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コレットの書~不調・1~

 ◇◆アース歴200年 6月18日・朝◇◆


「う……」


 もう朝か……う~ん……何だか体がだるい……今までの疲れが出て来ちゃっているのかしら?

 どうしよう……今日は遺跡に行かないでゆっくり休みべきかな……。


「……いやいや、神父様とシスターの笑顔の為にも1日も無駄でにできない! ファイト私!」


 かと言ってこのままなのも心配だし……そうだ、こんな時はあれだ。

 え~と、確かこの袋の中に入れたはずなんだけど――。


「――あった、これこれ」


 神父様特性の漢方薬! これさえ飲めばすぐに元気になれる。

 念の為にいつもの倍飲んでおこっと。


「――ゴクン。う~相変わらず苦いな~これ……」


 あのジゴロ所長さんに飲まされた薬といい勝負だわ。


「……ふぅ、よし」


 薬も飲んだし、ギルドに向かいますか。



 あれ? 今日もギルドの中がいつもと違う感じがする……そうか、今日は他の冒険者達が全然いないせいで静かなんだ。

 昨日は昨日でたくさんいたのもおかしかったけど、今日は今日で異様に少なすぎる……またアンデッド狩りでもあるのかな? まぁいいや、私は私の用事があるしね。


「あ、グレイさんとマークさんがいつもの席に座っているわね」


 どうやら、マークさんも無事に遺跡から逃げられたみたい。

 ん~? グレイさんの様子がおかしいわね、頭を両手で抱えて何か悩んでいる感じ……どうしよう、気にはなるけど……。


「え~と……キャシーさんは……いた!」


 となるとキャシーさんがいるうちに、昨日のレア・スケルトンの事を報告する方がいいわね。

 さて、気合を入れて行くか……いざ戦場ほうこくへ!


「……おはようございます、キャシーさん」


「――っ!?」


 ――ガタッ!


「コレットさん!?」


 え? 何? キャシーさんが私を見るなり、勢いよく立ち上がったけど。


「はっはい、コレットですけど……」


「っ!!」


 どうしたんだろ、キャシーさんが慌ててカウンターから出て来た。


「あの、キャシーさん?」


「ああ! コレットさん! 生きていたんっスねー!」


 今の声でマークさんがこっちに気がついたみたい。

 と言うか、生きていたって何よ失礼な。


「――何!?」


 ――ガターン!!


「コレットだって!?」


 ちょっ今度は頭を押さえていたグレイさんが、座っていた椅子を倒して立ち上がったんけど!


「本当に、コレットなんだな!?」


「えっ? えっ!?」


 グレイさんがものすごい形相でこっちに来て、マークさんはへらへらと手を振りながらこっちに来た。

 何なの!? この状況は!


「コレットさん、ちょっと失礼しますね」


「へっ? ――っキャシーさん!?」


 キャシーさんがいきなり私の体を触ってきたし!


「あの! ちょっ!? くすぐったいんですけど! どうしたんですか!?」


 本当に何しているの、この人は!?

 わけがわからないんですけど!


「……ふむふむ」


「どうだ、キャシー。どこか異常はあるか?」


「……いえ、何処も異常はないみたいです。あ~良かった……」


「そうか……そりゃ良かったぜ。ふぅ……とりあえず、これで一つの問題は解決したな」


「はい、そうですね」


 2人が安堵している、そして何かの問題が解決したらしい……。

 さすがに置いてけぼりすぎませんかね?


「あの~この状態の説明をお願いしたいんですけど……」


「あっ、失礼しました。えと、昨日の白竜の遺跡でミスリルゴーレムが大暴れしたと報告がありまして」


 あの後、ミスリルゴーレムは大暴れしていたんだ。

 すぐ逃げたのは正解だったみたいね。


「それでマークさんからの報告の中に、床が崩れてコレットさんが落ちていったとありまして」


 あの時は本当に死んだかと思いました。


「でだ、そのマークもミスリルゴーレムにずっと追われて、コレットの安否は確認できなかったと言っていてな……夜になってもコレットはギルドに戻って来ないしで……心配していたんだぞ」


 なるほど……それでキャシーさんってば、さっき異常が無いか私の体を調べて、何もないから2人で安堵したのか。

 う~ん、あのまま直帰したたせいでこんなに心配をかけちゃうなんて思いもしなかったわ。

 何だか悪い事しちゃったな。


「そうだったんですか……ご心配をおかけしまして、ごめんなさい」


 ただ、怪我をしていたのなら、今頃ここじゃなくて病院にいると思います。

 と言いたいけど、なんだか言い辛い……。


「いえいえ、ご無事だったんで何よりです」


「それにしても、落ちたのに良く無傷だったな」


「えと、それはですね――」



「なるほどなぁ、そりゃまた運がいい」


「そうですね……それにしてもコレットさんって、幸運の女神様でもついているんですかね? 今回無傷でしたし、前々から遺跡に行くたびにお金も稼いでいますし」


「へ? ん~確かに言われてみればそうですけど……でも、幸運の女様はついていないと思いますよ……」


 仮についていたとしても、幸運じゃなくて骨の神様に憑かれている気がする。

 遺跡に行くたび聖水を付けているのにスケルトン、いやレア・スケルトンか、に出会うなんてありえないよ。


「いやーコレットさんが落ちて行った時はさすがに焦ったっスよ……けど、俺も追われてたんでどうしようもなかったっス……助けに行けなかったのは申し訳ないっス」


「まぁ……あれはしょうがないと思いますし」


 立場が逆ならたぶん私も同じ事になっていたと思う。


「となるとキャシー。コレットが無事だったから、ギルド依頼のコレット捜索はもう大丈夫だな?」


「そうですね、ただ報酬は出ませんが」


 私に捜索依頼が出ていたんだ……。


「ええ!? 出ないっスか!? ――あだっ! ちょっと先輩、何で殴るっスか!?」


「出るわけがないだろう、この馬鹿が! ……たく、それじゃミスリルゴーレム調査のみだな」


 ミスリルゴーレム調査?


「はい、よろしくお願い致します」


「よし、それじゃ2人ともこっちに来てくれるか」


「うっス」


「あ、はい」


 あっでも、まだレア・スケルトンの報告が残って……まあ後でもいいか。

 肋骨を抱えている変なレア・スケルトンがいたってだけだしね。

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