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コレットの書~宝箱・1~

 ◇◆アース歴200年 6月16日・朝◇◆


 さてさて、グレイさんはジゴロ所長さんの所にもう来てるかな?


「……」


 うん、この香水の香りは……。


「あっ! コレットさん、おはようっス」


 やっぱり、マークさんだ。


「……おはようございます」


 結局、来たんだ。


「げっ!? 何でお前が居るんだ!?」


 あ、グレイさんも来た。


「おはようっス、先輩! 聞いたらすぐこの場所がわかったっスよ」


 ジゴロ所長なら誰に聞いてもここだってわかるわよね……。


「おはようございます、グレイさん」


「おう。――ほら、コレット」


 おっとと、グレイさんが袋を投げてきたけど何だろ?


「これは……?」


 結構重いけど中身は……ええ!?

 何これ!?


「どっどうしたんですか、この大金は!?」


「魔晶花の金だ。ギルドが30万ゴールドで買い取ってくれた」


 30万も!?


「ええええと、なんで私に……?」


「ん? そりゃ魔晶花を手に入れたのはコレットじゃないか。だからお前が受け取れ」


 それは飛んできたのが偶然髪に引っかかっただけなんだけどな……それで全額って気が引ける……。


「えと、これは3人で分けましょう! 丁度1人10万ゴールドですし!」


 確かに30万ゴールドはかなり魅力的だけど、やっぱりこれはパーティーで分けるべきよね。


「マジっスか!? やった臨時収入っス!」


「そりゃこっちも嬉しいが、いいのか?」


「何も問題はありません!」


 この30万で、また失敗しそうで怖いし。


「んじゃ、ありがたく。……あれ? お前ら2人しかいないのか?」


「え? はい。私とマークさんしか来ていませんけど……」


「昨日ギルドに行った時に、その場にいた奴にも声をかけたんだが……ちっどうやら逃げられたみたいだな」


 きっと脅したんだろうな……そんな気がする。


「しょうがねぇ。不本意だが、お前をまた連れて行くしかないのか……」


「不本意って酷いっスよ!」


 グレイさんのあの顔、本当にマークさんを連れて行くのが嫌なのがよく分かる。


「後、昨日の事があるからコレットを連れて行きたくはないんだが……」


 ドラゴニュートに吹っ飛ばされたり、スケルトンに襲われたり、ダイアウルフに襲われたり。

 散々な目にあったけど……。


「大丈夫です! 確かに怖い気持ちはありますけど、もっと大事な事がありますから!」


 ケビンさんを見つける事!

 そして、神父様とシスターの笑顔を!


「そう言ってくれるとありがたい。それじゃジゴロの爺さんの家に入るか」


「このへんてこな建物? は、どこから入るっスか?」


 あ~初めての人は分かる分けないよね……。



「うっす、爺さん」


「おお! これはグレイ氏、ご無沙汰ですな! コレット氏も元気そうで何よりですな!」


「あ、はい。ジゴロ所長さんもお元気そうで……」


 まだ会ってから1日ちょいしかたってないんだけどな。


「……もう1人は誰ですかな?」


「あ、俺はマークっていうっス! よろしくっス!」


 マークさん、ジゴロ所長に近付いて強引に握手してる。


「……この人は2人の仲間ですかな?」


 ジゴロ所長さんの声のトーンが低くなったような気が。


「まぁそんな所だ……」


「(こいつは連れて来てほしくなかったな……悪臭が部屋にこもるじゃないか)」


 なんだろう、今ジゴロ所長さんから聞いてはいけない言葉が聞こえたような。


「あの、ジゴロ所長さん。何か仰いました?」


「? 何のことですかな? それで、私に何か用ですかな?」


 あれ……? 普通だ。

 気のせい、だったのかな?


「コレットが持ち込んだ、古代文字がどうなったのか気になってな」


「……私の知っているすべての古代文字と照らし合わせて色々やっているですな……でもまったく分からないですな、ただ……」


「ただ? なんですか?」


「例えばここ、現代文字に似ていると思いませんかな」


 あ、本当だ。

 【コ】って読めなくもない、他にも現代文字に似ているのはある……。


「……確かに似てはいますけど……文字の形がおかしいですよね」


 点が抜けていたり、一部飛び出したり、変に曲がっていたりと。


「そうなんですな! さすがコレット氏! これが実に興味深い事なんですな! そして! ここを――」


 げっまずい! ジゴロ所長さんのスイッチが入っちゃった!

 こうなると止まらないんだよな~どうしよう……。


「爺さん、話を聞きたいのは山々なんだが、ギルドに頼まれてこの後も遺跡に行かないといけないんだ。悪いが話はまた今度な。っそうだ! 魔晶石の件もどうなったかも聞きたかったんだった!」


「――であるから……むっ、それは仕方ないですな……魔晶石はまだ試作ですが出来ているですな。こっちですな」


 さすがグレイさん、無理やり話を止めちゃった。

 ところで魔晶石の件ってなんだろ?


「これですな、分かりやすいように色付けもしといたですな」


 転送石みたいな六角柱の水晶が赤、青、黄色といくつも並んでいる。

 見た感じ加工して色の付いた魔晶石にしか見えないけど。


「青は治療石ですな、傷に当てると自然治癒力がアップするですな。黄は閃光石ですな、魔力の光のおかげで普通の閃光弾より効果が強いですな。赤は爆裂石ですな、文字通り爆発するので取扱注意ですな。持ち運ぶ時はこの衝撃吸収が高いこの入れ物に入れとくですな」


「あの、これはどういう物なんですか?」


「魔晶石をもっと有効活用出来ないかって、ギルドと爺さんが共同して作っていた物だ。で、これが試作品ってわけだな」


 おお、すごいなギルドとジゴロ所長さん。


「そうなんですな! これは魔晶石が持つ魔力と現代科学との――」


 あっまたスイッチが入っちゃった。

 これがなければ尊敬できるのに……。


「あーありがとうよ! それじゃテストがてらもって行くぞ。2人とも3種類を1個ずつ持っていくんだ、赤と黄は慎重に扱えよ、特に赤は爆発するからな。――持ったか? よしそれじゃ行くぞ、さっさと行くぞ!」


「――であるからですな。それで――」


 さっき止められたせいか、今度は止まる気配がない。


「え? まだ喋っているのに勝手に行っちゃていいんっスか!?」


 いやだって……。


「――魔晶石が持つ魔力の計算にはすごく苦労をしたですな、しかし! ここは私の持つ――」


 あれだもの……。


「…………大丈夫です、さっさと行きましょう」


 じゃないと今日1日が話だけで潰れちゃうわ。

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