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13.

 俺は一旦赤毛の少女の部屋を出ると、片っ端から部屋を見て行った。青い髪の子、茶髪の子、緑の髪だけど若葉ちゃんとは違う色味の子、金髪の子、黒髪の子……勿論同じ髪色の子も居たが、取り敢えず色だけ挙げるとそんな感じで極彩色だった。うーんやはりファンタジー。

 一組の双子を見付けて合計十一人になったところで、俺は廊下の真ん中にしゃがみ込んだ。

「どんだけ攫われてるんだよ。警察は何をやっているんだ。アホか」

「魔法少女とは思えない云い様だにゃ……」

 呆れたダヒの声。顔を上げて見遣る。

「この一帯が客間の様だから、そろそろ若葉ちゃんが見付かると思うが……見付けたあとはどうするかな」

「一番良いのはプーカとハッグをやっつけて悪性を抑えて改心させる事だにゃ」

「どうやるんだ?」

「魔法少女に変身して、必殺技を当てるのにゃ。前にはにゃしたと思うけど、変身するとその子に合った武器を手にした状態になるにゃ。その武器での攻撃を当てて弱らせると変身に使う指輪に力がチャージされて行くのにゃ。それがいっぱいににゃったところで指輪を相手に翳すと必殺技が打てるのにゃ。勿論技名を叫ぶにゃよ。叫び声がトリガーににゃるのにゃ」

「つまり、一人で二匹相手にするのは大変なんだな。よし若葉ちゃんだけ起こして連れて帰ろう」

「真顔でにゃんて事を云うのにゃ! 魔法少女の風上にも置けにゃいのにゃ!」

「うるせえ。中身は三十歳男性だぞ。現実的に考えさせろ」

 なんて云い合いをしていると、ふいにダヒがはっとした顔をした。恐らく悪性の妖精が洋館内に戻って来たのだろう。

「急がにゃいと……」

「ここに居る子達は魔法少女の素質があるんだったな。誰か起こして契約してもらうか」

「それは良いアイディアだにゃ。誰にするにゃ?」

「年上っぽく見えた赤毛の子が良いかな。ああでも最初の場所に戻ってる間に奴らが来るかもしれない……最後に見付けた双子にするか……いや、二人に一度に説明して納得してもらって契約するのは難しいかな。じゃあ次の部屋に居る子にするか……でもそれが若葉ちゃんだったら?」

 ダヒがきょとんと首を傾げる。

「若葉ちゃんじゃ駄目なのにゃ?」

「夢ちゃんは若葉ちゃんを守らなきゃって思ってる。だから俺はそれを遂行したい。若葉ちゃんに危険な事をさせたくない。だから絶対に若葉ちゃんには契約させない」

「過保護だにゃあ……」

 そうこう云っている間にハッグが近付いて来ていたのだろう。ダヒの顔に緊張が走って、俺はいよいよ猶予が無い事を知った。

「プーカはサイズ的に来てない……よな?」

「プーカは変身出来るから絶対はにゃいけど、大抵大きいサイズのものだから多分屋にゃいには来にゃいにゃ。近付いてきている気配もハッグのものだけだにゃ」

「覚悟を決めるか」

 俺はポケットにしまっていた変身用の、レインボークリスタルのコインがはめられた指輪を取り出した。そしてそれを右手の中指に付け、

「マジカルチェンジ」

 と、そっと呟いた。瞬間指輪のクリスタルが虹色を放ち俺を包む。見る見る服が変わり、飾りの無かった髪にヘアピンが留まって、光は指輪に収束した。

 その瞬間、曲がり角から美女が姿を現す。そして俺を見るなり、鬼の形相へと変貌した。髪がうねり広がり、俺はそこに宇宙を見た気がした。SANチェック0/1D6+1!

 後ろではダヒが「はいそこでキメポーズ! 練習したやつだにゃ!」などとヤジを飛ばしている。

 俺はそれを無視して、ハッグと対峙した。その俺の手にあったのは、二本の短剣だった。

 おい魔法どこ行った。

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