私はアール君を抱えると、家に飛んで帰ってパパとママに原っぱでの出来事を話した。ママは私とアール君をみて、困った顔をした。
――まずいことが起こった?
「エルバ……あなた、この子と血の契約をしたようね。契約も、旧式で私達とは違う術式契約だから……この国で解ける者はいないわ」
「えっ?」
――旧式の術式?
「これはこれは、みただけで旧式とわかるとは……さすがです。僕が使用する魔法はどれも旧式でこのとは違う魔法なので、カンタンには解除できません。エルバ様、あきらめてください」
誰も解除できない旧式の術式で、血の契約だなんて……
「アール君はいいの? 私のことなにも知らないのに……」
「いいですよ。それに僕が側にいるとエルバ様はなにかといいと思いますよ。この前のように"麻痺草"を食べてしまったときとかね」
この前の麻痺草?
「え、あのピリトリ草をくれたのはアール君だったの?」
「はい、あの日。原っぱを散歩をしていたら倒れている子を見つけて、確認しましたら痺れ草を食べたようなので、急いで採ってきました。あのピリトリ草は魔族の森のなかに生えている草で、この国の人達では採りに行けません』
「ま、魔族の森?」
国の東側、魔族が住むといわれる森。
その奥には魔王が収める魔族たちの国があるといわれている。あのピリトリ草はエルバの畑にタネを植えたから、魔族の森まで採りにいかなくてもいいのだけど。
魔族の森には、この国に生息しない植物が生えていから、すごく気になる。
「ねぇアール君。その魔族の森にはどんな草が生えているの?」
「魔族の森にですか? えーっと猛毒の草、人食い草、あとは…………」
二人で話していると、ママがアール君をヒョイッと持ち上げた。
「アール君、その話はストップ。それ以上は興味を持ってしまうから、エルバに話さないで欲しいわ。……ところでエルバ、あなたはエルブの原っぱで麻痺草を食べたの?」
「あっ!」
内緒にしていたのに、パパとママの前だった……。
ママがアール君を抱っこしながら、鬼の形相だ。
「えっ……私そんな草は食べてないよ」
まったくの嘘である。
ママは頭を抱えて。
「また食べたのね。前は毒草を食べて紫になったり、変な斑点つけて帰ったときママ、エルバに言いましたよね。"危ない薬草は食べないでね"と……また、知らずに食べたの? それも知っていて食べたのかしら?」
「うっ……」
私には博士がいるから、大丈夫だなんて言えない。
「ごめんなさい」
「エルバが、いくら毒と痺れが効きにくい体質かもしれませんが、その体質に慢心してはダメです。しばらくエルブの原っぱに行くのは禁止です!」
「ええ⁉︎ ママ、もう食べないから許して。ごめんなさい」
「こんどばかりは許しません。アール君、あなたは薬草について詳しそうだから。使い魔として、この子の監視もよろしくお願いしますね」
「かしこまりました、ママ様」
「ママ!」
「しっかり、エルバを見張るんだぞ、アール」
「はい、パパ様」
そう、この日、使い魔アール君は私の監視役になったのだ。