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第61話 栞奈VS茶子

 スケルトンが木っ端みじんになり、黒武者が連れてきた男が腰を抜かしつつも、俺の変身が解ける。


 雑魚そうに見えるモンスターでも、そこはやはりモンスター。

 生身の人間が勝てるものじゃない。


 いやあ、異世界の勇者の方々には感服する。

 あんなのをチート能力なしで倒すなんてどんだけだよ。


 にしても、今回は黒武者の機転で助かった。

 まさか、『困っている人を作り出す』という、今までの逆の発想で俺を変身させるとは。

 考えてみれば、禰豆美がいるところまで、結構な距離がある。

 禰豆美を連れて、ここまで戻ってきていたら、間に合わなかっただろう。

 今頃、スイカ割のスイカのごとく、割れた俺の頭が転がっていたはずだ。


 俺が黒武者にグッと親指を立てると、黒武者もグッと親指を立てて、そのまま回転させて親指を下に向けた。


 いや、なんでだよ。


 とはいえ、黒武者の頬が若干赤い。

 おそらく、照れ隠しかなにかだろう。

 現実世界でツンデレなんて、ただの痛い奴だと思っていたが、なかなかどうして。

 ちょっとだけ可愛らしく見える。


 まあ、モナ子の可愛さとは、文字通り次元が違うが。


「私が悪かったわ!」


 まさしくズサーっと音を鳴らしながら、女の子が物凄い勢いで土下座をしてくる。

 その女の子がまき散らした砂が俺の全身にぶっかかった。

 そのせいで全身、砂だらけになる。


 なんだ?

 遠回しかつ、斬新な嫌がらせか?

 しかも、相手はいきなり謝っているからこっちは怒ることがない。


 なかなかやるじゃないか。


「まさか、こんなことになるなんて思わなかったのよ」

「……ああ。召喚のことか。気にするな。何とかなったし」

「今度はスライムを引き当ててみせるわ」


 うん。

 全然、反省してないね、君。


「わかってる。謝って許されることじゃないもんね。いいわ。罰として私を犯しなさい!」

「お前のご褒美になってるじゃねーか」


 それになんで、命令なんだよ。


「さっき、言っただろ。気にするなって。目の前に魔方陣があれば、つい召喚したくなる。なんとなく、その気持ちはわかるよ」


 きっと、エロ同人誌が落ちてたら、思わず開いてしまうのと同じ感覚だろう。

 痛いほど、その気持ちはわかる。

 責められるわけがない。


「そ、こ、は! 罵倒しなさいよ!」

「いでででで!」


 ギリギリと頬をつねられる。


 ホント、まったくと言っていいほど反省のはの字もない奴だ。


「とはいえ、今度は魔方陣を見つけても勝手に召喚するなよ」

「うっ! ……やっぱり、ダメ?」

「……」

「わかったわよ! 命の恩人に言われたことはちゃんと守るわ! 守ればいいんでしょ、守れば! くそ、死ね!」


 あれ?

 なんで、今、罵倒されたんだ?

 命の恩人だよね、俺?


「おっと、そろそろ戻るぞ、黒武者。これ以上、栞奈と禰豆美たちを放置するのはヤバい気がする」

「そうね。悪い虫がついてたら、駆除しなくちゃならないものね」


 どっちかというと、問題を起こされるというより起こす方な気がするんだけどな。


「じゃあな。できれば、昨日のことも含めて忘れてくれると助かる」


 俺は女の子にそう言い残して、栞奈たちがいる方へ歩き始めた。




「魚沼茶子よ」


 横を歩く女の子が自己紹介をしてくる。


「……あれ? 別れたつもりだったんだけど。俺、じゃあなって言ったよな?」

「年は18歳で、高校3年生よ。趣味は自分が凌辱されているところを想像すること」


 ……なかなかハードな趣味をお持ちのようだ。


「将来の夢は人外に凌辱されて、アヘ顔に落とされることよ」

「あー、えっと、たぶん、その将来の夢の使い方、間違ってると思う」

「当面の目標は、あなた……パパに犯されること」

「……なんだよ、パパって」

「ふふ。嬉しいでしょ? JKにパパって呼ばれて」

「寒気しかしねえ」


 いかがわしさしか、感じないぞ。

 それ絶対、職質されるやつ。


「てか、そもそも、なんでついてくるんだよ?」

「え? だって、パパが言ったんでしょ。私に、勝手に召喚するなって」

「……言ったけど、それと俺たちについてくるのとどう関係があるんだ?」

「勝手じゃないならいいんでしょ?」

「……」


 それは屁理屈というやつだ。


 けど、まあ、俺が許可を出さなければいいだけか?

 新たな魔方陣を見つけて、我慢しきれずに召喚……なんてことも可能性は0じゃないし。


「あ、おじさん! どこ行ってたの!?」


 俺の姿を見つけてか、栞奈と禰豆美が駆け寄ってくる。


「ああ、ちょっとな」

「って、誰!? その子?」


 栞奈が俺の横にいる茶子を指差す。


「パパの肉奴隷よ」

「おいっ!」

「な、なに言ってるのよ! おじさんの肉奴隷は私なんだから!」

「ちょちょちょ! 待て、お前ら!」

「私はパパに犯されてアヘ顔ダブルピースを激写される契約を結んでるの」

「結んでねえっ!」

「わ、私なんて、種付けされて、結婚するところまで決まってるんだよ!」

「あの……せめて……声のトーンだけでも落としてくれ……」


 周りの目が半端なくヤバい。

 今にも通報されそうな勢いだ。


「ふふ! 面白い。それじゃ、どっちがパパのメス豚にふさわしいか、勝負よ!」

「受けて立つ!」


 あっ……。

 こっちに歩いてくるの、警察っぽい。


「お前ら、ちょっと来い!」


 俺は栞奈と茶子の腕をつかんで、脱兎のごとくその場から逃げ去ったのだった。

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