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第24話 実録!ユニークテイマー

 支給されたライセンスとバトルスーツ、腕章を持って。

 俺は深淵層があるダニッチにある森林ダンジョン【Aランク】に来ていた。


 あっさりとダンジョンセンターの受付を通らせてもらう。

 九頭竜プロの専属クランの腕章さえありゃ怖いもんなしだぜ!


 なんせただのアルバイターでもAランクにすんなり通れちまうんだからな。


「カメラヨシ、装備ヨシ、マジックバッグヨシ」


 瑠璃さんも大盤振る舞いしてくれてら。

 まさか世界中で発見数の少ないマジックバッグまで用意してくれてるなんて思いもしない。


 これは重量無制限のやつ……ではなく、二つでセットで、俺の方が預け口、もう片方が受け取り口の転移タイプ。


 俺がドロップアイテムに全く興味を示さないのもあって、取りこぼしがないようにしたいのだそうだ。


 今まで散々極大魔石結晶をハズレと言ってたツケが回ってきた感じだな。


 とかなんとか思っていたら、すぐにコメントがついた。


九頭竜:カメラ感度良好。好きに動いてくれ

熊 谷:なんか呼ばれたんだが?


 どうも俺の身内は招待されてるみたいだな。

 なんでまた、こんなことになったんだか。


「じゃ、軽く流しまーす」


 道ゆくモンスターをテイムしながら、モンスター合成で足を作る。まさか一階層から真っ当に攻略すると思っていたのだろうか?

 批判的なコメントが流れた。


九頭竜:これがモンスター合成か

熊 谷:おい、普通に攻略しないのか?

九頭竜:そうだぞ、これは後でうちのメンバーの紹介用も兼ねてるんだからな? PRってやつだ


「聞いてないんだよなぁ。そもそも俺は今日中に魔石を持って帰る予定なんですよね。そんなちまちま攻略してる余裕はないんすよ」


九頭竜:正論で返されてしまったな

熊 谷:あー、明日撮影日か


「撮影ってよりは仮免探索者日ですね。その時にこれから一緒に活動する子が寝たきりとかみうは悲しむと思うんですよ」


九頭竜:その通りだな、悪かった

熊 谷:それだけの理由で極大魔石結晶を取りにいくのか(困惑)


「俺には十分な理由ってだけですね」


 ショートカットマシマシで。

 ものの数十分で五階層に到着。雑魚にかまけている暇はないのだ。

 しかしここからは本腰を入れなくてはならないだろう。


 バトルスーツで戦力を傘増ししていても、俺の弱さが目立ってくる。


 テイマー系の永遠のテーマだな、操る本人が弱すぎる点は。

 まぁ抜け道も当然あるんだが。


九頭竜:あれは……

熊 谷:ショゴスか

九頭竜:あれもテイムを?


「できますね。今度からあいつが俺の武器です。あいつ便利なんですよ」


「てけり・り(こんにちは!)」


「ほぉら、捕まえた! 今日からお前は三連式ショットガンだ!」


「てけり(え、なになに?)」


「俺の願った通りに働くんだぞー? そうすれば魔石たっぷりやるからなー」


「てけり・り(いいよー)」


九頭竜:すんなり手懐けたな

熊 谷:Aランクパーティでも迂回するモンスターだぞ?


「まぁ、特性を知らなきゃそんなもんでしょ。こいつはスライムの親戚。ちょっと神性が強くて知識が人間以上にあるだけで」


熊谷:それはちょっととは言わないんだぞ?


 あーあー聞こえなーい。

 これぐらいの胆力がなければ、深淵には到達できないとだけ言っておこう。


 階層を降りていく。

 並み居るモンスターを強酸、取り込み、消化の三段階を踏まえてチクチク削り取り、討伐していく。

 小振りの魔石は全部こいつのおやつだ。


九頭竜:便利だな、その子

熊 谷:プロが壊れた

九頭竜:失礼な、いたら便利だなと思っただけだ

熊 谷:危険指定モンスターの代表格ですよ、そいつ


 目を覚まして! とばかりにショゴスの魅力に取り憑かれた瑠璃さん。

 まだ正気を保ててる熊谷さんを見習って!


 人間、利便性だけでリスクをガン無視できる人間ってそうそういないんだよね。

 まぁ、俺はこいつを仲間だと思って接してるので、取り捨て選択の範疇には収めてはいないんだが。


「もう一匹のショゴス発見! テイムしていいか? え?優先しろ? よーし、優先した上で合成しちゃうぞー」


 合成元に指定して、合成!

 ショゴスのグレードが上がって人間の言葉を喋るようになったぞ!


『強くなった? 嬉しい』


九頭竜:きゃーーかわいい!

熊 谷:プロが壊れた!


