私は少女と盗賊君を連れて、薬草採集の手伝いを始めた。
少女は手慣れた手つきで次々と薬草を摘み取っていくが、盗賊君は少し不慣れな様子だ。
この辺はゲーム仕様なので、どこに薬草が生えているのか、表記されるので、こちらは探すのが簡単で楽だな。
それでも映像はリアルで、草をかき分けて掴んで生き抜くと採取したことになるようだ。それはそれで楽しい。ゲームをしているという実感と、草むしりをしている不思議な感覚の両方を味わえる。
不意に盗賊君を見ると、彼なりに真面目に手伝っていた。私は二人の様子を見ながら、軽い雑談を交えて場の雰囲気を和ませる。
「なかなかいいペースだな、盗賊君。これが終わったら、ご褒美の食事が待っているぞ」
「お前がそんなこと言うと、妙にプレッシャーを感じるな」
若者を応援してしまうのは性分だろうか? 作業が一段落すると、私たちは少女の家へ向かった。
彼女の家は小さな薬師の家で、家の中には薬草や調合道具が並んでいる。彼女の両親は不在のようだったが、食事の準備がすでに整っていた。
スープと硬いパンではあるが、十分な食事だ。
「お待たせしました。ご飯、できてます」
少女はにこやかにそう言い、私たちを食卓に招いてくれた。盗賊君も一息ついた様子で、すぐにスプーンを取って食事に手を伸ばした。
「いただきます」
食事の挨拶をして食事を始める。私は彼の動作を注意深く見守っていた。彼が食事を終える頃、少しずつ異変が現れ始める。
「ん……なんだ、体が……動かない……?」
盗賊君の顔色が変わり、手が震え始めた。その瞬間、私は内心でにやりとした。少女が料理を出す際に紛れ込ませた痺れ薬が効き始めたのだ。
「どうした、盗賊君? 具合が悪いか?」
私はわざとらしく心配そうな顔をしながら問いかけたが、もちろん、これは計画の一環だ。彼は完全に動けなくなり、テーブルの上でぐったりとしている。
「くっ……これは……」
「痺れ薬だよ。少女に頼んで、少し混ぜてもらったんだ。心配するな、命に別状はない」
私は盗賊君に向かって穏やかに言いながら、次の行動に移った。少女からハサミを借りて、彼の頭に手を伸ばした。
ずっと手入れをしていなかったのか、汚い髪の毛を切っていく。
普段は草刈り用のハサミなので、よく切れる。
「やめ……ろ……」
「さあ、これから君に選択を迫るぞ。君には二つの道がある」
盗賊君が不安そうな目を向ける中、私は彼の頭を手早くカットし、モヒカンにしていく。まるで芸術作品を仕上げるかのように、丁寧に刈り上げていった。
「このまま犯罪者として突き出されるか、それとも、私に従うか。どちらが君にとって有利かは、考えなくてもわかるだろう?」
彼の頭が見事なモヒカンに仕上がると、私は満足げに頷いた。彼は痺れて動けないまま、ただ無言で私を見上げている。
「お前……何を……? 本気か……?」
「もちろんだ。君には選択肢があるんだよ。私に従えば、君の命は保証する。それに、私と一緒に行動すれば、ただの盗賊からもっと面白い生き方ができるかもしれない。どうだ?」
盗賊君は苦悶の表情を浮かべながらも、必死に考え込んでいるのがわかる。彼がどんな道を選ぶか、私は楽しみだった。
この世界では私に戦闘能力はない。そこで考えついたのが、この盗賊君だ。
「この世界では、選択一つで運命が変わるんだ。君も、その運命を変えるチャンスを持っている。ただし、私に従うという選択をするならばね」
彼が選ぶ道は、これからの展開をさらに面白くしてくれるはずだ。私はゆっくりと笑みを浮かべながら、彼の返答を待った。
「……わかった。俺は……従うよ」
盗賊君はついに屈服したように、そう答えた。私はその言葉を聞いて満足した。
痺れた彼の体を軽く叩いた。
「いい選択だ。これからは、私の指示に従って行動してもらう。もちろん、面白い仕事をたくさん用意してあげるさ」
彼がモヒカン頭で従う姿を想像すると、少し可笑しさがこみ上げてきた。これで一つ、新しい駒が手に入った。
「薬草少女さん、協力ありがとう。これで盗賊君は少しおとなしくなったようだ」
私は少女にも感謝の言葉をかけた。彼女は微笑みながら頷き、盗賊君をじっと見つめていた。
こうして、私は一人の盗賊を手下に入れた。また一歩、自分の物語を面白く進めることができた。
『あなたは盗賊を仲間にしますか?』
おや、ゲームシステムからの通知だね。
彼を仲間にするのか、聞いているようだ。
「はい。私は彼を仲間にします」
『それでは盗賊に名前をつけてあげてください。盗賊はあなたの仲間となり、今後はステータスの調整が行えるようになります』
おお! これは面白い。NPCを仲間にすると、こちらで育成ができるのか? なるほどゲームなんだから、プレイするキャラを育成できるのは面白いな。
人材育成や、他にも魔物などもテイムできるのだろうか? それで戦わせることができる?
『一人のプレイヤーに対して四人までNPCを仲間にすることができます』
なるほど、何人でも仲間にできて仕舞えば、争いを生むから、制限があるのか。
「とりあえず一人目は彼だ。名前はモヒカン・ヒャッハーにしよう。愛称はモッヒー君でいいだろ」
昔の漫画で出てくるやられキャラが好きだったので、愛称までつけてしまったよ。
『それでは盗賊はモヒカン・ヒャッハーに変更されました。今後は交渉人テツの仲間としてカウントされます。ステータスを確認しますか?』
「ああ、見せてくれ」
私はシステムに頼んでモッヒーのステータスを確認する。