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第五十四話 トクさん…アイドルとやっちまった

 俺はぼんやり壁を眺めている。放心状態である。この気持ちは……何年ぶりだ?


「トクさん、そろそろ帰るね」

 おい、隣になんでハナがいるんだよ。しかも、全裸の。

 て、俺の家……か。確かラブホテルじゃもし誰かに撮られたらって、歩いたら精力も減少するって思ったのだが……。ダメだった。



 横からハナの白い腕が伸びてきて僕の胸元を指でなぞってきた……ああああっ!!

「ふふふっ、可愛いなぁトクさん。テクもすごく豊富でやばかった」

 ……不妊だったからマンネリしないようにいろんな体位をマスターしてて……っておいいい。俺はなにをしたんだ? お酒飲んでないのに……あああああっ!!



 俺はハナのファンだぞ? 一ファンが一線を超えてしまった!


「私のこと、いつも応援してくれてありがとう」

 不敵な笑みのハナ。いつも見たことない小悪魔な顔だ。なんかじわじわとなにをどうしてこうしてああしたことを思い出してしまった。

 玄関入ってすぐキスしまくって……いや、ダメだ、ダメだ! と言ったのに避妊具あるよ? と言われた瞬間に玄関で……そのあと寝室入る前に椅子の上で……んで、ソファー、壁、ベッドに連れてって……あああああああああああああああ!!!!


 アイドルになんであんなことしてしまっ……。あああああああああああ。


 ハナは起き上がって着替え始めた。

「どんな人か気になってたんだ、住所調べたらタワマン住んでるし、職業がIT系で、購入金額の半端なさ……」

 うわ、調べられていた……


「よく見たらそこそこかっこいいし、服の上からもわかってたけど背が低い割には締まった体。ヲタ芸のスピードと持久力……さすがね」

 てかさ、イベントの後にここにいていいのかよ。まずまずファンとこんな関係っ!!!


「いい思い出できちゃった、ふふふ」

 いい思い出……、お、俺もだけど……。


「絶対内緒よ!ねっ」

 って微笑まれても……ちゅっ……て、キスされた。はぁっ……。


 俺は押し倒そうとしたら優しく手を払われて

「だめよ」

 ともう一度キスされてハナは出て行ってしまった……。


 俺は……パンツを履いてリビングに戻る。


 ハナのポスターやクッション、タオルなどハナグッズが飾ってある我が家。


 あああ、この空間でハナとっ!!!

「なにやってんだよおおおおおお、あああああああああーっ!!!!!」



 ◆◆◆



 んな展開なんてなかった。あれから

「じゃあホテル行きますか?」

 って言ったら、ハナ冷たい目で見られて


「本当、男って最低」

 彼女はタクシーを拾って去っていった。ビンタとかはなかっただけでマシである。



 その言葉がショックでそのままとバタバタ家に帰ったが、ハナに発散するはずであったものが暴発。ハナのグラビアを見て何度も何度も……。



 くそぉ! もう何年もしてねぇぞ! 馬鹿野郎!



 全裸でキングサイズのベッドの上で仰向けになり、ハナの等身大クッションを横に置く。何度も会ってるのに何度も握手してるのに何であんなにドキドキしてしまったのか。


 はぁ。


 あくまでも彼女はアイドルだ。アイドルだ。アイドルだ。


 そう言い聞かせてゆっくり目を閉じた。

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