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コレットの書~不調・2~

 そして、いつもの奥の席へ……。

 座れる席何てたくさんあるのに、何でここなんだろう?

 他の冒険者の人もここには座っているのを見たことないし……もう完全にグレイさん専用席って感じよね。


「グレイさんっていつもこの席に座りますよね? どうしてなんですか?」


「ん? ああ、この席はよくケビンと一緒に飲んでいたんだ。何となくこの席で飲んでいたら、ケビンがふらっと戻って来そうな気がしてな。それでここに座り続けているんだ」


 あ~それで他の人は座らないようにしていたのか。


「そうだったんですか」


「席に歴史ありってやつっスねぇ」


 マークさん、うまい事を言ったと思っているのかすごい満足そうな顔している。

 だけど何故だろう……マークさん口を挟むといい話でも、すごく軽い話に思えてしまう。


「っと湿っぽくなっちまったな、すまん。それじゃ本題に入ろうか」


「あ、はい。お願い致します」


 意外な所でグレイさんのケビンさんへの想いが知れたわね。


「……えーと。まず、ギルドから二つ依頼をされたんだ。一つはコレットの探索、これはマークが落ちていくコレットを目撃し、その後の安否が分からないから出された依頼だ。まぁこれに関したら、知っての通り白紙になったわけだがな」


 ずぶ濡れになったから早く帰っただけで、そんな依頼が出る何て……。

 たった一晩で大げさな気がするんだけどな。


「……たった一晩で大げさなって思っているだろ?」


 うっ顔に出ちゃってたかな。


「今回に関したら落ちるのが目撃されているのに、その後の安否が誰もわかっていなかったのと、もう一つの依頼と関係する話だが、コレットが生きていた場合でもミスリルゴーレムが遺跡内をうろついているから身の危険があるかもしれない、といった理由があったんだ。後でキャシーにお礼を言っておけよ、コレットの為にだいぶ動いていたからな」


「……なるほど、わかりました」


 キャシーさんには本当に助けられてばかり……。

 今度、何かお礼をしないといけないわね。


「で、もう一つの依頼は魔晶石の部屋にいた、まったく動かなかったミスリルゴーレムが動き出したから、それの調査だ」


「あ、やっぱりあのミスリルゴーレムって魔晶石の部屋にいた奴だったんですか?」


 ミスリルゴーレムは見えたけど、見えたと同時に私は落ちたからちゃんと見えてなかったんだよね。


「それは間違いないっスよ、だって頭に魔晶花が咲いてたっスから」


 ああ……それは間違いなく魔晶石の部屋にいたミスリルゴーレムね。

 それ以外に、頭の上に魔晶花が咲いているわけがない。


「とりあえず、経年劣化で動かなくなったと最終的に判断したんだがなーまさか、動き出すとは思いもしなかったぜ……ドラゴニュートの件がやっと終わったから俺も遺跡探索しようと思っていたのに……まったくついてねぇ。まぁ、また白竜の遺跡関係だからしかたねぇけど……」


 なるほど、それにしても四つ星級冒険者っていうのも大変そう。

 あれ? 今思えばグレイさん以外の四つ星級冒険者って見た事がないような……うん、ない。

 三つ星級もそこまで多くないし、大半が二つ星級ばっかり。


「あの一つ気になった事があるんですけど、いいですか?」


「何だ?」


「私、リリクスで四つ星級の冒険者ってグレイさんしか知らないんですけど、他にはおられないんですか?」


「あー確かにそうっスね、俺もこの街に来てから四つ星級冒険者は先輩しか見たことがないっスね」


「そんな事か。無論、四つ星級冒険者は俺以外いるさ、とりわけ多いってわけでもないがな。ただこの場所がな……」


「場所?」


 場所、つまりリリクスって事よね。

 それと、四つ星級冒険者と関係が?


「この周辺は高くても中級レベルのモンスターしか出ないし、近くには白竜の遺跡しかない。昔は遺跡に隠し通路が多かったから、その探索ためにそれなりにいたが……今はもう俺だけしかいない。他の奴らはもっと高レベルのとこへ行って稼いでいる。俺もケビンの件がなければリリクスを拠点にしていなかったかもしれないな」


 そういう事か。そうだよね、冒険者だから稼げる所に拠点を移すのは当たり前。

 とは言っても、今の白竜の遺跡には低レベルモンスターの他にレア・スケルトン、ドラゴニュート、ダイアウルフ、ミスリルゴーレムといった明らかにおかしいのも混じっているんですけどね。


「そうだったんですね。すみません、話を脱線させちゃって」


「かまわないが……その冒険者不足で今問題が起こっているんだよな……」


 その問題でさっきグレイさんが頭を抱えていた事かな?


「遺跡に出たミスリルゴーレムとコレットの情報、後パーティーを集める為に昨日行った奴に声をかけたんだが……皆ミスリルゴーレムを怖がってなのか、俺と関わる前にそそくさと他の依頼を受けて出て行っちまったんだよ」


 あ~それで今日は人がいなかったのか。

 ドラゴニュートの時も他の人は来なかったし、これはグレイさんの人望がないのか……このリリクスの冒険者がひ弱なのか……どっちなんだろう。


「で、唯一残ったのが……」


「俺っス!」


 ああ、それでマークさんと一緒にいたのね。

 1人しか捕まえられず、それも一つ星……頭を押さえていた理由がわかった、そして私が席に連れて来られた理由も……。

 この流れだと恐らく――。


「昨日、危ない目に合った早々こんな事を言うのもあれなんだが……コレットは昨日遺跡に行き、しかも魔晶石の部屋でミスリルゴーレムを見ていると今回の調査に打って付けなんだ……それで、何だ……出来れば同行してほしんだ。こいつだけじゃどうも……」


 デスヨネ~……予想通りです。


「ちょっ!? 先輩! 俺の実力を信じてくれていないんっスか!?」


「当たり前だ! お前の行動は色々危ないんだよ!」


 ですね、私の場合は殺されかけたし。

 まぁそれは置いといて……う~ん、どうしよう……昨日も結局ケビンさんを探せなかったから、今日こそはと思っていたんだけど。


「…………わかりました、同行します」


 昨日の事で心配も迷惑もかけちゃったし、ここは手伝っておこう。


「そうか! それは助かる!」


 ただ、こんな調子で本当にケビンさんを発見出来のかな……そこが心配だわ。

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