と、意気込んでコレットの目の前に出たのはいいが……。
「……………………」
コレットが目をまん丸にして固まってしまった。
さすがに突然飛び出したのはまずかったかな?
でも親父に邪魔される可能性も考えると、こうするしかなかったし……。
「――っ!」
――パンッ!
『!?』
いきなり、コレットが両手で自分の頬を叩いた。
可愛い顔に何しているんだ……あーあ、ほっぺたが赤くなっちゃっているじゃないか。
「――っく、来るなら来い! えい! やあ! この!」
ちょっ! コレット!?
今度はメイスをでたらめに振り回し始めた。
これは俺を近付けさせない様にしている感じだが、何故そんな事を……まさか、まだ俺がまだ鎧に体を乗っ取られたままと思っているのか!?
『大丈夫だ、コレット。俺はもう乗っ取られては――』
「うわああああああああああああ!!」
駄目だ、まったく聞く耳を持ってくれない。
むしろ悪化してしまった気がする。
「コレット! 今行くからなああああ!」
うげっ! 親父がこっちに気が付いて走って来た。
くそっこんな状況だが仕方ない、親父に邪魔される前に作戦実行するしかない!
『コレット、俺を見ていてくれ!』
じゃないと、俺が剣をキャッチする瞬間を見逃してしまうかもしれない。
それだと意味が無い!
「――あああああああ……あ?」
手を挙げて――。
「え? え? 何? 何なの!?」
――ビシッと親指を立てる!
さぁ今だ! 黄金の剣を投げろ、ナシャータ!
――ブオン!!
「……?」
今投げたような音がした。
後はそれを俺がキャッチすれ――。
――パカーン!
『――ばっ?』
何だ? 何が起きた!?
いきなり俺の体が爆ぜたぞ!?
――ヒューン!
俺の後ろから何かが貫いていった!?
まずい! このままではコレットに――。
――バコンッ!
「ウギャ!!」
やっぱり当たった!!
――ドゴオオオンッ!
「ゲフッ!」
しかも、勢いそのままにコレットごと壁に激突したし!!
「コレットオオオオオオ!!」
『―――――――――!! ――!?』
あれ、叫べないぞ。
うげっ! さっきの衝撃でアゴが外れてしまっている!
これじゃ何も喋れないじゃないか。
「――おい! コレット!! 怪我はないか!?」
親父がコレットの元へ駆けつけて起こしている。
その役目は俺がしたかったな……いやいや、今はそんな事よりコレットの状態だ。
すごい音がしたからな、これは大怪我をしているに違いない!
早く治療をしなければ!
「……えと……大丈夫みたいです……?」
……今、コレットは何て言った?
大丈夫って言った気がしたんだが。
「何で疑問系なんだ、本当に痛みはないのか?」
「……はい……どこも痛みはないです。よいしょ……」
嘘だろ。
壁に激突した衝撃でひび割れているんだぞ?
それなのにコレットは普通に立ち上がった……。
「そうか、なら良かったぜ。何せこんな状態だったからな」
「こんな? うわっ!」
コレットが後ろの壁を見て驚いている……どうやら本当に怪我をしていないようだ。
何はともあれ! コレットが無傷でよかったーーーー!! さすがに今回は肝が冷えたぞ。
あんな衝撃的な事が起きたっていうのに無傷だなんて奇跡だ、きっと俺とコレットの日頃の行いがよかったからだな……うんうん。
「ああああああああ!!」
っ! コレットが叫び声を!
「どうした!? やっぱり何処か――」
「鎧がへこんじゃいました!」
何だそんな事か、びっくりさせないでくれ。
「……お前なぁそんな事で叫び声を上げるなよ、ビックリするだろ」
まったく、その通り。
「え?」
無傷だったんだから、鎧がへこんだ位どうって事はないじゃないか。
それにしても一体何が起こったんだ、俺の体はバラバラになるわ、コレットは何かが当たるわ……。
「……まぁいい。それよりも、スケルトンは……バラバラになっているから大丈夫そうだな」
大丈夫であって大丈夫じゃないんだがな。
意識はあるが動けないんだよ。
「で、飛んできたのはこれか……よっと」
親父が持ち上げたのは、くの字に曲がった……黄金の剣?
何であんな所にあるんだ。
……………………。
待て待て、順おって考えろ。
まず、俺が合図した時にナシャータが黄金の剣を投げた。これは投げた音がしたから間違いはない。
それから、ほぼ同じ位に俺の体がバラバラになり、コレットに何かが当たって吹き飛ばされた。
そして、あのくの字に曲がった黄金の剣が落ちていた……そうなると真実は……。
あのド馬鹿ニュート! 黄金の剣を俺に向かって投げろとは言ったが、手加減無しのどストレートに投げやがったな!?
――ガリッ
あっ親父が黄金の剣の先端を噛んだ。
コレットにプレゼントする物なのに汚い事をするなよ!
「歯形がついたと言う事は、こいつは間違いなく純金だな。しっかし、何でこんな物がバリスタ並みの威力で飛んできたんだ?」
「え! これが飛んできたんですか!?」
「ああ、俺の角度からよく見えた。こいつが手を挙げた瞬間、後ろから飛んで来たんだ……手にワイヤートラップでも引っかかったのか? いや、そんな罠があればとっくに見つかっているはずだし……位置が高い……」
いや、そうじゃなくてだな……。
めちゃ考え込んでいるが、そもそもそんな罠はこの遺跡にはないし。
色々と説明したいが、しゃべれないからどうしようもない。
「んー……現に飛んできたから罠と考えるべきか。なら、この1発だけとも限らんな。次が来るかもしれんからここを離れるぞ」
「わかりました」
そりゃそうなるか……って、親父が黄金の剣を持ったまま走り出したよ!
待て! その剣はコレットにプレゼントした物でお前にあげたわけじゃ――行ってしまった。
色んな意味で最悪最低だ。
「ありゃ、行ってしまったようじゃな」
その全ての元凶を作った奴がここに……。
「それにしてもケビン、何故剣をキャッチしなかったのじゃ? そのせいで小娘に当たってしまったのじゃ。じゃが小娘も良くあれで無事じゃったの~実に不思議じゃ」
『――――』
体が再生したら、絶対こいつにゲンコツをお見舞いしてやる!!