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コレットの書~仲間・6~

「え? 私は聞こえなかったですけど……」


 ……………………。


 うん、今も静かで悲鳴所か何も聞こえない。マークさんたら幻聴でも聞いたのかな?

 驚かさないでほしいよ、まった――。


「……ふむ、俺にも聞こえなかったが魔力感知の羅針盤は反応しているな」


 ――くうっ!?


 羅針盤が反応してるって事は、あの針の先にドラゴニュートが居るかもって事!?

 じゃあその悲鳴も、もしかして先に遺跡に入ってた人がドラゴニュートに襲われたって可能性も……。

 ……想像しただけで寒気が……というか遺跡の中の温度が下がってる様な気もするのは気のせいかな。


「――こっちだ、気づかれない様に静かに、ゆっくりと進むんだ」


 やっぱり行くんですね……そりゃそうですよね……。

 というか静かにって言うけどグレイさんの声が一番大きいから気付かれるような……でもそれを言ったら怒られそうだから黙ってよ。


「うっス」


 うう、ドラゴニュートが居るかもって分かっているのに行くのは怖いなぁ……でも、この状況じゃもう2人について行くしかないよね……。


「はい……」


 どうか、どうかドラゴニュートに鉢合わせしませんように!!

 出来ればグレイさんの声で逃げていますように――っとグレイさんがT字路の手前で止まった。


「…………」


 人差し指で右の通路を指してる、という事は右に曲がった先に居るのかしら……って遺跡の入り口から近っ! そんなに近くの場所に潜んでいたなんてゾッとする。


「…………」


 通路を指してた指で自分を指して、そして私とマークさんを指してから手を開いてストップの合図……。

 つまりグレイさん1人で先を見に行って、その間私たちはここで待機って事ね。

 グレイさん、気を付けてください。


「…………っ」


 じわじわと進んでるのを見ているとこっちまで緊張感が伝わって来るわ。

 うわ、いつの間にか手汗がすごい事になっちゃってる。


「…………ごくっ」


 グレイさんが覗き込んだ。

 …………。


「なんだこれ?」


 何そのは反応……。

 危険は無かったみただけど、グレイさんが物凄く不思議そうな顔してる。

 何があるんだろ? 気になるから見に行ってみよう。


「どうし……キャッ! スケルトン!?」


 何でここにスケルトンが居るのよ!! やっぱり聖水効いてないんじゃないの!?

 それよりも戦闘――。


「……が凍ってるっスね」


 ――体勢を……え? あっ本当だ、カチンコチンになってる。そうか、寒く感じたのは気のせいじゃなくてこの凍ったスケルトンのせいだったんだ。

 でも、何で凍ったスケルトンがこんな所に?

 それにしてもマークさんがつんつんとスケルトンをつついてるけどよく触れるわね……。


「2人も触ってみたらどうっスか? こんなの今までにない事っスよ」


 ええ!? 何言い出すのよ!!

 私は無理だわ、スケルトンに触るなんて――。


「どうやら本当に凍ってるようだな。どういう訳だ、これは?」


 何でグレイさんは躊躇なしで触れるかな。


「コレットも触ってみたらどうだ?」


 いやいやいや、私に振らないでほしい。

 それは断固として拒否です、拒否。


「あ、いえ……私はいいです」


『…………』


 なんだろう、何となくこのスケルトンが「俺に触ってくれ!」って言ってるような気がするんだけど。


「ふむ。不思議な現象だが、今はドラゴニュートの方が先決だ。先に進むぞ」


 え? このスケルトンをほっとくの?


「うっス」


「あ、はい」


 グレイさんが歩き出したけど、アレをほっといてもいいのかな?


「あのグレイさん、凍ったスケルトンはほっといてよかったんですか?」


「ん? まあ大丈夫だろう。それにあそこで長居をしたくなかったんだ」


「え? そうだったんですか?」


 なんでだろう、ドラゴニュート関係だったかもしれないのに。


「あのスケルトンの場所に羅針盤の反応があったんだが、俺らがスケルトンを見つけた時にはもう別方向に羅針盤の針が動いていたんだ」


 針が別の方向にって、それじゃ。


「もしかして、ドラゴニュートがスケルトンを凍らして逃げたって事ですか? 私の時は襲ってきましたよ?」


 男が2人いたから? いやそれで逃げるわけないと思うんだけど。


「その辺はドラゴニュートにしかわからんな。あのスケルトンが凍ってたのも俺らの気を逸らす為なのか、はたまた別の狙いがあったのか。どっちにしろ移動しているなら、あのスケルトンは無視して目的を優先にしたんだ。ほれ針の方向も……ってなんじゃこれ!?」


 きゃっ、話してる時に急に大声を出さないでほしいな。


「もう急に大声をあげてどうしたんです……かっ!?」


 え……? 何これ?


「ん? 2人とも大声をどうしたんっスか? 羅針盤に何か……ええ!?」


 羅針盤の針が右斜め下に向いたり、私達の後ろに向いたりと交互に物凄い速さで動いてる。

 どうしてこんな事に!?


「もっもしかして、壊れちゃったんですか!?」


 こんな動き尋常じゃないよ。


「それはないとは思うが……もしかして強い魔力が二つあるって事か? いや、この遺跡でそんな事は……」


 グレイさんも困惑してる、一体どう言う事なのかしら。


「ふむ、なら俺に任せてくださいっス!」


 あ、グレイさんから羅針盤を無理やりひったくっちゃった。


「あ、おいこら! 何をするんだ!」


「――壊れたのなら大体こうすれば治るっスよ!!」


 マークさんが羅針盤を思いっきり振りはじめたけど、このパターンって……嫌な予感しかしない。


「「「あ……」」」


 マークさんの手から羅針盤が飛び出して、綺麗に弧を描いて地面へ……。


 ――パリンッ!


「「「あああああああ!!」」」


 やっぱりこの人、落として割っちゃったよ!!

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