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第六十九話 ハナ…無題

 パタン、とトクさんを追い出したあとドアを閉めて玄関先で足の力が一気に抜けた。


 久しぶりにドキドキとした。何やってんのよ。このままキス以上の関係になってしまってたら……でもそれでもよかったかもだけど……ダメだ。絶対にダメだ。


 あくまでもアイドルである私とファンであったトクさんが……いくら私がアイドルを辞めたからといって簡単にそんな関係になってはいけない。

 体が熱い、心臓がバクバクしてる。こんな感覚久しぶり。ここまでしないと私は暴走するところだった。タクシー呼んでよかった。


 私は立ち上がって玄関から布団へ。さっきまでこの上で……少し温かみが残っている。


 って多分私の体温だろうけども。


 ……ごめんね、トクさん。好きだけど、好きだけど……。











 気づいたら朝になっていた。お酒を久しぶりにたくさん飲んだからすごく寝てしまった。

 10時過ぎてるよぉ。部屋の中が光がさして明るくなった。スマホを見たら阿笠先生からメールが。

『おせっかいなことしちゃってごめん、またご飯行こう。お詫びとして』

 だってさ。阿笠先生も下心ありまくりなのよね。まだトクさんよりも大人なの段階を踏んでって感じだろうけども。


 もちろん阿笠先生も素敵だけどさ、やっぱり一番はトクさん。あの時一緒に撮影した写真、まだ残してあるんだ。


 ……やっぱりトクさんが好き。


 それは確かだ。不器用でうるさくて突っ走るけどそんな彼が好き。


 昨日のキスも……よかった。


 あ、無事に帰れたかなぁ。阿笠先生に一応メールしておこう。


『トクさんはお酒飲んでそのあと帰られました。無事に帰れたか聞いてください……』

 って何このメール。追い出したくせに、自分。最低よね。


 でもまだ結婚して家族作るのは早いな。アラサーだけどさ。


 阿笠先生にメール送る前に私はとあるところに電話した。



「もしもし。はい、ご無沙汰しております。……こないだの件、お受けしようと思って。はい、返事が遅くなってごめんなさい」



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