この日、お昼寝のとき昔の夢を見て泣いた。

　私の前世の両親は甘えたくて手を伸ばしても無視さた。

　それでも、愛されたいと勉強、運動、音楽と努力したけど、私は愛されない……とても、悲しい夢だった。

　目を覚ました私の頬は涙に濡れていた。

　悲しい気持ちが支配したが、首を振る。

　――この世界に転生した私は幸せだ。

　甘えたくて手を伸ばせば、無条件に抱きしめてくれるパパとママがいてくれる。そんな、やさしい両親のもとで元気に育ち、私は五歳になった。

　前のように書庫で魔法の本を読みたいが、危ないからと書庫にはあいかわらず鍵がかかっていて中に入れない。もっぱら、お昼寝の時間に光の球で遊んでいるだけ。

「この玉を天井まで飛ばして、次に壁に…………ふうっ」

　魔法を操り玉で遊ぶのはたのしいけど、少し飽きたかも。いまの時間パパは仕事で、ママはリビングで編み物かな。

　――嫌な夢で目も覚めたから、ママのところに行こう。

　欠かさず毎日、光の球をだして魔力に触れていたからか。リビングのソファーで編み物をする、ママの魔力がみえた。

（ママは、繊細な魔力を調整しなから編み物してる）

　おお。両手を使い魔力をこうして……あーして……こう、

「エルバ、そこにいるのでしょう？」

　――あちゃ、ママにバレた。少しでもママのまねをして魔力を使うと、すぐに見つかる。

「あい、ママ」

「そんな壁ぎわに隠れて、なにをしていたの？」

「……えっと。絵本を読んでもらいたくて」

「絵本？　ああ、いつのもクマさんとウサギさんの絵本ね。いらっしゃい、エルバ」

　ママはソファから、ひょいと人差し指先を動かして、私の体を宙に浮かせた。フワフワ浮かぶ私の体は、ソファに座るママの膝の上にちょこんと座った。次に近くの本棚から絵本が飛びだし、それもフワフワ飛んで私の膝の上に乗る。

「私の好きな、クマさんとウサギさんの絵本だぁ！　ママ、ママ、はやく読んで、読んで！」

「ふふ、エルバはこの絵本が好きね。――昔々。ススの森には仲良しの、クマさんとウサギさんが住んでいました……」

　その、クマさんとウサギさんは些細な事でケンカをした。いつもそばにいた友達がいなくて、寂しくなって「ごめんなさい」と、2人は仲良しに戻る話だ。

　この絵本の内容に、昔を思い出した。

　私の一つしたの妹とはケンカ、言い合い、テレビのリモコンの奪い合いなどひとつもなく、昔から妹は私を嫌っていた。

　思春期の頃、妹と目があえば「キモい。お姉ちゃんは近寄らないで」と言われた。両親はいつも可愛い妹の方ばかり可愛がった。「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」……あの家で私はいつも1人だった。

「クマさんとウサギさんもとの通り、仲良くなりました」

「おお！　ママ、クマさんとウサギさんがなかよしになったよぉ」

「そうね、なかよしになったわね」

　ほんとうは妹と仲良くしたかったな。