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ケビンの書~びっくり箱・3~

 「何をって……いや、さすがにもういい加減諦めたらどうじゃ? そもそも、次もあの小娘がまた来るかもわからんのじゃぞ?」


 はあ!?

 何を言っているんだこいつ。


『諦めろだと!? そんな事出来るか!! コレットは俺の前に降り立った天使なんだ! 必ず振り向かせて見せる! それにナシャータがいるのがわかっているのにパーティーを組んでまで遺跡に来たんだ、また来る!! 絶対に!!』


 そうだ、絶対にコレットは俺に会いに来る。


『と言うかだ! あの時にあの花を渡せていれば、今頃コレットは俺の隣にいたかもしれない! ナシャータとポチのせいでこうなったんだ! どうしてくれる!?』


「いや、確かにポチの存在を忘れてはいたが……それだけが理由じゃと思えんのじゃが……。う~む、ケビンのご都合妄想が酷すぎるのじゃ、それに何か凶暴になっておるし……こりゃもしかして【母】マザーの特有の魔力に当てられ過ぎて、スケルトンとしての本能が出てきてしまっておるかもしれんのじゃ」


 は? 何を言っているんだこいつは。


「――仕方がないのじゃ、一度ここから離すしかなさそうじゃな。じゃがこの状態じゃと素直に聞きそうになさそうじゃし……やりたくはなかったのじゃが仕方ないのじゃ……すまぬケビン、エアーショット!!」


『え? うぎゃあああああ!!』


 ちょっ体をバラバラにされてしまった!


『おいこら! いきなり何て事をするんだ!』


 これじゃまったく動けない。


「さて、まずは頭から運ぶとするのじゃ。――よいしょっと」


 ナシャータが俺の頭を抱きかかえて飛び上がった。

 何を考えているんだ、このドラゴニュートは。


『おい! どうするつもりなんだ! 何処に運ぶきなんだこら!!』


 くそっ頭だけじゃわめけるだけで、何も抵抗ができん。


「あ~……本当にうるさいスケルトンじゃの。頭だけじゃし、さっさと昇るとするのじゃ」


 うおっ急に昇る速度が速くなった!


「よし、到着なのじゃ」


 ……で、あっという間に魔晶石の間に着いた。

 本気を出して飛ぶとこんなに速かったのか、さすがドラゴニュート。


「ん~ミスリルゴーレムに踏み潰されない場所は……あの辺りが良さそうじゃな」


 ナシャータは魔晶石の間の隅っこまで来たけど。


「とりあえず、ここに置いておけば大丈夫じゃろ」


 とりあえずって、俺の頭を床に置いてどうするつもりなんだ?


「さて、次は……」


 って俺を置いたまま、さっきの穴の方に向かっているし!


『おい! 一体どう言う事だ!? 何がしたいんだ!』


「はいはい、後で話すのじゃ。それじゃわしは、ケビンの残りの体の部分を取って来るから大人しく待っておるのじゃぞ」


 大人しくって頭だけじゃ何もできねぇし!

 てかナシャータが穴の中に入って降りようとしているが、え? まさかこのまま放置する気か!?


『頭だけ置いていくな! こらぁああああああ!!』


 あ、ナシャータが穴の下に降りて行った。

 まじで放置かよ…。


『……嘘だろ』


 俺はどうしたらいいんだよ。


『はぁ……ん? 柱の裏に何かあるぞ……あれは、宝箱か?』


 あんな所にあるなんて気が付かなかった。

 そういや、ここでは頭を投げる事に集中していたし、この位置辺りからでないと見えない角度にあるからしょうがないか。


『………………………………うがあああああ!』


 くそ! 冒険者として空いていない宝箱の中身がすごく気になる!

 だがこれでは中を見たいのに見れないいいい!!


 ――ズンッ!


『うおっ!?』


 こえぇ……目の前をミスリルゴーレムが通って行った。

 本当にここは安全なのだろうか、魔晶石の間から出ている魔力のせいで頭が外れていても意識は残り続けてしまう……逃げられないのが分かっているからマジで怖い。


『魔力か……』


 そういえばあの四つ星のおっさんは羅針盤を持っていたな、恐らく魔力感知型でナシャータの場所を把握する為に持ってきていたんだろうな。

 たぶんコレットが居たのもギルドにナシャータの事を報告して、あのおっさんを雇いって調査。

そして案内人としてコレットとパーティーを組んで来たんだろう、あの一つ星の臭い男は数合わせといった所かな。


 あ~だとすると……羅針盤でナシャータはともかく【母】マザー、魔樹の場所を把握されてしまったかもしれんぞ。いくらここが隠されていても、羅針盤の針が刺していればいつかは【母】マザーが見つかる……さすがにそれは避けないと駄目だよな。

 だとすると、今度は魔樹の調査という事でまた来る可能性があるからその時に記憶を消すか?

 いや、それは無駄か……コレットがギルドにナシャータの事を報告している時点で、大規模にな事になっているはずだし……。


『……うーん……あ、待てよ。魔晶石の間は【母】マザーの真上にあるよな』


 最初は【母】マザーの魔力を針が指しているが、この魔晶石の間を見たら“ここ”を指していたと勘違いするだろうし、天井、壁、床も魔晶石だからそのせいで羅針盤が360度くるくると回って使い物にならない。

 しかも、守護させているミスリルゴーレムがいかにも“この場所”に財宝がありそうな感じだから、あの宝箱が見つかればそっちに目がいき【母】マザーの存在も隠せる。


『そう考えると魔晶石の間はそれだけに造られたって事か? すげぇな』


 ただ1つ気になる事が……羅針盤って200年以上前に存在してたっけ? その辺はわからんが、もし存在してなかった場合は偶然なのか予知していたのか……どっちにしろ、あのジゴロの爺さんの先祖だけはある……。


『……魔晶石の間の存在……ハッ! 閃いた!!』


 この魔晶石の間を利用してコレットがナシャータを怖がらずに遺跡に来られるようになる方法を!


『よし、ナシャータが戻り次第、この事を話すか』


 ただ……いい方法は思いついたが、コレットへのプレゼントを何にするかってのが残っているのが大問題だがな……。

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