではゲストのご紹介と参りましょうか」


「それでは本日のゲストは?」


 カメラが二人から位置を変え、一気に五つに分裂する。

 ここから先は俺とみうのメインステージだ。


:は? なんだこの過剰演出?

:カメラが増えた!

:て、どこから撮影してるんだ

:足元、真上、真横、正面、後ろ全て同時に空えてやがる

:まさかゲストって本人よりカメラマン目当て?

:まっさかー

:まっさかー( ・᷄ὢ・᷅ )

:ちょいちょい顔文字奴いるけど、なんなん?


「はーい、みうだよ! えへへ今日はずっと前からこおりお姉たんにオファーをもらってたんですけど、念願叶ってコラボとさせていただきました。まだ仮免許中ですけど、足を引っ張らないように頑張りたいと思います!」


 はい可愛い。

 コラボ相手のリスナーよ見よ、これが俺の妹である。

 俺がお兄ちゃんだぞ!

 そこ、間違えないように。


:えっ可愛い

:幼女だ

:幼女きちゃ!

:でも待って、幼女ってダンジョンに入れるっけ?

:そうじゃん

:違法?

:違法探索者幼女?

:属性盛りすぎだろ


「皆さーん、悪口はそこでストップですよ! みうちゃんは無免許でダンジョン探索者をやっているわけではありません。ちゃんとライセンス発行をしてもらってここにきています。実は政府の方から年齢適応外でスキルを取得してしまった方に特例として仮免許が発行されるというのがありまして、みうちゃんはその特例でダンジョンに入ることを認められたんですよ。ね?」


「はい。活動を認めてくれて、仮免許中なのにランクもFからEに上げてもらったんです! 今日は初めて上のダンジョンに来て緊張しています」


:かわちい

:健気やな

:若くして探索者になった奴特有の慢心がないのはいいぞー

:みうたん、お兄たんの紹介はしなくていいの?( *˙ω˙*)و グッ!


「あ、そうだった。お兄たーん!」


「ご紹介に預かった空海陸だ。が、正直俺はカメラの前に姿を現すつもりはない。わかるだろう? いくらゲストとはいえ、女子がキャッキャしてる場所に男が入っていったら冷める、と。もしかしたら萎えて配信を見るのをやめる奴もいるかもしれない。だが安心して欲しい。俺はみう以外に男が画面に映る配信を絶対に許可しない。当然、そこには俺も含まれる! イエス、ロリータ・ノータッチ! 幼女は愛でるだけに留めておけ! 以上!」


:なんだ、こいつ

:なんだ、こいつ

:なんだ、こいつ

:お兄たん、ブレない ٩(›´ω`‹ )ﻭ

:まぁ、正直それされたらキレる奴も出てくるから残当

:趣旨をよくわかってていいじゃん

:なんだかんだ言って、配信者の鏡

:この配信の趣旨を分かっててえらい

:つまりはカメラマンってことっでOK?


「ご理解いただき感謝する。役割としては妹専門カメラマン、兼テイマーだ。基本的に妹のピンチにはテイムモンスターのスライムが俺の代わりに参戦する」


:おk

:把握

:そういう趣旨ね

:理解

:テイマー、空海陸…もしかしてこいつって学園最強だったあの?

:知っているのか、雷電( ・᷄ὢ・᷅ )

:雷電って誰だよ

:ノリ悪いな

:多分ひかりたんの同期

:自主退学しちゃったんだっけ?

:理事長と揉めたらしいね

:なんか聞いたことある

:ブラックドラゴン単独撃破者だぞ

:強すぎ

:なんで辞めちゃったんだろ?


「それは今日のコラボと関係ないから言わないぞ? それとうちの妹はこう見えて病人だ。今回はリハビリとしてこちらのコラボに参加した次第だ」


:え?

:リハビリでE?

:頭おかしなるで

:リハビリでFもダメでしょ

:あー、ダンジョン病か

:なにそれ?

:ダンジョン外だと衰弱して、最悪死んじゃうやつ

:ダンジョンの中だと元気になるあれね

:だから探索者の真似事ができるのか

:仮免でもEに上がれたんならセンスあるでしょ

:期待


「ただいま空海くんからご説明いただいた通り。みうちゃん達はなんとあの九頭竜プロから実力を認められてクラン入りを果たしています。すごいですねー! チャンネル登録者数では、私たちの方が優っていますが、だからと言って弱小と侮れません。空海君もさることながら、妹のみうちゃんも同様に頼りになるので、期待しててくださいね!」


:こおりたんの最推し具合、確かめさせてもらおうか

:カメラワークがいつもより巧みだけど基本的に増えた分はゲストしか映さないのな

:ここ、誰のチャンネルだっけ?

