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コレットの書~宝箱・6~

「……確かに、それなら謎が簡単に解けるかもな」


 はぁ!?


「いやいや! 喋れないスケルトンからどうやって聞くんですか!? それにあの部屋は崩れていますし、スケルトンも粉々に……」


 なっているわよね、さすがに……。


「冗談だよ。だがマークの言う通り、そうでもしないとわからんの事実だし、これ以上考えても仕方ないか。となると、今はこのコアの取り分を考える方が重要だな。とは言っても3個だから1人1個でいいよな?」


 いや、いいよなって言われても。


「そのコアって貴重なんっスか?」


 そう、価値がわからないから何ともいえない。


「ん? あーそうだな……今の相場だと100万ゴールド前後ほどになるか」


「「ひゃっ!?」」


 こんな赤い石が100万もするの!?


「まじっスか!?」


「何でそんなに高額なんですか!?」


「それはだな、ミスリルゴーレムからコアを取るだけでも相当苦労する事とコアを素材にすれば魔力を宿した武器防具が出来る、だからこいつは価値があるんだ」


「へぇ~そうだったんですか……」


 魔力を持った武器防具って、このコアが使われていたんだ。


「……ちょっと待ってほしいっス、今朝、魔晶花のお金をコレットさんが受け取ったっスよね? じゃあこれを取って来た俺が総取りでよくないっスか!?」


 あ、そうか。

 うう、100万が……。


「だが、結局コレットはみんなでって言って分けたじゃないか、お前も受け取ってめぅっちゃ喜んでいただろ」


「いや、それはそうっスけど、それとこれとは話は別――」


「それに爆発でコレットが死んでいたかもしれないのは誰のせ――」


「やっぱりここは平等に分けましょうっス! パーティーで手に入れた物っスからね! 平等に1個ずつ、ほいほいっとこれでよし!」


「あ、ありがとうございます」


 貰っちゃっていいのかな。

 後で、この事が問題になっていざこざにならなきゃいいけど。


「――では、俺はさっそくこいつを売ってきますっス! お疲れ様っス! いやっほーーーい!」


 はやっ、もうマークさんが街に消えて行っちゃった。


「たく……マークの野郎、金額がでかいからって欲が出たのが丸分かりだ。で、コレットはそのコアをどうするつもりなんだ?」


「え? え~と……そうですね……」


 売ればお金が入って、当分はお金の苦労はしないし武器か防具も新調が出来る。

 けどコアを親父さんに頼んで武器か防具を作ってもらえば、普通に買うよりいい装備が出来て遺跡での探索は楽になる。むむむむ、これは難しい問題だ。

 ……よし、ここは。


「私じゃ売る方がいいのか、使う方がいいのか判らないのでグレイさんの意見を聞かせてもらえますか?」


 ベテランのアドバイスを聞こう、それが一番。


「ん~そうだな……売ったらすぐに利益になるが、今後の事を考えると親父さんに頼んで防具にしてもらった方がいいだろう。金があっても命を落としたら意味が無いしな」


 ああ……今日の件もありますしね。


「なるほど、わかりました。これを防具にしてもらいます」


 それじゃ明日に親父さんの所に行こうっと。


「俺はギルドに行く前に親父さん所に寄って行くつもりだが、コレットはどうする?」


「えっ今から行っても大丈夫なんですか?」


 もう日も落ちかけているのに。


「大丈夫大丈夫、何の問題もない」


 へぇ~親父さんって、この時間でも仕事をしているんだ。


「じゃあ私も行きます」



「おーい、親父さーん。いるかー?」


「なっ!? おめぇら、店じまいしようとしているのに来るなよな!! せっかく今から飲みに行くつもりだったのに!!」


 問題あるじゃない、めちゃくちゃ怒っているし。


「まぁまぁそんなに怒るなよ」


「たく……ん? おいコレット、死に掛けたのか? 気を付けろよ、命は一つしかねぇんだからな」


「あ、はい……え? 何でわかったんですか?」


 確かに鎧は壊れちゃっているけど、それで死に掛けたかどうかまではわからないと思うんだけど。


「そりゃ鎧と一緒にプロテクションリザードの革が粉々になっているからな」


 鎧に付いていたよくわからない革は、プロテクションリザードって言うんだ。


「プロテクションリザードだって!? それでコレットがあの爆発で無傷だったのか……」


「はっ!? 爆発!? 俺はそっちの方が驚きだぞ、何があったんだ!」


 あ~これは説明した方が良さそうね。


「え~と、それはですね……」



「……そりゃまた、低レベルの遺跡で起こったとは思えない話だな」


 私も親父さんの立場なら正直今の話は信じられないかな。


「それで手に入れたコアを持って来たわけか」


「そういう事、俺には武器をコレットには防具を頼みたい」


「それは構わんが、代金はどうする? 結構掛かるぞ?」


 はっ! それって、また借金のパターン!?


「それは大丈夫だ。――よいしょっと」


 グレイさんの出した袋から虹色に光る破片がいっぱい出てきたけど、これって……。


「ほう、これはまた純度の高い魔晶石だな」


 やっぱり魔晶石!


「もしかして、あの部屋の魔晶石を取ってきたんですか!?」


「部屋が崩れてきた時にちょこちょこっとな」


 いつの間に。


「これはパーティーの収集品として分けてもいいよな」


 マークさんがいませんけど……まぁいいか。


「はい、大丈夫です」


 むしろありがたい。


「どうだ親父、これなら十分取引になるだろ?」


「ふむ……よし、これならいいだろう買い取り分で作ってやるよ」


 おお! 私にもとうとう魔力の防具を手に入れられる!


「完成には3~4日くらいかかるが、それまでコレットの防具はどうする?」


 あ、そっか。出来れば魔晶花のお金は残しときたかったけど……ん~こればかりは仕方ない。

 結局、出費は避けられない運命なのね。


「じゃあ、この10万ゴールドで買える物をお願いします」


「10万か……じゃ少し待っていろ」


 親父さんが工場の奥に行っちゃった。

 あっそうだ、話がずれちゃったけど、グレイさんに聞きたいことがあったんだった。


「あの、さっき聞きそびれたんですけど、プロテクションリザードっていうのは?」


「ああ、変わった性質の皮膚を持つ大トカゲでな。致命傷のダメージを受けた時、瞬時に皮膚が変化して、あらゆる攻撃を無効化する事が出来るんだ。例えば物理系だと硬化、魔法系は吸収しちまうのさ」


「そんな大トカゲがいるんですか!」


 なるほど、爆発は革が吸収したから無傷だったんだ。

 となると私、トカゲに命を救われたって事だよね? ……何か素直に喜べない。

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