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コレットの書~宝箱・3~

「まぁそれは置いといてだ。どの道、この階段を降りるしかないよな……」


 置いといてって何か負に落ちないんだけど

 ……でも言うとおりここであれこれ言っても仕方ないか。


「そうですね……あれ?」


 階段の下のほうが明るいけど、何でだろう?


「グレイさん、階段の下のほうが光っているみたいですけど……」


 ヒカリゴケの光ってわけでもなさそう。

 明らかに光具合が違うし。


「ん? ――本当だな。あの光は……ふむ、どうやら当りの様だぜ」


 当り……それって!


「やっぱり下に魔樹があるって事ですか!?」


「ああ、あれは魔晶石の光だ。――よし、俺が先に見てくる、もしかしたらドラゴニュートがいるかもしれんしな。お前らはゆっくりと中央くらいまで下りて俺の合図まで待ってろ」


「うっス」


「はい」


 すごい、グレイさんが壁に張り付いて、鎧の音もほとんど出さずにあっという間に下りちゃった。


「おー、さすが四つ星っスね」


「そうですね。じゃあ私達も言われた通り下りましょうか」


 お、グレイさんが覗き込んだ。

 なんだか見ているこっちまで息が詰まりそう――。


「……………………え? なっ!?」


 ――っ!? 何かグレイさんがすごくびっくりしている!!

 もしかしてドラゴニュートがいたのかも、だったら逃げる準備を。


「……っとつい声を出しちまった。――2人とも大丈夫だ、ドラゴニュートはいないから来ていいぞ。ただし俺より先にはでるなよ」


 ふぅ……よかった、いなかったのね。

 でも何であんな大声を出していたのかな、この先にいっ……た……い……って何これ!?


「う~わ~!! すごい!!」


 ホール全体が虹色に輝いてる!!


「うそだろ……これ全部、魔晶石っスか!?」


 ええ! これ全部!?


「たぶんな。後、あれを見ろ」


 あれ? ん~あの虹色に輝いている大きな物体か……な……ってモンスター!?

 しかも結構な数いるし! 何でグレイさんは平然としているのよ!


「――っ!!」


「大丈夫だってコレット、武器をしまえ」


「え、でも!……あれ?」


 …………動かない?


「……えと、あれはなんですか?」


「ミスリルゴーレムだ。恐らくここの守護をしていたんだろうが、どういう訳か今は停止しているみたいだ。さっきの俺の声にも反応しなかったしな」


 あ~だからグレイさんは平然としていたのね……パニくっていた自分が恥ずかしい。

 それにしても、ここの守護ねぇ……じゃあやっぱりここは大事な場所なのかな?


「……うーむ、見たところここには魔樹なんてないな。羅針盤は魔樹じゃなくて、この魔晶石の部屋を指していたのか……って、あっしまった! やっちまった!」


 羅針盤を見てびっくりしているけど、どうしたんだろ?


「どうしたんです……うわ、羅針盤の針がグルグル回っちゃってる!」


「ここは一面に魔力が覆われているからな、そのせいで羅針盤の反応がおかしくなったみたいだ。あーあ、2日連続で羅針盤が壊れるなんてついてねぇな」


 1日目はマークさんのせいだけどね。

 そしてその当の本人は……。


「すごいっス! これはいい土産話が出来たっスよ! ほえー本当に魔晶石で出来てるっス!」


 まったく気にしないし、めちゃくちゃ自由に動き回ってる……。

 グレイさんも言いたい事があるみたいだけど、言っても無駄なのはわかってるからもう諦めてるっぽい。


「えと、ここの探索ってするんですか?」


 もしかしたら、ケビンさんがいるかもしれないから私はしたいんだけど。


「ああ、そりゃな……まず――」


「ちょっと! 2人ともここに宝箱があるっスよ! この魔晶石の部屋、そしてミスリルゴーレムの守護者! これは絶対お宝が眠っているスよね!? 早く開けましょうっス!」


 あ、本当だ、柱の前に1個だけポツンと宝箱が置いてある。


「…………」


 ……いや! どう考えても怪しすぎでしょ、あれは!

 あの人、なんの躊躇なく触ってる!


「勝手に触るな! この馬鹿が!! ――フン!!」


「――ハグア!!」


 グレイさんが何か投げて、マークさんの頭に見事に命中……。

 ――ん? 何か腰が軽いような……あ、私のメイスがない!

 もしかして今投げたのって!?


「ああ! やっぱり私のメイスがマークさんの頭にある! もう、グレイさん! 私の物を勝手に投げないで下さいよ!」


 臭いがついたらどうするのよ!


「あー……すまんすまん。とっさに目が付いたのがそのメイスだったもんで……」


「……いや、それより、そんな物を、人に、投げないで、ほしいっ、ス……ガクッ」



「この治癒石がさっそく役に立ちましたね」


 すごい、ジゴロ所長さんが言った通り治りが早い。

 もうマークさんのタンコブもすぐに治っちゃった。


「こんなんで実証されても嬉しくないっス。で、先輩何で開けるのを止めたっスか?」


「お前が馬鹿だからだよ」


「なっ!?」


 1個だけ宝箱が置かれているのは露骨にあやしいもんね。


「あの、やっぱりこの部屋には罠があると思いますか?」


 と自分で言っといてなんだけど、あるに決まっているよね。

 とにかく、ここはすごい場所ってのは私にも分かるし。


「そりゃな……ただこの部屋にじゃない、あの宝箱にだ」


 へ? この部屋じゃない?


「え~と、それはどういう事ですか?」


「罠は魔晶石の魔力を使って動かすもんだ、だがこの部屋は魔晶石で出来ているからな。そんな魔力で囲まれた場所で罠なんて作っても誤作動してしまう可能性がある。だから、罠があるのは影響が受けにくい宝箱の中ってわけだ」


 なるほど。

 確かに壁、天井、床、全てだものね。


「それじゃ、まずはこの部屋の全体を調べるぞ」


「あれ? さっき罠は無いって……」


「可能性ってだけだ、だからやる事は罠の有無、本当に全てのミスリルゴーレムが止まっているのかどうか、あの宝箱以外に不自然なものないか、それからを確認しながらこの部屋のマッピングしていく。そして最後にあの宝箱だ」


「分かりました! 私、隅々まで調べます!」


 それはもう念入りに!


「おっおう、何かえらいやる気だな」


 だって、ケビンさんがいるかもしれないしね!

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