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第12話

 アール君と急いでキッチンに向かったけど、パパとママは怒ってはいなかった。むしろシュワシュワを美味しそうにコップで飲むママと、密封容器ごと、ゴクゴク喉を鳴らせ飲んでいるパパがいた。


「うまい? なんだ? 喉がピリリする飲み物は!」


「美味しい、コレ、エルバが作ったの?」


 ……ちょうど、冷やし庫で冷えて飲みごろを全部飲まれた。


「そうだけど……パパ、容器のまま全部飲んじゃうなんて、アール君とシュワシュワが冷えるの待っていたのに」


「すまん。これはシュワシュワというのか……仕事からの帰り、少し飲むつもりが喉を通り過ぎる爽快感とピリリが美味くてな」


「ごめんね、エルバ。もう一度シュワシュワ作ってみて、ママが魔法で冷やすから」


「いいの? アール君、冷えたシュワシュワが飲めるよ」


「それは楽しみです」


 飲み終えた容器に水瓶から魔法水を入れて、エルバの畑から採取したシュワシュワの実を、アイテムボックスから取り出して一粒入れた。


 この赤い実にママが食いつく。


「エルバ、その赤い実はなに? 食用? エルブ原っぱで見つけたの?」


「そうだけど……ちゃんと、食用だから安心して」


「……わかったわ。でも、見たことがない実で驚いた。あの原っぱに……まだ私たちの知らない植物があるなんて、発見したエルバはすごいわ。コメ草の時もそうだけど、エルバには不思議な力があるのね」


「そうなのか! 俺の娘は凄いな」


 パパとママは嬉しそうに笑い、それ以上はくわしく聞いてこなかった。



ピコン。


《料理レベルが1レベルに上がりました》


 シュワシュワで私の料理レベルが上がった。

 ただ、魔法水に赤い実を入れただけなんだけど……


《新しく、エルバのレシピ帳を取得いたしました。シュワシュワをレシピ帳に載せますか》


 エルバのレシピ帳?

 私に新しいスキルが増えた?


《レシピ帳に載せますか?》


 お願いします。

 シュワシュワがエルバのレシピ帳、一ページに載ったらしい……あとで確認しよっと。




「【アイス】」とお母さんは氷魔法を唱えた。

 水色の魔法陣が光り、シュワシュワが入る容器の中に氷がコロンコロンと増えていった。


 飲みたかった氷で冷やしたシュワシュワ。

 氷で冷やされ、炭酸水がプクプク泡を出してコップにそそがれる。


「はい、エルバ、アール君。冷えたシュワシュワ」


「ありがとう、ママ、いただきます……ゴク、ゴクゴク、んんっ、喉がシュワシュワする。んん、冷えたシュワシュワはやっぱり美味しい!」


「エルバ様、パパ様、ママ様、冷やすとまた格別です!」


「ホントに、うまいな!」


「美味しいわね。ものは提案なんだけど――これに果物を入れるのはどう?」


「果物? いれたい」

「いま温室から持ってくるわね」


 ママが温室に果物をとりに行った。

 炭酸水にフルーツを入れたら? だなんて、絶対に美味しいに決まっている。


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