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ケビンの書~黄金の剣・5~

 と、意気込んでコレットの目の前に出たのはいいが……。


「……………………」


 コレットが目をまん丸にして固まってしまった。

 さすがに突然飛び出したのはまずかったかな?

 でも親父に邪魔される可能性も考えると、こうするしかなかったし……。


「――っ!」


 ――パンッ!


『!?』


 いきなり、コレットが両手で自分の頬を叩いた。

 可愛い顔に何しているんだ……あーあ、ほっぺたが赤くなっちゃっているじゃないか。


「――っく、来るなら来い! えい! やあ! この!」


 ちょっ! コレット!?

 今度はメイスをでたらめに振り回し始めた。

 これは俺を近付けさせない様にしている感じだが、何故そんな事を……まさか、まだ俺がまだ鎧に体を乗っ取られたままと思っているのか!?


『大丈夫だ、コレット。俺はもう乗っ取られては――』


「うわああああああああああああ!!」


 駄目だ、まったく聞く耳を持ってくれない。

 むしろ悪化してしまった気がする。


「コレット! 今行くからなああああ!」


 うげっ! 親父がこっちに気が付いて走って来た。

 くそっこんな状況だが仕方ない、親父に邪魔される前に作戦実行するしかない!


『コレット、俺を見ていてくれ!』


 じゃないと、俺が剣をキャッチする瞬間を見逃してしまうかもしれない。

 それだと意味が無い!


「――あああああああ……あ?」


 手を挙げて――。


「え? え? 何? 何なの!?」


 ――ビシッと親指を立てる!

 さぁ今だ! 黄金の剣を投げろ、ナシャータ!


 ――ブオン!!


「……?」


 今投げたような音がした。

 後はそれを俺がキャッチすれ――。


 ――パカーン!


『――ばっ?』


 何だ? 何が起きた!?

 いきなり俺の体が爆ぜたぞ!?


 ――ヒューン!


 俺の後ろから何かが貫いていった!?

 まずい! このままではコレットに――。


 ――バコンッ!


「ウギャ!!」


 やっぱり当たった!!


 ――ドゴオオオンッ!


「ゲフッ!」


 しかも、勢いそのままにコレットごと壁に激突したし!!


「コレットオオオオオオ!!」

『―――――――――!! ――!?』


 あれ、叫べないぞ。

 うげっ! さっきの衝撃でアゴが外れてしまっている!

 これじゃ何も喋れないじゃないか。


「――おい! コレット!! 怪我はないか!?」


 親父がコレットの元へ駆けつけて起こしている。

 その役目は俺がしたかったな……いやいや、今はそんな事よりコレットの状態だ。

 すごい音がしたからな、これは大怪我をしているに違いない!

 早く治療をしなければ!


「……えと……大丈夫みたいです……?」


 ……今、コレットは何て言った?

 大丈夫って言った気がしたんだが。


「何で疑問系なんだ、本当に痛みはないのか?」


「……はい……どこも痛みはないです。よいしょ……」


 嘘だろ。

 壁に激突した衝撃でひび割れているんだぞ?

 それなのにコレットは普通に立ち上がった……。


「そうか、なら良かったぜ。何せこんな状態だったからな」


「こんな? うわっ!」


 コレットが後ろの壁を見て驚いている……どうやら本当に怪我をしていないようだ。

 何はともあれ! コレットが無傷でよかったーーーー!! さすがに今回は肝が冷えたぞ。

 あんな衝撃的な事が起きたっていうのに無傷だなんて奇跡だ、きっと俺とコレットの日頃の行いがよかったからだな……うんうん。


「ああああああああ!!」


 っ! コレットが叫び声を!


「どうした!? やっぱり何処か――」


「鎧がへこんじゃいました!」


 何だそんな事か、びっくりさせないでくれ。


「……お前なぁそんな事で叫び声を上げるなよ、ビックリするだろ」


 まったく、その通り。


「え?」


 無傷だったんだから、鎧がへこんだ位どうって事はないじゃないか。

 それにしても一体何が起こったんだ、俺の体はバラバラになるわ、コレットは何かが当たるわ……。


「……まぁいい。それよりも、スケルトンは……バラバラになっているから大丈夫そうだな」


 大丈夫であって大丈夫じゃないんだがな。

 意識はあるが動けないんだよ。


「で、飛んできたのはこれか……よっと」


 親父が持ち上げたのは、くの字に曲がった……黄金の剣?

 何であんな所にあるんだ。


 ……………………。


 待て待て、順おって考えろ。

 まず、俺が合図した時にナシャータが黄金の剣を投げた。これは投げた音がしたから間違いはない。

 それから、ほぼ同じ位に俺の体がバラバラになり、コレットに何かが当たって吹き飛ばされた。

 そして、あのくの字に曲がった黄金の剣が落ちていた……そうなると真実は……。

 あのド馬鹿ニュート! 黄金の剣を俺に向かって投げろとは言ったが、手加減無しのどストレートに投げやがったな!?


 ――ガリッ


 あっ親父が黄金の剣の先端を噛んだ。

 コレットにプレゼントする物なのに汚い事をするなよ!


「歯形がついたと言う事は、こいつは間違いなく純金だな。しっかし、何でこんな物がバリスタ並みの威力で飛んできたんだ?」


「え! これが飛んできたんですか!?」


「ああ、俺の角度からよく見えた。こいつが手を挙げた瞬間、後ろから飛んで来たんだ……手にワイヤートラップでも引っかかったのか? いや、そんな罠があればとっくに見つかっているはずだし……位置が高い……」


 いや、そうじゃなくてだな……。

 めちゃ考え込んでいるが、そもそもそんな罠はこの遺跡にはないし。

 色々と説明したいが、しゃべれないからどうしようもない。


「んー……現に飛んできたから罠と考えるべきか。なら、この1発だけとも限らんな。次が来るかもしれんからここを離れるぞ」


「わかりました」


 そりゃそうなるか……って、親父が黄金の剣を持ったまま走り出したよ!

 待て! その剣はコレットにプレゼントした物でお前にあげたわけじゃ――行ってしまった。

 色んな意味で最悪最低だ。


「ありゃ、行ってしまったようじゃな」


 その全ての元凶を作った奴がここに……。


「それにしてもケビン、何故剣をキャッチしなかったのじゃ? そのせいで小娘に当たってしまったのじゃ。じゃが小娘も良くあれで無事じゃったの~実に不思議じゃ」


『――――』


 体が再生したら、絶対こいつにゲンコツをお見舞いしてやる!!

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