毒草と麻痺草を食べたことが、パパとママにバレてしまい。一週間も、エルブ原っぱに行くのを禁止された。
次の日、私とママ、アール君は私の部屋にいる。
いまから、アール君の寝る場所をママの魔法で作るんだ。
「エルバの部屋が狭くなるけどいい?」
「いいよ」と頷くと、ママは魔法で私の部屋の家具を動かし、出来たスペースにアール君の場所を作り、アール君用の小さなベッドを置いた。
アール君の食事は私達と同じでいいし。
トイレ、お風呂も同じでいいみたい。
「エルバ、アール君、できたわよ」
私の部屋の中にできた、アール君の部屋。
「可愛いベッドとソファーだ。アール君、私の本棚と棚は好きなように使って」
「はい、ありがとうございます」
「遠慮はいらない、アール君は家族だもの」
アール君は嬉しそうに頭をさげ。
「エルバ様、ママ様、よろしくお願いします」
「うん、よろしくね」
「よろしく。アール君には、お転婆なエルバをしっかり見張っていてもらわないとね」
ママが怖い。
「ママ様、任せてください。しっかり、エルバ様を見張ります」
アール君は嬉しそうに二本の尻尾を揺らした。
自分の行い(毒草、麻痺草を食べた)で、一週間も原っぱにいけない。ママに頼み込んで、アール君と一緒ならいいと書庫の鍵を開けてもらった。
古い本、紙の香り。
「久しぶりの書庫だ!」
「エルバ様、危ない本を読み出したら止めますから」
「はーい」
植物図鑑と食べもの図鑑、ほかには? とさかざして古い術式が書かれた魔導書をみつけた。文字が読めないかもと本を開いたのだけど、スラスラ文字が読めてしまった。
(こんなにも、難しい文字も読めてしまうなんて……)
と、自分の力に驚いていた。それを隣でみていたアール君は「エルバ様は僕のご主人様です。僕の能力で、その魔導書を読んでいるのですよ」と言った。
「え? じゃ、いま私はアール君の力を借りて、この本を読んでいるということ?」
「はい、そうです。血の契約はご主人様の能力が、使い魔よりも上回っていないと、成立しない術式なんです」
「使い魔より上回る? 私の力がアール君よりも上なの?」
「はい。知識、頭脳、技術はまだ僕のほうが上で、エルバ様は力だけですけどね」
「そうなんだ……」
手に持った魔導書を開くと血の契約が載っていた。
やはり、アール君と私がした契約は危険なもので……主人の私が怪我をすると、使い魔のアール君が代わりにその傷を受ける。
術式を無理やり解除しようとしすると、大怪我を負うか、下手をすれば死んでしまうと魔導書には書いてあった。
「ちょっと、アール君! あなたは無茶しすぎだよ……」
私の隣で、のほほんと器用に料理の本を開いて、読んでいるアール君。
「僕はどうしても、エルバ様の使い魔になりたかった。一緒にいると楽しそうなので……」
「楽しそうって……そんなのわかんないじゃない、アール君……。ううん、わかった! 二人でいろいろ経験して楽しもう。ぜったいにアール君を楽しいってい思わせる!」
「はい、お願いします」と、アール君は尻尾を揺らした。
今日も書庫で、アール君と仲良く本を読んでいた。
アール君が本を閉じて。
「エルバ様、喉が乾きませんか? 僕、シュワシュワが飲みたいです」
「シュワシュワか、いいね。アール君、キッチンに行こう」
二人でキッチンに向かった。
私はエルバの畑を開き、シュワシュワの実を収穫すると、十粒程のシュワシュワの赤い実が採れた。薬草の場合はいったん畑から消えちゃうけど、木の場合は実だけが収穫できるんだ。
流し場の隣に置かれた、魔法水が貯められた水瓶。
棚から、水をいれるピッチャーを取りだして、魔法水をピッチャーにいれて、シュワシュワの実を一粒、魔法水に落とした。
実からシュワシュワ気泡が溢れて、炭酸水に変わる。
「できた、飲もう!」
二人分のコップにいれて「いただきます」と、できたてのシュワシュワを一気に飲み干す。
喉に染みる炭酸水。
「プッフワァ! ……美味しいけど、冷たいシュワシュワも飲みたいな」
「さいきん、暑くなってきましたからね。僕も冷たいシュワシュワを飲んでみたいです」
「私も飲みたいけど。問題はどうやってシュワシュワを冷やすかよ。……氷を入れる容器は持っているけど……そうだ、アール君の魔法で冷やすか、魔法で氷をだせない?」
「魔法で氷ですか……出したいのはやまやまですが、火属性の僕では無理な話しです」
「アール君は火属性なんだ。私はまだ魔法を使えないし……」
一応、氷魔法は使えるみたいだから冷やせるのだけど……魔法を使ったら使ったで、パパとママにバレたら怒られる。
「エルバ様、ピッチャーごと、冷やし庫の中に入れるのはどうでしょう?」
「いいアイデアだけど、蓋付きじゃないとシュワシュワが抜けると思うんだ……あ、そうだ、この辺に密封容器がなかったかな?」
下の棚をあさり密封容器をみつけた、いま作ったシュワシュワは二人で飲み干して、新しく作り冷やし庫にしまう。
「アール君、一時間くらい待てば冷えるよね」
「はい、冷えていますね。エルバ様、一時間後が楽しみです」
「そうだね、私も楽しみ!」
一時間くらい、書庫で時間をつぶそうと向かった。
お昼前、アール君と仲良く書庫で本を読んでいた。
「な、なんだ、この飲み物は!」
「どうしたの? まあ、エルバの仕業ね、エルバ! キッチンに来なさい!」
パパの雄叫びと、ママの私を呼ぶ声が聞こえた。
「エルバ様?」
「どうやら、冷やし庫で冷やしていた私達のシュワシュワを、仕事から帰ってきたパパが勝手に飲んだみたい……」
「ええ、そのようですね」
二人で顔を見合わせた頷いた。