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第8話

 この日、ママにキッチンの使用許可をもらい。エルブ原っぱで新しく見つけた木と実を使い、実験している。その私の足元をクネクネ、スリスリする黒いもふもふがいた。


「……ちょっとアール君! 私の足に尻尾を絡ませて邪魔をしないで、あやまって踏んじゃうって」


「エルバ様、これは邪魔をしているのではありません。危険な実験をする、エルバ様を止めているんです」


 自分を"監視役"だと言い。私がする事に目を光らせて色々注意してくる……もふもふ黒猫さんである。


 この、黒猫のアール君との出会いは一週間まえ。

 私は新作の"コメ団子"を食べながら、いつものエルブ原っぱにきている。


「おいしい! この新作モチモチ団子を作った人に感謝!」


 この魔法都市に住む実験好きな魔法使い、魔女、亜人達はコメ草が食べられると知ったやいなや。ぼた餅、野菜などの具をたっぷり挟んだお焼き、せんべい……いま私が食べているモチモチ団子……などなど。元から栽培している食材を掛け合わせて、新しい商品を産みだしている。


 ――怒涛の勢とは、これの事ね。


 いまに異世界風のカツ丼、親子丼、牛丼……ドリア、シチュー、カレーと、いった私が食べたい食べ物が知らないうちに、食卓に並んでいるかもしれないくらいの勢いだ。


 まあ、カレーはターメリック、クミン、コリアンダー……とか? スパイスがいくつも必要だから、いますぐ作るのは無理かな。


 異世界の植物でそれらしい香草、薬草が見かかれば話は別だけど。でもコムギン、小麦粉はある。あとバターと牛乳があればシチューができる。




「ん?」


 エルブの原っぱを探索中、足元に一センチくらいの丸い赤い実が落ちていた。私はしゃがんでその実をつまみ「博士、この実は何?」と博士に聞いた。


《これはシュワシュワの実と言います》


 シュワシュワの実? 

 博士、食べられる?


《はい、食用ですが。そのまま実を食べるのは危険です》


 ――なに? 危険な食べ物?


 匂いは無臭、この赤いシュワシュワの実が気になる。

 しばらく悩んだすえ……好奇心は勝ちマジックバッグから水筒を出して実を洗い、ペロリと舐めた……。


 お、おお、舌の上で名前のとおり"シュワシュワ"する。

 しかし、このシュワシュワはどこかで味わったことがある。


「あっ!」


 そこでピンとひらめき、その実をポチャンと水筒に落とした。すると、水筒のなかでシュワシュワ、パチパチ聞き覚えがある音がする。


 私の記憶が間違っていなければアレだ。


「いただきます!」


 私はシュワシュワ入りの水を一気に喉に流しこんだ。

 シュワシュワ、喉を炭酸を飲んだときの爽快感が過ぎていく。


「「お? おお――やっぱり! 冷えていないけど炭酸水だ!!」」


 ふふ。私のひらめきは間違っていなかった。


 で、この実はどこから転がってきたの? と、原っぱを見渡すと。近くの低木(ていぼく)――私の腰くらいの木にその赤い実はみのっていた。


 博士に低木の名前を"シュワの木"だと教えてもらい。

"タネ"をもらって畑に植えると、ページの一角にドンとシュワの木が実った。


(ほぉ、いつもの一マスとは違い、低木(ていぼく)は四マス必要なのかぁ……リンゴの木とか、果物の木はまるまる一ページ使うのかな?)



 そうだ、博士。

 シュワシュワの実効能は?


《整腸作用、腸内環境を整えます》


 ほほう、お通じがよくなるのか……飲んどこ。


「プハァ、ひさしぶりの炭酸はうまし!」


「いつでも炭酸水が飲める!」と喜ぶ私は後ろから鋭い視線を感じた。だれ? だと振り向くともふもふの黒猫が1匹、尻尾を揺らし、草の陰からこちらをジッと見ていた。


 ――猫ちゃんは私が原っぱで一人、ゴゾゴゾしているから気になったのかな?


 これが異世界の猫ちゃんか。見た目は変わらないけど、この子の尻尾が二本だ可愛い。もふもふ、ふわふな見た目の猫ちゃんにのほほんと声をかけた。


「君はどこからきたの?」


 私が猫ちゃんにそう聞くと。黒猫はいきなり"キッ"と膨らみ威嚇して、バシバシニ本の尻尾を地面に打ちつけ。


「君はここで変わったものを食べて毒、麻痺になったのにもかかわらず。――また、調べもせずに食べているのです? ……あなたは学習しないバカですか!」


「……ええ、バカ?」


 いきなり"もふもふ黒猫ちゃん"に怒られた。

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