コレット達からある程度距離をとったが――。
『……どうやら、親父たちは追ってこないようだな』
あー良かったー。
追って来られたらどうしようもなかったぞ。
《くそっ! どうしてだ!? 何故体を奪い返されたんだ!?》
何故……か。うーん、それは俺にもよくわからん。
その時は必死に――あっそうか! 体を取り返せた理由はこれだな。
だとすると、こいつにはわからんだろうな。
『……フッ、お前にはわからんだろうさ……』
何せこいつは、人に寄生し乗っ取って生きてきたんだ。
考えすらしないだろう。
《何だと!? どういう事だ、お前にはわかるというのか!? 何だ、教えろ!》
別に答える義理もないが……こいつに勝って体を取り戻したし、コレットも守れたから今すごく気分がいいから教えてやるか。
『フッ、いいだろう。……特別に教えてやるよ』
《一々、その鼻で笑うのは腹が立つな……まあいい、それは何だ? 早く言え》
おい、人が教えてやるって言っているのにその言い草はなんだ。
まったく、しょうがない奴め。
『それはな――』
《そっそれは……?》
『――コレットへの「愛」さ!』
そう、答えは実にシンプルな事だ。
人間とは想い一つで強くなれるっていうのが証明された瞬間でもあるな。
《……へ? ……アイ……だと?》
『そう! 愛する人を守る時、人は奇跡を起こすものなのさ!!』
……しまった! 今の台詞はコレットの目の前で言うべきだった!
この言葉を聞けば、コレットは胸キュンしただろうに。
あーでも、邪魔者がいすぎてそれどころじゃなかったか……残念。
《……いや、それはないわ》
おい、なんで即否定なんだよ。
《そんな事で俺から取り返す事なんてできるはずないだろ……あーあ、聞いて損した、頭の中がすっからかんなのに何が愛だ、骨のクセに》
『…………』
言いたい放題言いやがって、お前自身がさっき体験した事だろうが!
つか骨のクセにってなんだよ! 骨が愛しちゃ駄目なのか!?
「何、背中がかゆくなる言葉を言っておるのじゃ……」
《――っ!?》
この声は……やれやれ、やっと来たのか。
「お、どうやらそいつとケビンの繋がりは切れている様じゃな」
『何とかな……で、ナシャータ。お前は一体今まで何していたんだ』
「? 何って、昼寝をしておったのじゃが?」
はあ? 昼寝だって?
こんな大変な時に何のんきに寝ているんだよ!!
『おい、寝ていたってなんだよ! こっちは色々あって大変だったんだぞ!』
「そう怒るな。仕方ないじゃろ、眠たかっんじゃから」
だからといって、俺をほったらしはどうなのよ。
「そんな事よりほれ、今のうちにそいつをとるから動くなよ」
っとそうだな、早いとここいつを取ってもらわないと。
『ああ、頼む』
あーやっとこいつから開放される。
《くそっ! やめろ!》
「そりゃ!!」
《くそおおおおおお!》
――スポーン
やった、脱げた!
これならもう問題はないな。
「これでもう大丈夫じゃ。さてこいつをどうす……ん? おい、ケビンどこに行く気なのじゃ?」
早く戻って、コレットに事情を説明しないと。
あんなに怖い思いをさせてしまったんだ、ちゃんと謝らなければ。
『決まっているだろ! コレットのとこへ戻って説明と謝るんだよ!』
まだコレットが居ればいいが。
「そんな体で戻る気か? さすがに無理じゃと思うが……」
『え? ――ハグッ!?』
そうだった……今の俺の体は色々とおかしかったんだった。
うまく体が動かせなくて転んでしまった。
「あ~あ……言わんこっちゃないのじゃ。回復するまで大人しくしているんじゃな」
『そんな……』
走りにくかったが、がんばってここまで走って来たのに。
来た道を戻れないなんて――ん? それはおかしくないか?
『ちょっと待て、俺はここまで走って来たんだ。なのに今体が動かないのは何故なんだ……?』
「それはこいつの魔力のおかげじゃな。ケビン自身の魔力は尽きかけておる、じゃからこいつを引き剥がしたせいで魔力が足りずに体が動かないんじゃ」
ええ……そいつのおかげだったなんて。
あれ? じゃあ、俺の魔力は何処へ行ったんだ。
『待て待て、俺は魔力を使うような事はしていないぞ?』
「何を言っておるのじゃ。こいつとの繋がりを断ち切る時に使っているのじゃ」
……ナンデスト。
『いや、それは愛の力でだな……』
「はあ? ああ、それでさっきあのような事を言っておったのか……それは、お前が自分自身の魂に魔力の結界を張り、こいつを弾いたのじゃ。そうでなければ魔力も尽き掛けてはおらぬし、体も取り戻せてはいないのじゃ」
俺ってそんな事をしていたのか、完全に無意識だった……。
いや、それを無意識で出来たから……やっぱり愛の奇跡じゃないか。
どいつもこいつも馬鹿にしやが――。
「いまもどったところで、あのにんげんたちはもういないぞ」
『へっ?』
今、何て?
もういないって聞こえたような。
「お、ポチ、見張りご苦労じゃった。気配が消えたとは思っておったのじゃが……やはり遺跡から出て行ったか」
どうやら空耳じゃなかったらしい。
そんな……これじゃ誤解されたままじゃないか。
「はい。エサがにげたあと、おんながたおれまして――」
『なんだって? コレットが倒れた!? それはどう言う事だ! 早く説明をっ――ムギュッ!!』
「うるさいのじゃ、ポチの話がきこえんじゃろ! ポチ続けるのじゃ」
ナシャータに頭を押さえつけられた。
今日は口を閉じられてばかりなんだが。
「どうやら、そうとうねつがあったみたいです。それでたおれたと、おとこたちがさわいでいました」
コレットが熱を出した? 何かの病気か?
こうしちゃいられない、這いずってでも行かねば!
「ケビン……まだ動く気か?」
『――プハッ! 当たり前だろ! コレットが倒れたんだぞ、様子を見て来る!!』
コレット、今行くからな。
待っていてくれよ。
「そんな体で行けるわけがないじゃろ……それにじゃ、あの結界からどう出る気なんじゃ……」
『あっ……』
そうだった、結界という最大の壁があったんだった!
『ああもう! こんな不便な体は嫌だああああああああ!!』