しかし、このコアをまたミスリルゴーレムに戻すなんてもったいないよなー。
コレットにプレゼント出来なかったし、1個ぐらいくすねてもわからない……わけないか、何せ11体の場所もわかっているし、そもそもコアを何処に隠すんだって話だ。
うまく誤魔化したとしても、ポチの鼻があるから一発で分かる……うん、やはりどう考えても無理だな。
『しょうがない、これは諦めるか……』
となると、プレゼントは何がいいか考えなさないとな。
うーん……コレットが喜びそうな物……ってちょっと待てよ、よく考えたらコレットの好きな物って何だ?
そうだよ! 好きな物どころか食べ物も知らないし! 俺はアホか、花とかコアとかの前に本人が好きな物を知っていないと駄目じゃないか。
そのあたりをどうにかして調べないといかんな……ナシャータに相談してみるか。
『よし、俺も戻って――ん? この壁に穴なんて空いていたっけ?』
穴の下の瓦礫を見ると、通路側と向こう側を挟んで山のようになっている……という事は、これは崩れて出来た穴だな。もし、冒険者の誰かが壊したのなら瓦礫は向こう側に飛ぶからこうはならない。
……穴があれば覗きたくなるのが冒険者の性って奴よ。
『どれどれ? 中はっと――ふむ、どうやら隠し部屋の一つか……』
と言う事は、ここはまだ探索されていないって事だ。
『グフフ。では、さっそく探索をしますか! よいしょっと』
探索か、いやー懐かしいな、この感じ。
何かないかなっと……おっあそこに何か落ちているぞ。
『――これは……皮の鎧?』
このホコリ具合から長い事ここにあった様に見えるけど、この皮は全然劣化をしていないな。
『一体何の皮だろう? 見た事がないが……まぁいいか。他にはっと……んー何もない、か』
結局この部屋にあったのは、この皮の鎧のみだが……何でこんな所に?
これを着ていた奴が俺みたいに罠にはまった可能性があるが、この持ち主が見当たらないし……これはどう言う事だろ?
あっそうか、俺みたいにスケルトンかゾンビになってこの穴が空いた時に外に出たのかも。
この鎧は値打ち物にまったく見えないし、捨てて行ったんだな……となるとこれは完全なハズレ物って事か。
『まぁこれが高価な物だとしても、今の状態じゃ持っていても宝の持ち腐れか』
……ん? 今の状態に鎧……あっそうだ!
この鎧を着れば更に体がバラバラになりにくいじゃないか、なんで今まで思いつかなかったんだ俺……。
よし、さっそく着てみよう。
『――よっ。お、ぴったりだ』
まるで吸い付いているかのようだ。
これはいいのを拾ったぞ。
「お~い、ケビン! 何をしておるのじゃ? 戻って来るのが遅い……って何じゃ、その鎧は?」
あ、ナシャータの奴戻ってきたのか。
『これはさっき拾ったんだ。これを着ていたらバラバラになりにくいだろ? どうだ、似合うか?』
「いや、似合うも何も……スケルトンが鎧を着て腰ミノを巻いている姿……何とも変てこな格好としか言えんのじゃが」
『変てことか言うなよ! つか腰ミノに関したら、お前が着けたんだろうが!』
「…………さてとケビンもいた事じゃし、戻ってさっさと寝るのじゃ」
あっこいつ、スルーしやがった!
というかこいつ腰ミノが変だって思っていたのかよ。
『まったく……まぁいい、ほれ戻るんだろ? 行くぞ』
これ以上ここにいても仕方がない。
戻って、コレットの事をナシャータに相談しないといけないしな。
「ん? ――スンスン、なんだろうこのにおいは……」
「どうしたのじゃ? ポチ」
「ん~……いえ、なにもないです」
「そうか、それじゃ行くぞ。ケビンの奴がさっさと奥に行ってしまったのじゃ」
「はーい。あのよろいから、おかしなにおいがしたけど……まぁいいか」
※
さて、何かいい案が出ればいいが……。
ナシャータって良い案と悪い案が極端すぎるのが問題――。
《何だ? 生命力と魔力が体に流れ込んできたから目を覚ましてみれば、着ているのが人間じゃなくてスケルトンじゃないか!》
『ん?』
今声が聞こえたような。
でも、ナシャータもポチも後ろにいるし……辺りには誰もいない、気のせいか?
《しかし、このスケルトンはやたら生命力に溢れているな……これはどういう事だ?》
……いや、気のせいじゃない!
何処からか声が聞こえる、何処からだ!?
《まぁどうでもいいか。何せ――》
えっもしかして、この鎧か!?
《――久々に動けるんだからな!》
『グッ!!』
一体何が起こっているんだ!
俺の体の中に何かが入って来る!?
《よし、この肉体……いや骨格か? を乗ってやっ――》
『なっ何だ、こりゃ!』
首から下がまったく動かないだと!?
《…………はっ!? まだ意識が残っているだと! というか、何でスケルトンが意識を持っているんだよ!? この! 消えろ!》
『何を、わけの、わからない、事を!!』
くそっ駄目だ、どうあがいても体が動かない。
《ぐぬぬぬ! はぁはぁ……体のコントロールは奪えたが魂まで完全に乗っ取りきれない! 何だこいつは!?》
それはこっちの台詞だっての!!
《――チッまぁいい、体の方は完全に俺の物になったし、これ以上魔力も使いたくもないしな》
やっぱり鎧から声がする、と言う事は……まさか。
『この鎧は生きているのか!?』
《フハハハ! そうだ、俺は着た者を乗っ取って生き続ける寄生種なのさ!》
鎧の形をした寄生モンスター!?
そんなのがいたのか……。
『そんな寄生する奴が、何であんな部屋にいるんだ!』
《ん? ああ、それはだな……》
……話すのね。
《数十年前、誤って落とし穴に落ちたんだ……》
ここに仲間がいたしー!
《どうにか抜け出そうと考え、俺自身を穴の上に投げて脱出というのを思いついたんだ……だが、俺を脱いだせいで寄生していた身体が正気を取り戻してしまってな……》
そりゃそうだ。
何故、その考えが思いつかないのか。
《その身体の奴はその時の仲間に助けられたが、俺だけ置いて行かれてしまったんだ……あれは寂しかったなー仲良くしていたのは俺だったのに……》
持ち主が見当たらなかった謎がそれかよ!!
馬鹿だ、こいつ馬鹿すぎる!