時間は私が家を出る前の、昼ほどまで
疲れもあったのかぐっすりと眠ってしまい、私が目を覚ましたのは十時過ぎだった。継母とリリーはすでに朝食を済ませており、馬車で買い物に出かけたそうだ。
キャベンディッシュ公は職務のため、家に帰ることはあまりない。特に今は次の社交界シーズンまでに、継母とリリーの買い物が出来るよう資金集めに
すでに今後の活動資金から報酬の受け取り手は、伯父であるルイス皇帝に変更済みだ。もうキャベンディッシュ家には銅貨一枚も入らない。
(陛下への金銭を、ちょろまかそうとする馬鹿な真似なんかはしないと思うけど)
私はロロの運んできてくれた朝食──もはや昼食だが、パンと野菜スープを平らげた。公爵令嬢とも思えぬメニューだが、私はあまり気にしていない。この辺は魔物討伐で野宿を経験することが、多かったからだろう。
食事を終えるとロロが用意してくれた
今日は引っ越しもあるので動きやすい
ロロも今日は引っ越しやら諸々の準備で忙しい。私が極東の男と話をするといった時も、同席するといった感じはなかった。昨日は彼をかなり警戒していたが、何か心境の変化でもあったのだろうか。私としては
改めて今日の予定を確認する。まずは極東の男との交渉、レオンハルトから詳しい話を聞く。そして家を出る、だ。なかなかなに忙しい。
さてまずは彼との交渉だが、極東の人間は一騎当千の力を持つという。多少話を盛っているとしても、戦力になるのであれば
極東の人間は身分を表すため、刀や持ち物に必ず
《|山桜紋《やまざくらもん》》。
忘れもしない家紋。
前回、協定を結ぶための使者として来た者が、腰に
「お前のせいで、お
そう言って泣き崩れた青年の声が頭から離れない。処刑台に登る時も、同じような
前回でも預言書はあったのだが、それでも回避し切れなかったし、私の味方は年を重ねるごとに減る一方だった。その原因は預言書の出来事ばかりに注視して、周囲の人たちの観察を
気づけば、私の周りに味方はいなかった。
なまじ預言書があったから、過信してしまったのだろう。一人で何とかしようと思いあがった結果──処刑へと繋がったのだ。
なんとしても交渉は成立させる。私は自分を
男の部屋に向かう前にレオンハルトの部屋を訪れたのだが、返事はない。
昨日、私と家族のやり取りを聞いていて
(この沈黙が怖い……)
まだ寝ているのかもしれないと楽観的に
(こっちもまだ寝ている? それとも意識が戻ってないとか?)
数分悩んだ結果。男の容態が不安になり、私は
部屋に人影は二つ。
一人は昨日ベッドに寝かせた
そして恐らく口論から取っ組み合い
(え?)
カチカチと大剣の刃が震えているのは、壮年の男が
「お嬢様に害なす虫は駆除するのも私の役目。貴方はなにやら、お強いようですし、お嬢様が来る前に仕留めさせていただきます」
(いや、私もういるんですけど……)
「いやいやー。そういう君こそ、あの姫さんの何なのかな? ことと次第によっては拙者も本気で相手することも、やぶさかじゃないないよ」
「未来の
(違います)
中の二人は私に気づいていないのか、攻防を続けている。このままいくと、どちらかが死ぬまで終わらなさそうだ。
なにより二人の笑顔が怖い。
(夢かもしれない……)
私は
(いやいやいや、ここは逃げたらだめでしょう!)
自分を