私が生まれ変わった、このくには時間がゆっくり進む。
人より寿命が長い魔女、魔法使いは自由に寝て起き、読書、気が向いたら薬を作り、実験、研究して魔法を使用する。
――ほら、今日もお隣から歌声が聞こえてきた。
「ららら~らぁ~」
「ママ、きれいな歌声が聞こえてきたよ」
「フフ、この声はおとなりのカリーナの歌声ね。彼女の歌声はいつ聞いても透き通っていて綺麗ね」
「うん、キレイ、キレイ!」
おとなりに住む魔女のお姉さんは、魔力をふくんだ歌と水魔法を使い、庭に咲いた薬草と薬花、木々に水を撒く。その水とお姉さんの歌声を浴びた植物は、生き生きと育つ。
「ママ、窓からお隣をみてもいい」
「ええ、いいわよ。いま、エルバ専用のお立ち台を用意するわね」
お立ち台をママに置いてもらって、窓枠からながめる。歌いながら魔法で花に水をまくお姉さんの周りには、魔力の光がキラキラ光っていた。
「ステキ、キラキラしてる」
(カリーナお姉さんもママと同じで、繊細な魔力をあやつってるわ)
その反対側の家から、なにかの薬を作っているのだろうか。ナナバァの楽しげで、パワフルな魔法詠唱が聞こえてきた。
「ほれっ、そりゃ、とう! 良い腹痛の薬になるのじゃーぞぉ!」
「あらあら? ナナバァも張り切り出したわね」
この詠唱と歌を聞き、ママはエプロンを付けて袖をまくった。
「エルバ、私達もカリーナと、ナナには負けられないわよ」
「あい!」
ママは指揮者のように、人差し指を振りながら魔法を操り、家の掃除を始める。私もそれをまねて子供用のはたきを握り、お手伝いをする楽しい時間のはじまりだ。
――転生してよかった!
毎日楽しく過ごし、この世界に転生して私は10歳になった。
この日、パパと同じ灰色の髪を結び、おでかけ用のお気に入りのワンピースを着て、その上に黒いローブを羽織った。10歳の誕生日にパパとママから貰った、お花の髪飾りを髪につけ、ママのお古のマジックバッグを肩にかけた。
「ママ。近くの、エルブ原っぱにいってきます」
「わかった、あまり遅くならないで帰ってくるのよ。変な人にもついて行かない」
「はーい、わかってる!」
家から徒歩十分くらいのエルブ原っぱに向かった。
基本この都市の魔女、魔法使い達は薬に使用する薬草などは家の温室か、庭で作っている。
ウチにも温室と庭はあるけど。ママが危険な薬草もあるからといって、入る許可は貰えなかった。
がっかりしたけど、大丈夫。
ママとの散歩の途中で、都市のみんなが育てている薬草畑からタネが飛び、いつの間にか原っぱを見つけた。その原っぱの名前はエルブの原っぱ。パパとママに許可をもらい通っている。
(そこの原っぱには、ママも知らない面白い草がたくさんあるんだよね)
ウキウキと家を出だ私は原っぱに着き、おいおいと生える草を見わたした。
「えっと、昨日はその辺の草を調べたから……今日はこの辺に決めた!」
ガサゴソと、マジックバッグの中からシートをだしてひき、草の上にゴロンと寝っ転がった。パパとママには内緒だけど――私の能力は植物に特化しているらしく、初めて発見した薬草と植物を教えてくれる、私だけの物知り博士がいるのだ。