「今日からお前はグレートショゴスだ! いっぱい働いてもらうぞ!」


『魔石はちょうだいね』


「よーし、小振りではなく中振りも与えちゃうぞー」


『わぁい』


 そこから先は出会ったモンスターが溶かされ、捕食され、消化されていく地獄絵図。

 俺はショゴスを武器として扱い、武器扱いされても食事がいっぱいできて効率がいい! これはお得! と思ってくれたショゴスが五〜十層で猛威を振るった。


 ドロップの魔石はほとんどがショゴスの餌。

 これ以上成長させると大振りやら極大振りなども強請ってくるのでこれ以上は成長させないのだ。


九頭竜:君が小振りや中振りの魔石に興味を示さない理由がわかった

熊 谷:これはプロモーションとしてやっていけるのか?

九頭竜:まぁ、お蔵入りだろうな


 うーん、残当。

 ショゴスを使役可能って知ったお偉方は俺をこき使うに決まってるからな。

 そういう意味ではさっさとクランに入って正解だったぜ。


 ちなみにこのショゴスは学園ダンジョンにもいる。

 正確にはどこかのAランクダンジョンから繋がった横穴から湧き出てきた感じか。

 今はどうなってるか知らないけど、まぁなんとかなってるんじゃね?


 俺の代にAランク候補生とかいるっぽいし。


 十一層からは新顔もちらほら出てくる。

 それはありっぽい見た目をしているが、全身トゲトゲであり、羽も生えてる神性生物だった。

 あと見上げるほどでかい。3メートルくらいはあるかな?


九頭竜:あれは!ビヤーキー!? どうしてAランクなんかに!

熊 谷:その口ぶりからすると、普段Aにはいないってことでいいんだな?

九頭竜:あれはSランクの上層で陣取る階層ボスみたいなものだよ

熊 谷:坊主が戦力を上げすぎたってことか?

九頭竜:そうかもしれないな。外敵認定され強化個体を送り込まれた可能性がある


「ダンジョンのクソ仕様あるあるですね。でもまぁ、それが狙いなのでこいつもテイムしてどんどん強化させちゃうぞ! そして浅い層で魔石ゴロゴロって寸法ですわ」


九頭竜:ダンジョン関係者としては、やめてくれって言いたくなるな

熊 谷:ダンジョンエラーを起こすと、活動再開まで時間がかかるからな


 ダンジョンエラーというのは今回みたいにカテゴリーエラーを起こした戦力が低ランクダンジョンに入り込んだ際に起こる、魔力全振りのおもてなしみたいなもんだ。


 おもてなしの加減はランクによって変わってくるが、Aランクだとこれぐらいの感覚で神性生物が投入されてくるってことだな。


 ちなみに、こいつを倒してもドロップするのは魔石結晶大まで。

 こいつの上位のロードビヤーキーを倒して緑の極大魔石結晶が出る。


 欲しいのは青だ。緑ではない。


 青いのはまた別なので、こいつは戦力強化の仲間にするのだ。

 そのままテイムして足場のないマップの足に。

 その飛べる羽は今後活用してくから、許して!


九頭竜:ビヤーキーを足にするか

熊 谷:可能なのか?


「まだまだ序の口ですね。さらにもう一匹テイム、からのー」


 モンスター合成!

 ビヤーキーはロードビヤーキーになった!

 これで神性じゃんけんのチョキとパーが揃った。


 チョキはロードビヤーキー

 パーはグレートショゴスだ。

 そしてグーというのが狙っている水の神性ダゴンまたはそのつがいのハイドラだ。


 どっちもでかい上に水中戦を仕掛けてくるので、ショゴスは早いうちにゲットできて助かった。

 そして対ダゴンの切り札。それがこのロードビヤーキー。

 こいつの肌は魔法攻撃を反射するので、魔法主体のダゴンの切り札となる。

 あとは上からグレートショゴスの防御無視攻撃を仕掛ければ……


「はい、1個目ゲット。ダゴンを倒したらハイドラがセットで釣れるので、ここで待機。そのままグレートショゴスで引き打ちして……もう一個ゲット。この調子で20個くらい持って帰りましょうか」


九頭竜:あなた、普段からこんなことを?


「そうですね。逆にみうのお気に入りの赤の極大魔石結晶の入手場所ってどこかわかります?」


九頭竜:気になるけど、聞いたら元の生活に戻れなそうな気がするから聞かないことにするわ

熊 谷:それが懸命だな


 そんなこんなで時間にして数時間。

 俺は青の極大魔石結晶を想定より多めに持ち帰った。

 理衣さんは無事目覚めた。

 めでたし、めでたし。



───おまけ───


「そう言えば陸君」

「なんです?」

「君、行こうと思えば数時間で深淵まで行って帰ってこれたろう?」

「まぁ」

「なんでそれをしなかったんだい?」

「ちょっと会いたくないやつに捕捉されるかなと思って」

「会いたくない奴? 君にもそんな相手がいるのか。そいつの名前は?」

「ウィルバー・ウェイトリーって深淵徘徊ボスで」

「あ」

「仲良くなるまでは行ったんですけど、お母さんを復活させる儀式手伝うのをぶっちぎって今に至るんですよね」

「おう、それはそれは」

「ちなみにアイテムは揃ってるんで、復活は目前なんですよ」

「それは会いたくないな」

「ですよね、どの面下げて会えばいいのやら」

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