最初に救われたのは命。
次に感情を呼び起こし、魔人族の矜持を思い出させてくれた。
「古の歴史学者たちに思い知らせてやりましょう。今を生きる者たちに、真実を知らせたくはないのですか? 魔人族は魔物と戦う
魔人族の誰もが諦めていた想いを汲み取り、言葉にする。
「なら! 今日を生き抜いて本来の栄光を取り戻しましょう! 最終目的は南の領土の奪還! それでどうです? ワクワクしませんか?」
私だけではなく、魔人族の誰もがその言葉に血を
彼女の隣にいたら、次はどんな楽しいことが待っているだろうか。そう思わせてくれる。
***
朝日と共に、魔物が出現する。意味を得た戦いに心が躍った。
心地よい殺気。
土煙と、血と、獣の異臭。
「ハハハハハハッ!」
笑わずにはいられなかった。森の中を自分の庭かのように駆けて、獲物に飛び掛かる。
恐れは敵の攻撃を察知し、程よい緊張感は、筋肉に刺激を与えた。
蛇王バジリスクは地を
「
よく通る声が魔法を編む。
瞬時に展開される極大魔法は、広範囲に渡り毒そのものを消滅させた。
戦況はやや優勢。とはいえ騎士団の何名は既に石化していた。石化した瞬間、彼女は戦闘で石化が崩れないように強化魔法と防御魔法を順々にかけていく。その手腕に身惚れつつ──私は彼女が標的にならぬよう敵の目を引きつける。
稲妻のように周囲を駆け回り、魔物の注意を引き付け──重量級の
「クェエエエエエ!」
怪鳥コカトリスが広範囲で毒を撒き散らす。私はマントで毒を払い、その場に打ち捨てた。次いで蛇王バジリスクの
轟ッツ!!
「ギャアアア!」
「ガァアアアアアア!!」
森の上空は怪鳥コカトリスの領域。ドラゴンの翼、蛇の尾も厄介だが一番は目が合うことだ。それだけで相手を石化させてしまう。私の
それに合わせて
騎士団と即席の連携は取らず、魔人族は独断専行で戦う。私だけではなく、他の魔人族たちの戦いはいつも以上に過激で
(器用というレベルではないな)
私は稲妻の如く、空を我が物顔で飛ぶ怪鳥コカトリスの両翼を切り結ぶ。
「ギ、ギャアアアアアアアア」と怪鳥は耳が痛くなるような奇声を上げる。周囲の木々は脅えるように葉を揺らした。
「耳障りだ」
私は力任せに大剣をふるい、怪鳥コカトリスを
「さすが族長」
「やっぱ、身体能力はすさまじいな」
同族や騎士団の
白の
「レオンハルト、この調子であと二体いけますわよね!」
「もちろんです」
大きく息を吸い込み、呼吸を整える。
これらは全て
「ここで生き残ろうとしない人たちならいらない」と彼女は断言した。この先に待ち構えている
その上、魔人族の
私たちはバジリスクを
魔物討伐完了。
石化と同時に私の意識は途絶え──予定通りであれば二日後には復活するだろう。しかし、そこには彼女の姿はない。
たったその事実が、私の熱を下げる。
(ああ、やはり貴女と離れるのは……嫌だな……)