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第5話

 博士に気が付いたのは七歳とき。家に飾られたはじめてみる紫の花を見て「この花は、なというのかな?」と気になった瞬間、頭の中に声が聞こえた。


《この花はフル草と言います》


 ――え、誰? フル草?


《花びらを天日干しで乾燥させ、煎じてお茶として飲めば疲労回復いたします》


 お茶? 

 疲労回復?


《フル草の種をどうぞ》


 種? 目の前には白く光るタネが浮いていて。

 そのタネを取ると、目の前に畑の画面が現れた。


「はぁ? エルバの畑⁉︎」


《この種を畑に植えてください》


 声の通りに画面に種をかざすと、手の中のタネは消えて、畑に新芽が生えフル草は花を咲かせたのだ。


《採取をするときは、花をタップしてください》


 声に言われた通り画面をタップすると、畑の花は消えて、育った花が目の前に現れた。


《一度、調べたものはその場に採りに行かなくても、エルバの畑で、永久に採取できます》


 畑に採取したはずの場所に、フル草の花が咲いていた。


 ――凄い、ゲームみたい。


 学生時代は勉強ばかりで働きに出るまで、ゲーム機、スマホもなく、ゲームで遊んだことがなかった。はじめて買ったときは嬉しくって、夜通しで遊んだ。


 ゲームもだけど。ソロキャンプを始めてからは、キャンプ場に実る植物のをスマホで撮り、帰ってから調べるのが好きだったから嬉しい。


 私はこの声を"博士"と名前をつけた。

 この、エルバの畑だって便利だ。

 私はもっとこの世界の薬草を知りたくなり、両親に頼んで薬草図鑑を買ってもらった。


(この図鑑に載ってる植物に触ったら、博士が教えてくれる?)


 だけど、図鑑でみる薬草に博士は反応せず、タネも貰えなかった。


 ――博士、なんでぇ?


《エルバ様、実際に植物を見て触ってください》


 植物に触る? ただ図鑑で見るだけではだめらしく、実際に自分の目で見て、植物に触らないとスキルが発動しないみたい。


 ――どうすれば? うぬぬ……あ、エルブの原っぱ!


 パパとママに、ママとの散歩の途中で見つけた、エルブの原っぱに行きたいと言ってみた。パパとママはあの原っぱなら、家からも近いからと許してくれた。



 この原っぱ、はじめて見る植物ばかりで楽しい。

 さっそく見つけた植物を博士に聞いた。


 博士、この三角の葉っぱの薬草は何。


《これはトンガリ草と言います》


 目の前にタネが現れて、それを受け取り畑に植えて、この草の効能も聞いた。効能を知っておけば、後で何かの役に乗るかも知らない。


 ただ単に、好きだからだけど。


《脂肪燃焼の効果あり、食用で炒め物、おひたしとして食べられています》


 この草はダイエットに効くのか……女性の味方だな。

 原っぱを歩きまわり、紫色の草を見つけた。


 この薬草は。


《これはフク草といいます》


 色といい、効能を聞かなくてもわかるけど……一応ね。


《食しますと体が痺れる麻痺草の一種です》


 タネは植えても画面上にはなく、違うページに植えられていた。


 この草は食べちゃダメなのは知っている。

 だけだ私は生まれもった体質なのか毒草、痺れ草が効きにくい、効能を博士に聞かず口に入れた。


「お、おお!」


 すぐに口の中がピリピリして、体の自由がなくなる。


「体が痺れて、面白い!」


 この痺れが切れるまで"お昼寝するか"と、そのまま仰向けに目を瞑った。



  好奇心に負け痺れ草を食べ、エルブ原っぱでお昼寝中。近付く足音と顔がモサモサして目を覚ますと、顔の上に得体のしれない、"ナゾの薬草"が置かれていた。


 ――何これ? だ、誰かのいたずら?


 いや……都市に住む人たちは大人の人しかいないし、十歳の私にそんなことしないだろう。その薬草を手に取って調べると、枝に小さな赤い実が実っていた。


 これ、はじめてみる薬草だ。

 博士、この薬草は何。


《これはピリトリ草といいます》


 ピリトリ草?

 効能は?


《薬草にみのる、赤い実は麻痺を取り除いてくれます》


 痺れとり?


 博士にタネを貰いエルバの畑に植えて。枝から、赤い実を一粒とり食べると、口の中でプチッと赤い実が潰れた。口の中に広がる酸味……


「ス、スッパイ――! この赤い実、梅干しよりも酸っぱい……」


 でも、すぐに効果がでて体の痺れが取れた。


「痺れがなくなった……」


 この薬草いったい誰がくれたのだろう。まわりを探したけど誰もいない「ありがとう」とお礼を言って、残りをマジックバッグにしまった。

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