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第4話

 ヘッドセットを装着し、ゲームの世界に再び飛び込んだ私は、アバター「テツ」として新しい冒険に向けてスタートを切った。


 まだレベル1の初心者だが、支援職「交渉人」としての第一歩を踏み出したばかりだ。


 目の前に広がる仮想世界は、現実とは違う鮮やかな風景。


 私はヒューマンの種族で、職業は「交渉人」。


 この世界では戦闘ができない代わりに、言葉と交渉術で世界を切り開くのが私の役割だ。特にステータスの「交渉力」は、他のどの職業よりも高く、天才的だと言える。


【ステータス】


 ・名前: テツ

 ・種族: ヒューマン

 ・職業: 交渉人

 ・称号: 新なる旅人

 ・レベル: 1


【ステータス】


 ・生命力: 健康

 ・運: 豪運

 ・魅力: 平凡

 ・知識: 弱小

 ・精神力: 豪胆

 ・技術力: 平凡

 ・交渉力: 天才


【スキル】


 ・弁舌:レベル1

 ・交渉術:レベル1

 ・心理洞察:レベル1


 このゲームで私は戦うことはできない。武器も持たないし、魔法を使うこともない。それでも、強力な交渉力と運を駆使して世界を動かしていく。


 ステータスを確認しながら、改めて自分の「運」と「交渉力」に振り分けたバランスを見て、少し笑みがこぼれる。


「運は良すぎるほどだけど、精神力はその結果で強くなったのかな」


 VRの仕様として、精神力が豪胆であるのは、過去の経験が積み重なったことが反映されたのか? それともただ運が良かっただけなのか?


 多くの成功体験を積んできたことで、どんなトラブルにも動じない強さを手に入れた自負はある。


「ステータスの詳細はこれかな?」


 1.生命力(Vitality):キャラクターの体力を表す。体調の維持や、長時間の活動に耐える能力。交渉や作業の持続力にも影響。空腹や睡眠不足などでも体力は減少する。


 2.運(Luck):確率や成功率に影響を与える要素。交渉の成功率、アイテムの獲得率が変動する。


 3.魅力(Charisma):NPCとの関係性や交渉力に影響する。高い魅力は、交渉相手に好印象を与えやすく、説得力が増す。


 4.知識(Knowledge):キャラクターが持つ情報や技術に対する理解度。スキル習得や新しい発見、NPCに対するアドバイスの精度に影響。


 5.精神力(Mental Strength):ストレスや負荷に対する耐性。長時間の交渉や、複雑な状況でも冷静に判断する能力を左右する。


 6.技術力(Skill Mastery):特定の技術や作業を行う能力。商人なら交渉技術、鍛冶師なら製作技術など、ジョブごとに異なる。


 7.交渉力(Negotiation Power):NPCとの交渉での成功率や、条件を有利にする力。相手の意見を引き出したり、取引を成功に導くスキルに影響


 さて、最初の仕事だ。私は街中に立ち、NPCたちに話しかけて、彼らの悩みや要求を聞き出していく。交渉人として、NPCとの対話が私の唯一の武器だ。


「ふう、結構ゲームの設定というのは覚えることが多いな」


【スキル説明】


 ・弁舌:レベル1


 説明: 交渉や説得の場面で使える基礎的な話術。話し手の意図を的確に伝え、相手を引き込むための技術。


 レベル1では、基本的な説得力を持ち、簡単な交渉や説明であれば相手を納得させることができる。まだ応用的な使い方には限界があるが、初対面の相手に対して信頼感を与えるのに役立つ。


 ・交渉術:レベル1


 説明: 相手との条件交渉を有利に進めるためのスキル。価格交渉や契約条件の取り決めなど、利益を最大化するための交渉が得意になる。


 レベル1では、相手の要求を受け入れつつ、自分の条件を少しだけ有利に進められる。大きな取引や難易度の高い交渉にはまだ不安が残るが、日常的な取引では十分に活躍できる。


 ・心理洞察:レベル1


 説明: 相手の表情や言葉の裏に隠された感情や意図を読み取るスキル。交渉相手が何を考えているか、何を求めているかを察知し、交渉を有利に進めるための材料として活用できる。


 レベル1では、相手の微妙な反応や不安感を察することができ、交渉時にうまく働きかけることが可能。まだ複雑な感情や深層心理までは読み取れないが、相手の立場や心理状態をある程度把握できる。


「とりあえず一通りは確認できたかな。今日はこれでログアウトしようかな?」


 大人になって久しぶりにゲームをすると、それだけで疲れてしまう。


 キャラクターメイクをして、ステータスを確認しただけで疲れてしまった。


「それにしてもVRMMOは凄いものだな。実際に見える景色は、現実の世界と違って面白いな。本来の自分は寝転んでいるだけのはずなのに、考えただけで歩くことや、ステータス確認ができてしまう。子供の頃にテレビゲームが出ただけで感動していたのに、随分と変わったものだ」


 少しだけ、楽しくなって歩いていると二人の人物の姿が見えた。


 一人は村娘だろうか? 若い娘さんが花を積んだ籠を持って、怯えた様子で後ずさっている。


 その向かいにはナイフを持った盗賊らしき男性が若い娘さんに迫っていた。


「えっと、これはイベントなのかな? ゲーム仕様だから、私の選択によって彼らの人生が変わるということなんだろうな」


 不意にその時考えたのは三つの選択だった。


 1、か弱い少女を助けるために、ナイフを持った盗賊と交渉を行う。

 2、ナイフを持った盗賊の味方をして、要求を叶えてやる。

 3、どちらも味方をしないで、状況の成り行きを見守る。


 さて、どれを選ぶのが正しいだろうか? 普段の私なら、1番を選ぶことに躊躇いはないが、それはゲームをしていて面白いのだろうか?





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