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第四話 ハナ……女の子だけど女の子を好きになっていいですか

 あれから清流ガールズが気になって、いろいろ調べたら、あの人気子役だった大野郁美ちゃんが作ったご当地アイドルだとわかり、確かに昔から可愛かったし、子役としての演技も好きだったけど気づいたらいなくなっちゃったから……。

 休んできた間に進学して語学留学もしたり、経済や海外のショーも見てきたらしい。意欲が違う。


 他にも4人いるけど、真ん中の立花美玲ちゃん、すごくスタイルもいいし……嵯峨野由美香さがのゆみかちゃんという子はさらにスタイルが良くて、セクシーでお姉様って感じ。

 こんなに可愛い子や綺麗な子、この同じ岐阜のどこにいるのよ。

 大野ちゃんが特に可愛いなぁ、て私は女なのに……。女の子のアイドル好きになるのって……。


 と彼女たちの出ている地域チャンネルを見てたら、店長から電話。なんか私やらかしたかなぁ。胃が痛い。今日は休みだった。


『お願いがあって、明日から一ヶ月、隣の市の店舗手伝いに行って来て』

 そんなっ……あそこのお店、行ったことないのに。勝手も違うし、お客様も違うし……一ヶ月も? どうしよう。でも言える立場ではない。


『みんなーっ! 今度フリーライブ来てくださいね!』 

 ライブ? ……女の子でもいけるのかな?

 スケジュール帳に明日の出勤場所とライブの日を書いた。しばらくはこのフリーライブを糧に頑張ろう。


 やはり次の日からの他店舗での応援、てんてこまいでまたそこの店長からも怒られた。ああ……。お客様と話もなかなか合わないし、施術してもまだ物足りないって言われて店長が手直ししてたし。なんか私がここで働いている意味がわからない。


タメ息つく暇もない。お茶もみんな立って飲んでる。お客様の見えない位置で。昼ごはんも。座りもしない……辛い。


すると店長やチーフがピリピリしてるのに気づいた。また何かあったのかなぁ。

「次のお客様は常連の方だから。気をつけなさい」

 気をつけなさいって……言葉遣いとか、態度とか、力加減とか……店の勝手を覚えるだけでも精一杯なのに。


お客様のカルテを確認しようとした時、ドアが開いた。

「いらっしゃいま……」

 私は受付で固まってしまった。隣の先輩に膝で突かれた。

「あ、お、おおお大野様?!」

私はカルテを見て驚いた。

「はい、大野です。……店長、初めて見る方ね」

 ……大野ちゃん?! 大野ちゃんがこのお店の常連?! そうよね、やはりアイドル、元子役はエステに通うんだわ。プライベートでも、テレビ出てもオーラが違う。清流ガールズの他のメンバーより確実にオーラが違う! 

「他店舗から勉強に来てまして。お手柔らかにお願いしますね」

 ……やはり応援でなくて勉強名義だったのね。なかなか仕事覚えれないからあそこの店長サジ投げてこっちに回されたんだ、私。 


 また隣の先輩に小突かれる。笑顔が引きつってしまう。でもそんな私に、大野ちゃんが微笑んでくれた。


「可愛いじゃない。今日はこの子とお話ししたい」

「えっ……その……」

「あなたがいいの。店長いいですか?」

 店長も先輩もうろたえるがサッと表情を変えて和やかに対応している。私はスタッフルームで何度も粗相がないように、と念を押された。


 大野ちゃんのいる個室に入ると、彼女はサウナから出て来て紙ショーツ一枚でうつ伏せで待っていた。スタイルのいいボディ、どこをどう痩せたいのだろうと思えるほどのくびれ、肌の白さ、無駄毛はない。ほんのり香る甘い匂い……。

店長の横にいる私はオロオロするしかなかった。

「店長、今日はこの子と2人きりにさせて」

「え、その……1人ですとお時間が……」

「私のプランは2時間でしょ? 2時間、この子と2人になりたい」

 ……初めてのご指名がっ、大野ちゃん!!!

「大野様、彼女はまだ経験が浅く……」

店長はもちろん反対だ。

「……いいの。私疲れてるから早く……」

ええっ。

「は、はいーっ」

 と店長は私を心配そうな目で見ながら部屋を出る。……どうすればいいの……カルテを見ると全身マッサージ……一人で全身なんてサウナ、最後のドレナージュと温感ドームの時間を考えると……頭の中ぐるぐる。


「とりあえずふくらはぎ揉んでほしい。下半身中心で。マッサージしながらあなたとお話ししたい」

「……は、はい! かしこました!」

 私は早速インドオイルを取り出して足全体に塗り広げた。


「とりあえず私の質問に答えて。あっ、足の裏っ……気持ちいいいっ。正直若い子に触ってもらった方が気持ちいいっ。肌の弾力、触り心地、合格。ぎこちないけどぉっ、あんっ」

「あ、ありがとうございます!」

 時折漏れる吐息が色っぽい……。エッチな声……どきっとしちゃう。

肌の弾力もいいし、際どいところまで触れるなんて……アイドルに。


 て。変なことを考えてないで私は彼女のリクエストに答えて、質問にも答えて……いっぱいいっぱいだったけど、今までの中で緊張したし、今までの中でなんとなく頑張れたかと思う。



 施術も終えて、帰りの受付で

「……これからもあなたを指名するわ。よろしくね」

「は、はい……」

 私は夢のようである。手元にはフリーライブのチラシ。清流ガールズのこともたくさん話を聞いた。


 でもなんで私だったんだろう。他にも数人私よりも若いスタッフいたのに……。



 終わってからも、大野ちゃんの肌の弾力……忘れられない。あの甘い匂いも。

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