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ケビンの書~逃亡者・4~

 まさかこんな所でコレットに会うなんて、何たる偶然……これが運命の赤い糸って奴なのか!

 あっそうだ、コレットの体に異常がないかを確認しておかないと! 体……よし! 手足……よし! 顔……よし! かわいい!

 ふむ……全身を見渡す限り、何処にも怪我をしている様なところはないな……良かった、どうやらナシャータの言う事は本当だったようだ。

 しかし、何故あの爆発で無傷だったのかはよくわからんな……まぁコレットが無事なら別にどうでもいいか。


「……」


 あれ? なんか、コレットが驚いた顔のまま固まっちゃっているけど、どうし――。

 あっ……そりゃそうだ、昨日に引き続き今日もいきなり俺がコレットの目の前に出たんだ……びっくりして固まるに決まっているよな。

 昨日は驚かせる目的があったけど、今日はまったくその気はなかったが……ここは男らしく素直に謝るべきだな。


『あーなんだ……すまん、コレット。昨日はともかく今日は驚かせるつもりは――』


「……っ!」


 ……ん? コレットの顔が驚きから険しい顔になって、腰に付けていたメイスを手に持って……え? そのメイスを振りかぶろうとしているんだけど、なんでだ?

 辺りにモンスターは……うん、いない、そもそもゾンビやスライム、スケルトンは倒されて……もしかして急にでて来たから俺を普通のスケルトンと勘違いしているんじゃ!?


 ――スッ


 まずい、やっぱりそうだ、あの目は完全に俺を殴ろうとしている!


『ちょっまっ』


「たあああああああああああああ!!」


 ――カーン!


『てっ!?』


 ああ、俺の体が見える……って事は頭を飛ばされたんだ……。

 あれ……意識が……消えそう……そうだ……ここだと……普通の……状態……だから……意識……が……。




 ◇◆アース歴200年 6月17日・夕◇◆


『……うっ』


 ……ここは、何処だ……?


「お、目覚めた様じゃな」


 ……ナシャータにポチ? その後ろにでかい木……ここは【母】マザーの場所か?

 俺は一体……そうだ、コレットに普通のスケルトンと間違えられて殴り飛ばされて……そして意識が飛んだんだ……。


『……なんで、俺は……こんな所に……?』


「ふむ、順をおって話すとじゃな。まず、戻ったらお前がいない、周りにはスケルトンの骨だらけ、じゃからその骨の中のどれかがケビンじゃと思ったのじゃが……あまりにも骨の数が多くて手のつけようがなかったのじゃ」


 確かに、大量の骨の中に俺のが紛れ込んだら区別なんて出来るわけがないわな。


「じゃから再生するまで待とうかと思ったんじゃが……」


「エサ、ポチにかんしゃするんだぞ」


『は? なんでだよ』


 何を感謝しろって言うんだ?


「ポチの鼻でケビンを探し出したというわけじゃ、それでさっさと再生させるために【母】マザーの所に持ってきたわけじゃ」


 ああ……なるほど、そういう事だったのか。


「それにしても何があったのじゃ? 体は肋骨を抱きかかえて壁と壁の隙間にあるわ、頭は抜け落ちた床の下に落ちているわで、わしにはどんな事が起きたのか想像がつかんのじゃが」


『ああ、それはだな……ってちょっと待て! 俺の頭が抜け落ちた床の下に落ちていただと!?』


「そうじゃが?」


 はぁ!? 俺がコレットと出会った場所は床なんて抜け落ちてなんかなかったぞ。


『それはおかしい! 俺がいた時は床なんて抜け落ちてなんかなかったぞ!?』


「いや、そう言われても……ケビンの頭がそこに落ちとったのをわしとポチが拾ったのじゃから間違いはないのじゃ」


 そんな状態で気が付かない方がおかしいし、そもそもそれじゃコレットと出会う事なんて無理だ。

 うーん……あ、そうか! 今の遺跡って爆発の影響で崩れやすくなっているんだった、だから俺が意識を無くした後に崩れたのかも……って事は!!


『コレットが落ちてはいなかったか!?』


 床が崩れ落ちた時にコレットも巻き込まれたかもしれん。

 そうだとすると一大事じゃないか!


「は? 小娘じゃと? いや、落ちてはいなかったのじゃ」


『本当の本当なんだな!?』


「本当の本当じゃ! ポチ、人間の女を見たか!?」


「ポチもみていませんし、にんげんのにおいもありませんでした」


「ほれ、これでわかったじゃろ」


『……そうか……すまん……』


 どうやらコレットがいない時に崩れたようだな。

 あー良かった。


「その感じじゃと、あの場所で小娘と出会っていたみたいじゃな」


『ああ、コレットに普通のスケルトンと勘違いされたみたいでな、頭を殴り飛ばされたんだ』


 思い出しただけで悲しくなってきた。

 まさか普通のスケルトンと間違えられるなんてな。


「――プッ! 普通のスケルトンに間違えられたって、ケビンはスケルトンなのじゃから普通もなにもないじゃろ」


 なっ失礼な奴だな、確かに今の姿はスケルトンだ。

 だが他のスケルトンとは大違いなんだよ。


『普通じゃねぇよ。ちゃんとコレットにメッセージでスケルトンになった事を伝えてある。それに名前の入ったプレートも首にかけて……あれ? プレートがない!』


 確かに首にかけてあったはずなのに、いつ落としたんだ!?


「は? プレートじゃと? よくわからんのじゃが、わしとケビンが出会った時にはそんなものは無かったのじゃ」


『え? ……あ、そういや腰布も……』


「先に言っておくのじゃ、わしと出会った時には腰布なんてなかったのじゃ」


『……マジ?』


「マジじゃ」


 え? 一体いつ無くしたんだ!? ナシャータと出会った時にはもう無かったとなると……。

 あ、あの時だ! コレットに初めて殴り飛ばされて、バラバラになった時にプレートと腰布が外れたに違いない!


『……という事は、俺はずっと素っ裸でコレットの前に出ていたって事になるじゃないか! うわぁああああああああああああ!!」


 最初は下半身がすごく気になっていたのに、バラバラになって再生した後はそんな事一切思いもしなかった……スケルトンとして感覚がおかしくなったのか?

 どっちにしても、プレートはともかく腰布は目に入るんだから気付けよ、俺!!


「何をそんなに嘆いておるのかわからんが、骨じゃから素っ裸もないと思うのじゃ……」

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