魔物討伐から十日後。
表向き私は
私の荷物は全て
前回の私はローワンたちの無事を祈るばかりで「彼らが助かるなら投獄されても構わない」と、教会上層部に泣きついたのだ。他人に選択権を委ねてしまった──なんと愚かで、楽な選択だっただろうか。
見張りの兵士の姿が居なくなるのを待って、私は
(
今になって恐怖が襲ってきた。幼い両手で震える自分の体を抱きしめる。
(騎士団、魔人族ともに半数以上は助けられたけど、全員は難しかった。……けれど、これで未来は大きく変わる……はず)
そう確信を持った
聞き覚えのある声が耳に入る。
──現在が確定し、未来が更新されました──
平坦で美しい声音。
私は息をするのも忘れてソレを見つめた。眼前に浮かぶ黒い背表紙、分厚い本のページがめくれる。今まで何もない空間に突如現れた預言書に、目を見開いた。
勝利の
勝手に最後のページまで
『帝国暦二〇七七年八月三一日。
処刑されたのはアイシャ。二十一歳。
キャベンディッシュ公爵の長女にして、聖女の失った彼女は《大魔女》として生涯を終える』
「…………」
未だ私の未来は変わらない。そう
私は本を手に取ると、「更新されたページ」をめくった。紙をめくる音が牢獄に響く。
該当のページには「幻狼騎士団と魔人族のレオンハルトたちの死」ではなく、「無事に隣国へと向かった」という内容に変更されていた。
急に視界が歪んだ。こぼれ落ちる涙が頬を伝う。
「そう簡単に最終的な未来は変わらない。……それでも、ローワンたちは生き残った。この事実だけは、喜んでいいわよね」
予言の回避。
今は喜びを噛みしめつつ、気持ちを引き締める。
戦いは始まったばかりなのだ。
私は
外気に触れた札は一瞬にして愛らしい小鳥の姿へと変わる。十センチほどの黄緑色の精霊の類であるこれらは、使い魔のようなものだ。簡略式のため連絡の用途でしか使えないが、届けたい相手にしか感知できない代物だ。
レオンハルトとしては、私からの連絡を期待して渡したのだろう。けれど今は別の手段で使わせてもらうことにした。
教会上層部のミスは、聖女で、公爵令嬢であり、皇族の私を牢獄に入れたことだ。この状況を今回は大いに使わせて貰おう。
「君はこれをルイス=シグルズ・ガルシア皇帝に。こっちの君は、私の使用人であるロロに渡してちょうだい」
それぞれ真珠を一つずつ
蛍火のように夜空に吸い込まれていった光を、ぼんやりと眺める。
(次は皇帝との
あれこれと考え事をしていたせいか、うつらうつらと体が眠気に誘われ──私は重い