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ケビンの書~逃亡者・3~

「ケビン!! お前が変な事をするから止められずに壁が壊されたのじゃ! どうしてくれるのじゃ!?」


 うーむ、一体何が起きているんだろうか?


《スケルトン発見! ――おりゃ!》


《進行に邪魔ならスケルトン以外も蹴散らすぞ!》


 特に、このスケルトン狙いがわからん。

 いいアイテムも持っていなければ、骨だから素材にもならない……なるとしても肥料くらいだ。

 どうにか情報がほしいところだが……無理だよなー。


「~~~っおい! こら! わしを無視するな! 話を聞くのじゃ!」


 たく、うるさい奴だな。

 またこいつのわき腹をくすぐってやろうか。


『そう喚くなよ、落ち着けって。壁を壊されたと言っても、そもそもあちこち崩れている場所もあるじゃないか』


 なのに壁が壊されたくらいで何を怒っているんだか。


「はぁ!? この大馬鹿者が! わしの家は古いから、あちこち崩れておるのは仕方ない事なのじゃ。じゃがな、わしが見ている前で人間達が好き勝手な事をし、挙句に家の壁を壊されたのじゃぞ!! 怒るに決まっておるのじゃ!」


 あーなるほど、俺も自分の家で他人に好き勝手されて目の前で物を壊されたら怒るな。

 うーん……気持ちはわらんでもないが、だからといってナシャータが出て行ったら昨日の意味が――。


「そ・れ・に・じゃ!!」


『へ?』


 何かナシャータに頭をつかまれたんだが、何を……。


「わしのわき腹をくすぐりおってええええええええええええ!!」


 なっ!? こいつ、俺を持ってグルングルンと腕を回し始めた!

 うおおおおおおおおお! 目が回るううううううう!


『ちょっ! まっ! 謝る! 俺が! 悪かったから! やめてくれええええええええ!』



『……ウェップ』


 この体でも目が回るのかよ、気持ち悪い……。

 それに回されている時、全身ミシミシいっていたから、あのまま続けられていたら粉々になっていたかもしれんぞ。


「ふん! これに懲りたらもう二度と――」


 ――ドカアアアン!


 あ、またどこかで壁を破壊されたみたいだ……。


「――っ! またか!? お~の~れ~!!」


 まずい、ナシャータの顔がさっきより怒りに満ちている。


「もう我慢ならんのじゃ! あやつらを蹴散らしてやるのじゃ!」


 蹴散らすって、こいつとうとう暴力に出始めたよ!


『だから待てって! お前が出て行ったら昨日のやった事が無駄になるじゃないか!』


 せっかくドラゴニュートがいないという理想な状況になっているのに、今ナシャータが出て行ったら意味が無い。


「無駄も何も、今は人間が増えて暴れている方が問題じゃろ!!」


『それはそうなんだが……とにかく落ち着けって!』


 これはまた、わき腹で止めるしかなさそうだが……今度こそ俺が粉々になるかも。

 だが、やるしかない!


「むっまたわしのわき腹を狙っておるのか!? このハレンチ者!」


 確かにそれで止めようと思ったが、何かその言い方されると傷付くんだが。


「ふむ。じゃあ、ポチがいきましょうか?」


 もう! 余計な事を!


「それじゃ!」


『それじゃ、じゃない! ポチも行くな!』


 ドラゴニュートの次はワーウルフが出たとかで騒ぎになるのは勘弁してくれ。


「だから、なぜエサにめいれいされないといけないんだ……むぅ!」


 主人も主人ならペットもペットだな、おい。

 少しは状況を理解してくれよ。


「あ~も~! あ~だこ~だうるさい奴じゃな、わかった……わしもポチも人間達の前に出て行かなければよいのじゃな?」


 やっと分かってくれたか。


『ああ、それでい――』


「よし、ポチ、わしについて来るのじゃ」


「は~い、ごしゅじんさま」


『――いんだ……ってえ? あ、おい! 何処行くんだよ!?』


 あっという間に何処かに行ってしまった……。

 何だ、何をする気なんだ?


「あそこにもスケルトンがいたぞ!!」


 げっ! 見つかった!

 うーん、俺は再生できるから襲われても大丈夫なんだが……。


「あ、逃げたぞ! 追え!」


 でも逃げる! 再生するとはいえ、ここは【母】マザーの場所じゃないから再生に時間がかかる。

 もし、その間にコレットが来ちゃったら会えないからな、だからここは逃げるのが得策だが……そうだ! この辺りは迷路になっているし、壁と壁の間には隙間がある。

 この体ならあの隙間に入れるはずだから、あいつ等をまけるはず!

 よし、この角を曲がった所でさっそく――。


『よしっ、あの隙間に!』


 ――ガッ


『あれ!? 肋骨が引っかかって入れない!?』


「あの角を曲がったぞ!」


 まずい、あいつ等が来る!


『ええい、くそっ! こうなったら――』



「――へっ! たかが骨のクセに、俺達から逃げられるとでも……え?」


「おい、どうし……あれ? スケルトンの姿がない? 何処行った?」


「くそっこっちか!?」


『……どうやら、行ったようだな』


 ふっふふ、これぞ、秘技・隙間隠れ!

 ……とは言っても、無理やり自分で肋骨を外して隙間に入っただけなんだが。

 まぁこれなら普通の人間だと絶対に入って来られないし、追っても来られない……後で肋骨を治さないといけないところ以外は完璧だな。


『さて、どうするか……』


 このまま隠れていてもいいが、ナシャータの事も気になるしな。

 うーん……仕方ない、ここから出るか。

 だが入った方向から出ると、またあいつ等に見つかりそうだから……反対側から出るか、幸い目の前には隙間の出口が見えるしな。


『よっと』


 ふぅ、これなら今後も逃げる時に使えるな。


「えっ?」


『っ!?』


 人の声!?

 しまった! 出た先に誰かいたの……か……って……。


『――ウソだろ!?』

「――ウソでしょ!?」


 何でコレットが目の前にいるんだ!?

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