ローワンは冗談っぽい口調だが、先ほどまでと雰囲気がまるで違う。それに対してレオンハルトが口を
「……そこの人間。なぜ私の愛しい人に秘策を尋ねる? 彼女は
「アイシャは未来視が出来るので、参謀のようなことを任せているだけだ。なにか問題でも?」
「いいや」
(レオンハルトって、私以外だと
集まった魔人族に視線を送る。まずは空気を読めそうな好青年。鹿の角が特徴的だ。彼と視線が合うと顔を真っ青にして、ソッポを向かれてしまった。失敗。
異性だとダメなのかと、牛の角と栗色の長い髪が特徴の美女へと視線を向ける。──が頬を赤らめて終了。なんで?
うん、同族でレオンハルトを止められる人はいなそうだ。ふとレオンハルトと目が合ったので「体を離してほしい」と一応目で
「アイシャ。話が逸れてしまったが、続けてくれ」
「わかったわ」
「……このまま
「我らの魔人族は、恩人である貴女にどこまでもお供しましょう」
「──と、魔人族の彼らは戦うことを考えているので、このまま魔物と戦い──騎士団も含めて、
全員に衝撃が走った。表面上の言葉だけを受け取るなら、「死ね」と言っているようなものだ。
「石化か」とレオンハルトは戦いを前に、高揚しているようだ。彼以外の魔人族は何か言いたそうな顔しているが、騎士団の全員は私の説明を待っていてくれた。
「ここで重要なのは魔人族、騎士団共に
「確かに全員が捕まるのは最悪ですが、石化する必要はあるとは思えないけど?」
イリーナの疑問に私は頷いた。
「騎士団と魔人族が数人
「全滅というなら、
「死体の回収は可能でしょう。しかし石化の場合、魔素の濃度が高いため
「だから回収されにくい、というわけね」
「はい。今回の魔物は石化や毒を使う魔物たちですので、使うなら都合がいいのです。それに本人たちを連行しなければ
予言書には今回襲撃する魔物を放置した場合、のちのち帝国の三分の一が崩壊すると書かれていた。だからこそ、魔物討伐は必須。
今回こそは全員で生き残る。そう強く思い、私は言葉を紡ぐ。
「補足しますが石化を解除する場合、
「聖女アイシャなら?」
さすがはローワン。私は首肯する。
今の私は過去から戻った時に
「《|耐性《レジスト》》、《|保護《プロテクト》》、《|逆行回復《リタイムキュア》》、《|白き光の恩寵《ホーリー・グレイス》》」
白い光が円を描き、
「多重魔法! アイシャいつの間にそんな魔法を覚えたの? すごいわね!」
「そ、それは……レオンハルトの一撃を防いだ時に、かなりの経験値を獲得したんです」
嘘だけれど、しれっと答えた。
扱える能力が増えた理由は「死に戻りしたこと」だと思うが、さすがに言えなかった。
「魔人族の方々は石化するまでの間、好きに暴れてください。魔法による後方支援は私が行います」
「それは心強い。頼りにしていますよ、私の聖女」
レオンハルトを含めた魔人族は快諾した。彼らは戦えるその瞬間まで命を燃やす種族だ。だからこそ次の言葉で釘を刺しておかねばならない。
「ただし石化が始まったら、必ず動かないで石になってくださいね」
「なぜ?」
「そのまま暴れていると、石化した部分に
「それは出来ないですね。目の前に敵が居るならどちらかが死ぬまで私たちは止まらない。そういう種族だと知っているでしょう?」
ここぞとばかりに言い切った。なにが「生きる意味が見いだせない」だ。戦いになると本当にスイッチが切り替わる。破滅的な美しさで微笑んだレオンハルトに、私は笑みを返す。
内心、
(魔人族はそういう方々だからこそ、教会の上層部は利用することにしたのでしょうね。戦闘狂なら、戦さ場を途中退場するつもりはない。けれど教会側は魔人族の戦いを、その生き方を直に触れた訳じゃない。それなら、私にも勝算はある)
教会が戦いの場を与えるなら、私は──を彼らに提案しよう。選ぶかどうかは彼ら次第だけれど。