いつもの魔晶石もとい、瓦礫の間に到着。
さて、研究室はこの遺跡の何処にあるんだろう?
「――ほっと。ふぅ……」
お、ポチも上がってきた。
相変わらず身軽だなー。
「ごしゅじんさま~やっぱりポチも、いっしょにはこんでほしいです~」
「またその話か。前にも言ったじゃろ、ポチ自身で登った方が早いと……」
「そうですけど、これのぼるのにたいりょくつかうんですよ!」
そうなのか。
簡単に登ってくるからそんな風に見えなかった。
「それに、エサなんてかるいからポチもいっしょでいいとおもうんですけど! エサばかりやさしくしないで、ポチにもやさしさをください!」
「じゃが――」
「ください!!」
今日のポチはえらい噛み付くな。
――キッ!
って、ポチの奴なんで俺の方を睨みつけているんだ。
相手が違うだろう。
「わかったわかった! 次からはお前も運んでやるのじゃ!」
「やった~!」
ポチがすごく喜んでいる、運んでもらうだけでそんなに嬉しいものか?
俺にはわからん。
「まったく……それじゃ、わしに付いて来るのじゃぞ」
「は~い」
『おう』
研究室か……近くにあれば良いけ――。
「着いたのじゃ、この先に研究で使っていた部屋があるのじゃ」
――ど?
えっ、もう?
『いや、着いたって……』
ナシャータが指をさした部屋は、瓦礫の間の前にある部屋……。
『近っ!!』
近いといいなと思ったけど、これはこれで近すぎだ。
「当たり前じゃ、
『そりゃそうか……しかし、この部屋……』
物の見事に何もないんだが……。
『おい、この部屋からっぽだぞ?』
ハッ! もしかして、誰かが既に資料を持ち去ったのか?
一体何処のどいつだ!? そんな事をする奴は許せん!!
「お前は何を言っておるのじゃ? この部屋は元々何もないのじゃ。わしはこの先の部屋の事を言ったのじゃ」
『はい?』
ナシャータが部屋の壁に指をさしている。
何か? この部屋をさしたんじゃなくて、この部屋の壁をさしていたのか?
『そんな紛らわしい事をするなよ! 俺はこの部屋の事だと思ったわ!』
ただ、この部屋じゃなくて良かったと安心している自分もいるが。
「何じゃ、うるさい奴じゃな。勘違いしたのはケビンじゃろ、わしは別に部屋に行かなくてもいいの――」
『――すみません、開けて下さい』
「調子がいい奴じゃな。え~と、確かここの仕掛けは……あったあった、この出っ張りを押し込むと開くはずじゃ。よっ」
――ガコンッ
『お、壁が開いた』
さてさて、中はどうなっているのか……崩れていませんように。
後、頼むからこの部屋みたいに何もないっていうのだけは勘弁してくれよ。
※
「ふむ、どうやら中は大丈夫の様じゃな」
良かった部屋は崩れてはいなかったし、色々物が散乱しているのが逆に安心した。
それにしても、この散らかし具合はジゴロの爺さんと同じだな……どれだけ血が強いんだジゴロ一族。
「ケビンの目当ての物があるとすれば、その机の上に積んであるのに書かれていると思うのじゃ」
『……まじかよ』
机の上には紙の山が何束も出来ている、これは一体何枚あるんだ? 余裕で百単位はありそうだが……考えるだけで恐ろしい。
どっちにしろ、全部見るのはすごく大変だから2人にも協力してもらうしかないな。
『なあ、これは手分けして――』
「それじゃ、わしは腹減ったから木の実を探してくるのじゃ」
『へっ?』
何を言い出すんだ、こいつは。
『いや、これは――』
「あ、ポチもいきます」
『ちょっ!』
おおい! お前まで!
「それじゃ頑張るのじゃぞ~」
「がんばれよ~」
『待て! この量を1人では……』
本当に俺を置いて2人して行ってしまった。
『マジかよ……』
これを全部1人で見ろってか!
しかも、薬があるかどうかもわからんのに!?
『……薬……』
そうだ、これはコレットの為なんだ。
今もコレットが苦しんでいるかもしれない、だったらこのくらいやってのけてやる。
『……………………やってやろうじゃないか!!』
※
「遅くなったのじゃ、いや~この辺りは実を取りつくしたみたいで奥まで行くはめになったのじゃ。どうじゃケビン、薬は見つか――」
『プシュー』
「――ってはおらん様じゃな……」
「かおのありとあらゆるあなから、けむりがでてますね」
幸い文字も現在と変わらないし、紙も多少劣化している程度で普通に読める……読めるんだが、問題なのはここに書いてある事がわけがわからない。
知らない単語がいっぱいだし、何故か料理のレシピも混じっているしで……俺は何を見ているのかさっぱりわからん。
『やっぱり、これだけの量を1人で見るのには限界があるぞ……。あ、そうだ、ナシャータに聞きたい事があったんだ』
「なんじゃ?」
『この研究結果? の紙を見て疑問に思ったんだが、約200年前に書かれているのに何でこの程度ですんでいるんだ? 普通の紙ならもっとボロボロになっているはずなのに』
そう多少劣化している程度なのがおかしい。
見られるのはありがたいんだが、これはこれで気持ちが悪い。
「そんな事か。これは
『ああ、魔剣とか発掘されても普通に使えたのはその為だったのか』
というか、魔樹でも紙は作れたんだな……知らなかった。
今に伝わってないって事はこの知識も消されたのか、何て勿体無い。
「しかし、あやつもよくこんなに書いたものじゃな……ん? おい、ケビン。ここに薬の調合まとめって書いてある紙があるのじゃが……」
なんだって!?
『どっ何処にあったんだ?』
「何処って、今わしの足元に落ちておったのを拾っただけじゃ」
『はあ? そんな所に!?』
机の上ばかり目が行って、床に落ちていたのはまったく気にしていなかった。
そんな近くに落ちていたなんて、まさに灯台下暗し……。
『さっきまでの俺のがんばりはなんだったんだ! ちくしょおおおおおお!』
「あ、エサがじぶんのあたまをたたきだした」
「やはり見ていて飽きんの、このスケルトンは……」