「あーあー」
部屋天井から吊るされた、魔法の力で回るオモチャ。
手には光りがでてカラカラ鳴るオモチャ、ベビーベッドで寝返りを打ちながら、私のいまの状況を考えている。
キャンプからの帰り、軽トラギャンピングカーとぶつかり、ガードレールから飛び出した私は落ちるときに願った、優しい両親と魔法がある世界に転生した。
(ありがとう、神様は私の願いを叶えてくれて)
だって魔法は凄い。ママの魔法をはじめてキッチンで見て驚いた。ママは人差し指ひと振りでコンロに火魔法で火をつけ、蛇口から水魔法で水を出すと棚からお鍋、おたま、包丁、まな板を取り出して自由に操った。
編み物をするときだって、浮いたまま編まれていくし、ママ専用の調合室だってある。
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この世界に生まれて八ヶ月が経った。
私はつかまり立ちと、ハイハイができるようになり、行動範囲が増えた。なかでも、この世界の文字が読めるので、書庫にハイハイで移動して魔法の本を読んでいる。
(目が覚めた、書庫に行こう!)
そう決めて私はベビーベッドを抜け出して、書庫にきていた。本を選ぶために、本棚に掴まり立ちをして本を探しす。おお、これは。前から気になっていた、歴史書を本棚から引きずり出して、本を開いた。
(どんな事が抱えているかな?)
私が住むリーベラ大陸の西には人間の国アルクスがあり。中央にはサングリア魔法中立都市。東には魔族の国マシュがある。
(魔族? 魔族もいるんだ!)
たしか、私が生まれたのは中央にある、サングリア魔法中立都市。この都市にはおおくの魔法使い、魔女、亜人種たちが住んでいる。
魔法都市の中央に建つ、古城サングリアには希少な魔法石を守る、大魔女と呼ばれるミネルバ様が住んでいて。朝昼晩、その魔法石に祈りを捧げ"守り結界"を都市に張り、人間、魔族から私たちを守っている。
――なぜ? 人間と魔族から守っているのだろう?
次のページに、大昔サングリアは勇者と魔王の戦いに巻き込まれた。争いごとが嫌いな魔法使い、魔女、亜人達は勇者側の人間に捕まり、戦争の道具として使われた。と書物に書いてあった。
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魔法使い、魔女たちの寿命は長い。
多分、ママ達は戦争を経験している。
だから、ミネルバ様は私達を人間、魔族から街には結界で守っている。もしかすると、希少な魔石も狙われているのかも。私が生まれたサングリアに住む人達には、こんな悲しい過去があったんだ。
(普通に見えるが、心は傷付いている……)
私に何かできないか。
ママ達を笑顔にしたい。
次の日、書庫で魔法の本を読んだ私は、見よう見まねで魔力を練ってみた。お? 目の前に真っ白な球ができたけど。なぜかその玉はどんどん大きくなっていった。
――まずい、この球を消せない。制御もできない。私の目の前で、ば、爆発する? また死んじゃう!
ふくれあがる魔力にいちはやく気付いた、ママが書庫に飛んできて。魔力の真前にいる私を抱きかかえ、杖をだし「魔力吸収」と唱えて、ふくれあがる魔力をすべて吸いとった。
「ハァ、ハァ、なんて魔力量なの……フウッ、エルバ……あなたがやったの?」
「……うっ」
「その顔は、悪いことをした時のパパと同じ顔ね……まったく、うちの子はママに似てすごいでちゅね。もうしちゃダメですよ」
「あ、うわあっ」
魔力の扱い方を習いもせずに使うと、大けがをしてしまうといい。次の日から書庫に鍵が掛かり、ベビーベッドから逃げださないよう、パパとママはベッドの柵をたかくした。
つかまり立ちをしても無理。
外にでられないし、柵を触るとママがやってくる。
私はベッドでおとなしく、小指の先くらいの小さな球で魔力訓練をはじめた。
「う――あっ、あ、う(上、下、右、左)」
魔力の練り方を練習して、自由に光の玉をつくり、その小さな球を操れるまでになった。