目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第97話 決着はワンパンで!

 いきなり変身が解け、3人に戻った黒武者、栞奈、真凛。


「ほえ?」


 栞奈が不思議そうな顔をして2人を見渡している。

 黒武者と真凛も同様に目を丸くしていた。


「……時間制限があるんでしょうか?」

「時間的に3分ってところかしらね」


 3分。

 待つ時間にしては長いが、戦う時間としてはかなり短い。

 ウル〇ラマンは、よくそんな短い時間で怪人を倒せるものだ。


 って、そんな場合じゃない。


「3人ともこっちに来い!」


 俺の言葉にハッとして、3人が俺たち方へと駆け寄ってくる。


「ごめんなさい……」


 栞奈だけではなく、黒武者や真凛もバツの悪そうな顔をしている。


「何言ってるんだ。よくやってくれたよ」


 少なくとも、3人のおかげで分身の脅威は無くなった。

 これはかなり大きな前進だろう。


 俺たちがそんなことを話していると、ルシファーは肩を震わせて笑い始めた。


「ふふふふ……あはははは……はーっはっはっはっはっはっは」


 どう見ても機嫌がよく笑っているようには見えない。

 これはどう考えても……。


「貴様ら、絶対に許さんぞ!」


 やっぱりか。

 怒りを通り過ぎて笑っていたというやつだ。


「お主ら、下がっておれ。あとは儂が何とかする」


 禰豆美が俺たちを庇うようにして前に出る。

 しかし、その足取りはおぼつかない。


「禰豆美、無理するな」

「とはいえ、儂以外、どうすることもできまい」


 禰豆美の言葉に絶句する。


 茶子の召喚の魔方陣は尽きた。

 栞奈、黒武者、真凛の変身は解けた。

 そして、役立たずな俺。


 確かに、ボロボロとはいえ、一番の戦力は禰豆美に違いない。

 だが、その禰豆美だって立っているのがやっとの状態だ。

 ルシファーはダメージを受けているとは言え、それでもかなり有利だろう。


 くそ! くそ! くそ!


 一番偉そうなことを言ってる俺が何もできないことに腹が立つ。

 いっそ、この場に爆弾でもあれば体に巻いて特攻したいところだ。

 それで倒せるかはわからないが、みんなをこの場から逃がすことくらいはできるはず。


 ……いや、待てよ。


「お前ら。俺が突っ込んだら一斉に、出口に駆け込め」

「……何をする気じゃ?」

「大丈夫。俺に考えがある。いいか、チャンスは一回きりだ。みんな全力で駆け抜けろ」


 俺の言葉に5人が頷く。


 よし。

 これでいい。


 俺は禰豆美よりもさらに前に出て、ルシファーに向かって親指を立ててグッと下に下げる。


「よお、ルシファーさんよぉ」

「ああ?」


 ルシファーはもはや怒りのせいか、口調が汚くなっている。

 ここは一旦、冷静にさせなくては。


「お前の負けだよ」

「……なんだと?」


 怒りの形相に少しだけ困惑の色が混じる。


「そこまでダメージを負えば、さすがにもう俺には勝てないだろ?」

「……貴様が俺に? ふん、馬鹿なことを」

「海でのこと、見てたんだろ? なら、俺の強さはわかってるはずだ」

「……貴様が力を発揮するには変身しなければならないだろ?」

「そうだな」

「変身していない貴様が、俺に勝てるわけがない」

「変身してないなら、な」

「……」


 さらに困惑の方が色濃くなっていく。


 よし。

 もう少しだ。


「変身できるのであれば、既にしているはずだろう?」

「そうかな? ぶっちゃけていうと、俺の変身にも時間制限がある。変身してお前に逃げられでもすれば終わりだ」

「……」

「けど、お前はもう俺の攻撃から逃げる体力もなくなった。俺はこれを待ってたんだよ」

「……ふん。ハッタリだ」


 そう。ハッタリだ。

 ルシファーの言う通り、変身できるならとっくに変身している。

 だが、ここの肝は変身できるかも、と思わせることだ。


「どうかな? まあ、ハッタリだと思いたければ、思ってればいい」

「……ちっ!」


 俺は後ろに向かって手でゴーサインを出す。

 そして、ルシファーに向かって走り出す。


「うおおおおおおおおお!」


 ルシファーも思わず身構えている。


 よし、これならそのまま抱き着いて、数秒くらいは時間を稼げる。

 そうすれば、みんなはこの結界から出られるはずだ。


「はああああああああ!」


 くそ。

 こういうとき、足が遅いと格好悪いな。

 ドスドスドスという音が聞こえてきそうなくらい、鈍重な走りだ。


「くっ! 舐めるなよ!」


 逆にルシファーにはそれが策にでも見えたのか、警戒を解かない。


「おらああ!」


 ルシファーの目の前。

 俺がルシファーに飛び掛かろうとした瞬間だった。


「おぐぅ!」


 俺は腹部に衝撃が走ったことで、動きを止め、膝から崩れ落ちてしまう。


 ……なんだ?

 ルシファーは動かなかったはずだぞ?


 そう思って見上げると、そこにはレティが立っていた。


 ――浴衣姿で。


「遅くなったわね、ルシファー。この結界を探すのに少し手間取ったわ」

「……ダークエルフか」

「ダッチ!」


 栞奈が叫ぶ。

 そんな栞奈に対して、殺気を込めた視線を向けるレティ。


「その名で呼ばないでくれるかしら? 殺すわよ?」

「レティ……。な、なぜだ……。ロープで手を縛っていたはずだぞ」

「あのねぇ。あんなもの、ダークエルフの私が外せないとでも思った?」


 言われてみれば確かにそうだ。

 あの程度のロープなんてレティならいとも簡単に引きちぎれるだろう。


 くそ。

 完璧に油断した。

 仲良くなったつもりでいたが、考えてみれば使役を断っている相手だ。

 気を許す方がどうかしている。


「で? ダークエルフよ。何しに来た?」

「もちろん、こいつらを殺しによ。屈辱を味わった分、自分の手で返さないと」

「そうか……」


 すると突然、ルシファーはレティの顔を裏拳で殴りつけた。


「ああっ!」


 レティが吹っ飛ばされる。

 そして、ルシファーはレティに向かって、手のひらを向けた。

 手のひらの先からは闇の弾が出現している。


「な、なにを?」

「人間ごときに捕まるような奴はいらん。魔族の面汚しめ」


 闇の弾がドンドンと大きくなっていく。

 一撃で消し去るつもりだ。


「ひっ!」


 レティの顔が恐怖で引きつる。


「死ね!」


 その瞬間。

 俺の体が光り始める。


「むっ!?」


 ルシファーは慌てて俺の方に闇の弾を向けて放った。


 しかし――。


 俺は無傷の状態でルシファーの前に立つ。

 変身した姿で。


「なぜだ!? なぜ、変身できる?」

「ナイスだ、レティ」


 俺は一度、レティの方を見る。

 レティはポカンとした顔をしていた。


「今度こそ、終わりだぜ?」

「くそっ!」


 ルシファーは身構えるが、俺は思い切り顔面を殴り下ろした。


「があああああああああっ!」


 ルシファーは地面に叩きつけられ、その衝撃で地面にクレーターができる。


「あ……ああっ……うっ」


 ピクピクと痙攣したルシファーはやがてピクリとも動かなくなった。


 同時に俺の変身が解けたのだった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?