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第11話

 毒草と麻痺草を食べたことが、パパとママにバレてしまい。一週間も、エルブ原っぱに行くのを禁止された。


 次の日、私とママ、アール君は私の部屋にいる。

 いまから、アール君の寝る場所をママの魔法で作るんだ。


「エルバの部屋が狭くなるけどいい?」


「いいよ」と頷くと、ママは魔法で私の部屋の家具を動かし、出来たスペースにアール君の場所を作り、アール君用の小さなベッドを置いた。


 アール君の食事は私達と同じでいいし。

 トイレ、お風呂も同じでいいみたい。 


「エルバ、アール君、できたわよ」


 私の部屋の中にできた、アール君の部屋。


「可愛いベッドとソファーだ。アール君、私の本棚と棚は好きなように使って」


「はい、ありがとうございます」

「遠慮はいらない、アール君は家族だもの」


 アール君は嬉しそうに頭をさげ。


「エルバ様、ママ様、よろしくお願いします」

「うん、よろしくね」

「よろしく。アール君には、お転婆なエルバをしっかり見張っていてもらわないとね」


 ママが怖い。


「ママ様、任せてください。しっかり、エルバ様を見張ります」


 アール君は嬉しそうに二本の尻尾を揺らした。




 自分の行い(毒草、麻痺草を食べた)で、一週間も原っぱにいけない。ママに頼み込んで、アール君と一緒ならいいと書庫の鍵を開けてもらった。 


 古い本、紙の香り。


「久しぶりの書庫だ!」

「エルバ様、危ない本を読み出したら止めますから」


「はーい」


 植物図鑑と食べもの図鑑、ほかには? とさかざして古い術式が書かれた魔導書をみつけた。文字が読めないかもと本を開いたのだけど、スラスラ文字が読めてしまった。


(こんなにも、難しい文字も読めてしまうなんて……)


 と、自分の力に驚いていた。それを隣でみていたアール君は「エルバ様は僕のご主人様です。僕の能力で、その魔導書を読んでいるのですよ」と言った。


「え? じゃ、いま私はアール君の力を借りて、この本を読んでいるということ?」


「はい、そうです。血の契約はご主人様の能力が、使い魔よりも上回っていないと、成立しない術式なんです」


「使い魔より上回る? 私の力がアール君よりも上なの?」 


「はい。知識、頭脳、技術はまだ僕のほうが上で、エルバ様は力だけですけどね」


「そうなんだ……」


 手に持った魔導書を開くと血の契約が載っていた。

 やはり、アール君と私がした契約は危険なもので……主人の私が怪我をすると、使い魔のアール君が代わりにその傷を受ける。


 術式を無理やり解除しようとしすると、大怪我を負うか、下手をすれば死んでしまうと魔導書には書いてあった。


「ちょっと、アール君! あなたは無茶しすぎだよ……」


 私の隣で、のほほんと器用に料理の本を開いて、読んでいるアール君。


「僕はどうしても、エルバ様の使い魔になりたかった。一緒にいると楽しそうなので……」


「楽しそうって……そんなのわかんないじゃない、アール君……。ううん、わかった! 二人でいろいろ経験して楽しもう。ぜったいにアール君を楽しいってい思わせる!」


「はい、お願いします」と、アール君は尻尾を揺らした。




 今日も書庫で、アール君と仲良く本を読んでいた。

 アール君が本を閉じて。


「エルバ様、喉が乾きませんか? 僕、シュワシュワが飲みたいです」


「シュワシュワか、いいね。アール君、キッチンに行こう」


 二人でキッチンに向かった。


 私はエルバの畑を開き、シュワシュワの実を収穫すると、十粒程のシュワシュワの赤い実が採れた。薬草の場合はいったん畑から消えちゃうけど、木の場合は実だけが収穫できるんだ。




 流し場の隣に置かれた、魔法水が貯められた水瓶。

 棚から、水をいれるピッチャーを取りだして、魔法水をピッチャーにいれて、シュワシュワの実を一粒、魔法水に落とした。


 実からシュワシュワ気泡が溢れて、炭酸水に変わる。


「できた、飲もう!」


 二人分のコップにいれて「いただきます」と、できたてのシュワシュワを一気に飲み干す。


 喉に染みる炭酸水。


「プッフワァ! ……美味しいけど、冷たいシュワシュワも飲みたいな」


「さいきん、暑くなってきましたからね。僕も冷たいシュワシュワを飲んでみたいです」


「私も飲みたいけど。問題はどうやってシュワシュワを冷やすかよ。……氷を入れる容器は持っているけど……そうだ、アール君の魔法で冷やすか、魔法で氷をだせない?」


「魔法で氷ですか……出したいのはやまやまですが、火属性の僕では無理な話しです」


「アール君は火属性なんだ。私はまだ魔法を使えないし……」


 一応、氷魔法は使えるみたいだから冷やせるのだけど……魔法を使ったら使ったで、パパとママにバレたら怒られる。


「エルバ様、ピッチャーごと、冷やし庫の中に入れるのはどうでしょう?」


「いいアイデアだけど、蓋付きじゃないとシュワシュワが抜けると思うんだ……あ、そうだ、この辺に密封容器がなかったかな?」


 下の棚をあさり密封容器をみつけた、いま作ったシュワシュワは二人で飲み干して、新しく作り冷やし庫にしまう。


「アール君、一時間くらい待てば冷えるよね」

「はい、冷えていますね。エルバ様、一時間後が楽しみです」


「そうだね、私も楽しみ!」


 一時間くらい、書庫で時間をつぶそうと向かった。




 お昼前、アール君と仲良く書庫で本を読んでいた。


「な、なんだ、この飲み物は!」


「どうしたの? まあ、エルバの仕業ね、エルバ! キッチンに来なさい!」


 パパの雄叫びと、ママの私を呼ぶ声が聞こえた。


「エルバ様?」


「どうやら、冷やし庫で冷やしていた私達のシュワシュワを、仕事から帰ってきたパパが勝手に飲んだみたい……」


「ええ、そのようですね」


 二人で顔を見合わせた頷いた。 


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