目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第4話

 私が生まれ変わった、このくには時間がゆっくり進む。

 人より寿命が長い魔女、魔法使いは自由に寝て起き、読書、気が向いたら薬を作り、実験、研究して魔法を使用する。


 ――ほら、今日もお隣から歌声が聞こえてきた。


「ららら~らぁ~」

「ママ、きれいな歌声が聞こえてきたよ」


「フフ、この声はおとなりのカリーナの歌声ね。彼女の歌声はいつ聞いても透き通っていて綺麗ね」


「うん、キレイ、キレイ!」


 おとなりに住む魔女のお姉さんは、魔力をふくんだ歌と水魔法を使い、庭に咲いた薬草と薬花、木々に水を撒く。その水とお姉さんの歌声を浴びた植物は、生き生きと育つ。


「ママ、窓からお隣をみてもいい」

「ええ、いいわよ。いま、エルバ専用のお立ち台を用意するわね」


 お立ち台をママに置いてもらって、窓枠からながめる。歌いながら魔法で花に水をまくお姉さんの周りには、魔力の光がキラキラ光っていた。


「ステキ、キラキラしてる」


(カリーナお姉さんもママと同じで、繊細な魔力をあやつってるわ)


 その反対側の家から、なにかの薬を作っているのだろうか。ナナバァの楽しげで、パワフルな魔法詠唱が聞こえてきた。


「ほれっ、そりゃ、とう! 良い腹痛の薬になるのじゃーぞぉ!」


「あらあら? ナナバァも張り切り出したわね」


 この詠唱と歌を聞き、ママはエプロンを付けて袖をまくった。


「エルバ、私達もカリーナと、ナナには負けられないわよ」


「あい!」


 ママは指揮者のように、人差し指を振りながら魔法を操り、家の掃除を始める。私もそれをまねて子供用のはたきを握り、お手伝いをする楽しい時間のはじまりだ。


 ――転生してよかった!



 毎日楽しく過ごし、この世界に転生して私は10歳になった。


 この日、パパと同じ灰色の髪を結び、おでかけ用のお気に入りのワンピースを着て、その上に黒いローブを羽織った。10歳の誕生日にパパとママから貰った、お花の髪飾りを髪につけ、ママのお古のマジックバッグを肩にかけた。


「ママ。近くの、エルブ原っぱにいってきます」

「わかった、あまり遅くならないで帰ってくるのよ。変な人にもついて行かない」


「はーい、わかってる!」


 家から徒歩十分くらいのエルブ原っぱに向かった。

 基本この都市の魔女、魔法使い達は薬に使用する薬草などは家の温室か、庭で作っている。


 ウチにも温室と庭はあるけど。ママが危険な薬草もあるからといって、入る許可は貰えなかった。


 がっかりしたけど、大丈夫。


 ママとの散歩の途中で、都市のみんなが育てている薬草畑からタネが飛び、いつの間にか原っぱを見つけた。その原っぱの名前はエルブの原っぱ。パパとママに許可をもらい通っている。


(そこの原っぱには、ママも知らない面白い草がたくさんあるんだよね)


 ウキウキと家を出だ私は原っぱに着き、おいおいと生える草を見わたした。


「えっと、昨日はその辺の草を調べたから……今日はこの辺に決めた!」


 ガサゴソと、マジックバッグの中からシートをだしてひき、草の上にゴロンと寝っ転がった。パパとママには内緒だけど――私の能力は植物に特化しているらしく、初めて発見した薬草と植物を教えてくれる、私だけの物知り博士がいるのだ。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?