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第59話 嬉しくない再会とリベンジマッチ?

「見~つ~け~た~わ! おらぁ!」

「おふっ!」


 背骨が折れるんじゃないというくらいの衝撃。


突然、後ろからタックルされ、前のめりに倒れる。

 そして、背後から何者かが覆いかぶさってきた。


「なんだ? だれだ?」


 すると耳元で、何者かが囁く。

 女の声だ。


「こっちを見ろ」

「見れねーよ。この状態で見るには、首を180度回さないとならない。だから、どいてくれ」

「逃げないって約束する?」

「わ、わかった」


 この状態では脅されていると同義だ。

 俺には頷くしかなかった。


「よし……と」


 不意に体が軽くなる。

 どうやらどいてくれたようだ。


 よし、今がチャンスだ。


 俺は倒れた、四つん這いの状態でカサカサと移動し始める。


「あ、逃げないって約束、速攻で破りやがった!」


 ……馬鹿が。甘いんだよ。


「逃げるなって言われて、逃げない馬鹿がいるかよ!」

「ふんっ!」

「あうっ!」


 いきなり背中を踏みつけられた。

 声の距離からして、女ではない。


 誰だ?


 チラリと見上げると、踏みつけたのは黒武者だった。


「おい! なんのつもりだ、黒武者! お前、どっちの味方だよ!?」

「女の子の味方よ」


 ……ああ。

 そういえば、そんな奴だったな。


「てめー! こらー! ふざけやがってー!」


 女がダッシュしてきて、倒れた俺を踏みつけてくる。


「ぎゃーーー!」


 俺は2人に体をしこたま踏みつけられる。


 ……2人?


 覚えてろよ、黒武者。




「……で? なんで俺を探してたんだ?」


 真摯に土下座をすることで、その場を穏便に済ませることに成功した俺。

 立ち上げって見て見ると、いきなり襲い掛かってきたのは、昨日の女の子だった。


「リベンジマッチに決まってるじゃない。さあ、勝負よ」

「なんの勝負かは知らんが、断る」

「うるさい! さっさと私を犯せ! そして、アヘ顔ダブルピースをさせるのよ!」

「嫌に決まってるだろ!」


 すると女の子は、わざとらしく大きくため息をついて、やれやれと肩をすくめた。


「私は18歳よ」


 突然、関係のないことを言い出す女の子。

 視界の端では、黒武者が「ね? 言ったとおりでしょ?」と言った具合に不適な笑みを浮かべている。


 得意げな顔をしているが、お前の変態さが証明されただけだぞ?


「……それがどうした?」

「18歳と言えば成人! つまり! 合法的にJKを襲えるのよ!」

「襲った時点で犯罪だ!」


 栞奈もそうだが、なぜ、こいつらはJKにそこまで需要があると決めつける?

 世の中の男すべてが、JKが好きだなどと思い上がるな。

 2次元になって出直してこい。


「ふっ! 甘いわね」

「なにがだ?」

「お互いの合意があれば、犯罪じゃないわ」

「甘いのはお前だ。俺が合意してねえ」

「くっ!」


 女の子は下唇を噛んで、悔しそうな顔をする。


 また勝ってしまった。

 敗北を知りたい。


「正博。周りに人が大勢いるの、知っててしゃべってるの?」

「……え?」


 黒武者に言われて、周りを見渡すと、数人がこっちを見て怪訝な表情をしている。

 中にはスマホを取り出して、電話をかけ始めた人もいる。


「おい、ちょっと岩陰に行くぞ」

「私を犯す気ね!?」


 不意に嬉しそうな表情をする女の子。


「お願いだから、黙っててくれ……」


 俺は涙目になりながら、女の子の腕をつかんで、人気のない岩場へと移動した。




 岩陰に行くと、女の子はまだ納得はしていないが、妥協したかのように少しだけ口を尖らせる。


「まあ、いいわ。私を犯すのは気が向いたらでいいとして……」

「……一生、向かないからマジで諦めてくれ」

「昨日の女の子はどこ?」

「女の子? ……ああ、禰豆美か? あいつに何の用だよ?」

「あの子が、私のオークを元の世界に還したんでしょ?」

「あのオークくんはお前のじゃないけどな」


 彼は単なる被害者だ。


「まあ、禰豆美が元の世界に戻したってことは間違いないけど、それがどうした?」

「還したってことは、また呼び出せるんじゃない?」


 ……なかなか機転の利くやつだ。

 おそらく、できるだろう。

 なんせ、元魔王だからな。


 だが、ここでできると言ってしまえば、また付きまとわられることになる。

 となれば、取れる手は1つ。


「いや、できない」

「なんで?」

「あいつの能力は元の世界へ還すっていう限定なんだ。逆に呼び出すことはできなんだよ」

「そ、そうなの……?」


 よし、ナイス俺。


「じゃあ、私をオークがいる元の世界に還すっていうのはどう?」

「お前の元の世界はここだろうが」

「それなら、やっぱりあんたに無茶苦茶にされるしかないじゃない!」

「諦めればいいだけだろ!」

「夢を諦めろだなんて、随分と残酷なことを言うのね」

「黒武者。お前はもう口を開くな」


 なに、良いこと言ったみたいな顔してるんだよ。

 余計なことを言って、この場をかき乱すな。


 とはいえ、随分と話が脱線しているが、実は俺もこの女の子に会えたら聞きたいことがあった。


「お前が昨日、オークを召喚したっていう魔方陣はどうやって手に入れたんだ?」

「え? 魔方陣? ああ、あれは落ちてきたのよ」

「……落ちてきた?」

「そ。青姦してるカップルいないかなーって思って散歩してたらね」

「……お前は一回、黒武者と一緒に捕まった方がいいと思う」

「ヒラヒラって上から紙が落ちてきたのよ。あんなふうに」


 そう言って、女の子が指差した方向を見ると、確かに左右にゆらゆらと揺れながら1枚の紙が落ちてきた。


 俺たちは紙のところへ駆けつける。

 そして、紙を見ると、確かに魔方陣のようなものが書かれていた。


「これが魔方陣か?」

「ええ。昨日のとは種類が違うけど……」

「なるほど。で、これを使って召喚したと?」

「ええ」

「これって、誰でも使えるものなのか? 例えば、俺とかでも」

「無理ね。ある程度、知識がないと術式が発動するわけないでしょ」

「……ってことは、お前は知識があるってことか?」

「伊達に、10年中二病やってないわよ」


 おお……。

 随分とベテランさんだな。

 ま、俺は15年、ずっと中二病だけどな。


「えーっと、この魔方陣の場合は……」


 女の子がなにやら呪文のようなものを唱え始めた。


「……え? ちょっと待て! それって発動するんじゃ!?」


 俺が止める間もなく、魔方陣が光り始めた。


 そして、またまた西洋ファンタジーの魔物が出現してしまったのだった。

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