:自由にしすぎやろ

:九頭竜プロの傘下なら安心かな?

:見せてもらおうか、その実力とやらを

:ある意味でいつも通りである_(:3 」∠)_

:見慣れた風景( ・᷄ὢ・᷅ )


「それでは早速進んでいきましょう」


「はーい」


「頑張るよ!」


 カメラはダンジョンの景色を念入りに見渡す。

 慎重に進む三人を、あらゆる角度から取り込んでいく。

 そこで遠くで蠢く影を発見した。


:全範囲見渡し型カメラって謎の安心感あるよね

:カメラで目の前は写しつつ、周囲も警戒

:これはこおりたんの出番減るで

:こおりたんは哨戒役よりもメインアタッカーだから

:逆に哨戒役を代わりにやってもらってると思えば

:擦り傷が減ってよかったね!


「前方から敵影3。臨戦体制よろー」


「はーい」


:軽い

:なんだ、このサーチ力

:遠くに敵影? まるで見えんぞ

:カメラ以外にも目を持ってるな、こいつ?

:さすが学園最強


 出てきたのは、魚が二足歩行しているサハギンだった。

 模してる魚は鰯やらメダカなどの弱い雑魚と呼ばれる種類。

 それでも身体中に水魔法をかけて驚くべき速さでみう達に迫ってきた。


「|◉〻◉)そいやー」


:きえぁああああ! 喋ったー

:難敵の抜けた掛け声をしてくるんだ

:え、ここの敵みんなこいつ? 冗談だろ

:マジです

:草


「させません!」


:ここでひかりたんの割り込みガードだ!

:納得の安心感!

:にしてもこれがE?

:ランク詐欺やろ


「|◎〻◎)グエーー、死んだンゴ」


「うわ、脆ッ」


:こおりたんの追い討ち!

:哀れ、雑魚は消滅した

:あー、スピード特化なのかな?

:体力はそんなにないんだ?

:ガードされた時点で死にかけだったんやなって


「|◉〻◉)そいやー」

「|◉〻◉)そいやー」


「スラッシュ! いっくよー!」


:幼女のスラッシュ!

:待って、その武器なんや

:金棒?

:クラッシュじゃなくてスラッシュ?


 垂直に振るわれた金棒が地面に爆音を生み出し、周囲に反響していく。

 音波によるアタックは、ダンジョン内に響き渡り、遠くで警戒していたサハギンをその場で自爆させていた。


「|◎〻◎)グエー」

「|◎〻◎)グエー」


:え、倒した?

:強スンギ

:これは期待できる

:雑魚を一掃!

:超・エキサイティング!

:まさかのマップ兵器である

:よもやそれを見越して金棒を?


「お手柄ですわね、みうさん」


「ありがとうございます! でも今回はお兄たんが敵の数を事前に教えてくれたからやれたことです!」


 ふんす、と鼻息を荒くしながらも、兄ちゃんを立ててくれる。

 いい妹を持てて幸せだ(感無量)


「それもありますが、遠くから魔法を撃たれていたらあっという間にピンチだったのも事実でしょう。今回は遠くの敵をお願いしてもよろしいかしら?」


「任せて!」


 初めて全幅の信頼を寄せられて、ちょっとドヤってる妹である。

 ドヤ顔がズームアップされているのを直感して、すぐに我に返ってしまった。

 残念。


:このカメラマン、妹ばっかり映しすぎだろ

:まぁまぁ、今回のMVPだし

:ゲストだからな

:そも、今回の戦闘では一番の功労者でもあるで

:それは確かに

:いっそカメラマンだけずっといてくれてもいいのよ?

:草

:妹ちゃんも引き込んでしまえ

:多分この兄、妹で釣ればホイホイついてくるで

:よく分かっていらっしゃる ٩(›´ω`‹ )ﻭ

:問題は九頭竜プロのクラメンだってことだよな

:探索者やっていく上で、あの家は敵に回しちゃまずいでしょ

:ダンジョン配信の始祖やで

:配信権握ってるんやっけ?

:誘えば最悪配信取り上げか

:カメラワークがウリなのに配信取り上げの道を選択するか?

:別にお兄たんを選択しなくても新たにカメラマンと哨戒役を足せばいい話でしょ

:一人で何役こなしてるんだって話

:それはそう

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