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第三十六話 ハナ……大野ちゃんがいないと

 ふぅ、全力でライブも疲れる。浴衣の下汗だくー。美玲ちゃんは舞台袖でタオルを胸元に入れて汗を拭いている。わたしも拭かなきゃ……。


「本当にハナお姉ちゃんは大きくて羨ましい……」

「大きいだけで……重いし、重なってるところにも汗が溜まって汗疹になるの」

「ああーん、それだけおっぱい大きいってことね。羨ましい」

 由美香さんは胸パッドを服から外した。セクシー担当の彼女は全く胸がないわけではないが、大きいほうではないので胸パッドを入れて形をよく見せている。


 当然悠里ちゃんもじーっとわたしの胸を見てくる。

「汗疹できちゃうって……」

 拗ねてる。彼女は胸パッドはつけない派らしい。拗ねるなら付ければいいのに。


 そういえば大野ちゃんの姿は無い……。どうしたんだろ。

 こっからまだステージあるのに大野ちゃんの仕切りがないとトーク進まないよ。


「ちょっと、ごめん。大野ちゃん少し体調悪いから……先に四人でなんとか話を繋いで」

 そんなー。4人で話なんて……まとまらないよー。


 観客席から拍手が鳴り止まない。わたしは不安がるメンバーを置いて大野ちゃんを探しに行った。

「ハナ! どこいくの!?」

「先に3人でトークしてて!!」



 はじめてのファンミーティング……、この一年が大事な時……。

 大野ちゃんいないとまとまらないトーク……大野ちゃんに頼りっぱなしだった。

 彼女は自ら身を引いてまでプロデュース業に専念して私たちのいく末を案じてくれて。


 でもやっぱり今は大野ちゃんいないと不安だよ。



 ん? なんか誰かが部屋をのぞいてる。……あ、トクさん? どうしてここにいるの? わたしはトクさんに近づいた。


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