「おっと、そうじゃった。あの穴を埋めないといけなかったのじゃった」
ちょっ俺はこのままの格好かよ!
『まてまてまて! 箱から出してくれよ!』
「え~と……う~ん……やはり、あれを使うしかないようじゃの」
ええ、聞いちゃいねぇ……。
で、ナシャータの奴は俺を無視して1体のミスリルゴーレムの所まで歩いていったが何を……。
「――よいしょっと!」
すげぇ、簡単にミスリルゴーレムを持ち上げたよ。
それから、持ち上げたまま開けた穴へと向かって……って、え? まさかミスリルゴーレムで――。
「ふん!」
――ズンッ!
あいつ、本当にミスリルゴーレムで穴を埋めちゃったよ!!
「よし、これでいいのじゃ」
壁から生えてるミスリルゴーレム……めちゃくちゃ怪しい。
『いや、全然よくねぇよ!』
やっぱりミスリルゴーレムで穴を塞ぐなんて無理がありすぎるぞ。
あんなの
「じゃったら、いい方法はあったのか?」
『え? えーと……』
うん、何も思いつかない……。
「ほれ、ケビンも思いつかんじゃろうが」
『うっ』
そういわれても、急だったし。
「じゃったらあれでいいではないか。さてと、わしはちょっと出かけてくるのじゃ」
本当にいいのだろうか……。
ん? 出かける?
『出かけるって何処に? あ! 遺跡の外にはでるなよ!?』
ナシャータの存在でたぶんギルド内は騒ぎになっているだろう、そこに外をうろつくドラゴニュートなんて見られたら火に油、物凄い大騒ぎになるのが目に見える。
「外には出ないのじゃ、ちょっと思い付いた事があっての」
『そうか、ならよかっ……』
いやよくないじゃいか、この俺の状態が!
『待て! 行くなら先に俺を箱から出して――』
「じゃケビンの体が戻る頃には戻って来るのじゃ」
ああ、飛んでいった。
『ええ、また放置かよ』
仕方ない、動けない間にプレゼントの事を考えよう、ナシャータも役に立たなかったし。
さてどうするか……。
――ギギ! ガガ!
うるさいな、考えに集中できん。
何の音だ? ああ、穴に埋め込まれたミスリルゴーレムがもがいている音か。
……あんな風に動けない状態なら、花をとるのは簡単だったよな。
『…………あ、あるじゃないか。花とプレゼントにもってこいなのが、あそこにもう一つ!』
よし! 体が戻り次第、行動開始だ。
◇◆アース歴200年 6月15日・夜◇◆
『お、全身の感覚が戻ってきた。これなら立てるかな――よいしょっ、おっとと……』
まだちょっと不安定な部分もあるが……立てたし、まぁ大丈夫だろう。
それにしても再生がいつもよりに早かったな、
だが、俺がスケルトンになった原因は
となると、この体に関しては他に原因があるんだろうが……うーん……この遺跡の秘密を知ったが、結局は目を覚ました時と同じだな、考えても答えは出ない……となれば――。
『コレットに渡すプレゼントを手に入れる事を考えるのみ!』
となるとまずやる事は……いい加減この宝箱から出よう。
『よっと』
しかし、よくもまぁこんな宝箱に全身入っていたな……生身だったら中に入る何て到底不可能だぞ。
『ん? 宝箱の中に、か……そうだ! 面白い事を思いついたぞ!』
これならコレットにサプライズできるぞ、コレットの反応が楽しみだ。
ではさっそく、あの動けないミスリルゴーレムから花と、【コア】を取り出すだけだな。
※
『ンギギギギ! 駄目だ、まったく刃は入らない』
やっぱりミスリルって名前は伊達じゃないな、物凄く硬い。
「ただいまなのじゃ~お、どうやら動けるようになったみたいじゃ」
ん? ナシャータが帰ってきたか。
まったく何処行っていたのやら。
『ああ、おかえ……って誰だ!?』
ナシャータの横にボロマントを羽織った長身の人間の女がいる!
群青色の長髪、長すぎて地面につきそうだし、顔も前髪が長くて口元しか見えん。
いや姿なんて今はどうでもいい、問題なのは――。
『何で人間の女がナシャータと一緒にいるんだよ!?』
「ん、人間の女じゃと? 何処にいるのじゃ?」
ええ、自分より遥かに背の高い奴が見えないっておかしいだろ、逆ならまだしも……。
つか俺より高いんじゃないか、170cmは越えていそうだ。
『お前の横にいるだろうが! その目は節穴か!?」
「横? ああ、ポチの事じゃったのか」
え?
『……今……ナンテイッタ……?』
「じゃから、こいつはポチじゃ」
はあ!?
『そいつがポチだって!?』
そんな馬鹿な、どう見ても人間……いやよく見たら頭には耳が生えていて、口元は鋭い歯が見えていて、ボロマントの後ろから尻尾がフリフリしているのが見える……全然人間じゃなかった。
――というかポチってメスだったのかよ! そっちの方がビックリだわ!
「そうじゃ、魔力が蓄積されているかもという話があったじゃろ? もしやと思ってポチの体内のを調べてみたら、ばっちり蓄積されておったのじゃ」
『その蓄積した魔力とその姿と何の関係が……』
「その蓄積した魔力を使ってワーウルフに体を変化させたのじゃよ。あの部屋からも出られるし、ポチも自由に動けるのじゃ」
すげぇ、ナシャータってそんな事が出来たのか……。
「………………」
ん? 何だ? ポチが俺の方をジーッと見ているが。
「……ごしゅじんさま、あのほねたべていい?」
『ひぃ!』
姿は変わっても本能は変わってねぇ!
「あれは食べては駄目じゃ!」
「く~ん……」
あ、シュンとしてる。
しかし、2人が並ぶとあれだな。
『ナシャータが娘で、ポチが母親にしか見えん……』
「ん? 今何か言ったか? よく聞こえなかったのじゃが」
『いえ! 何も!!』
だから、笑ってない目をした笑顔が怖いんだって!