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コレットの書~仲間・5~

 さて、まずは遺跡に入る前に入り口から中にモンスターがいないかを確認をしないと。


「……むむむ」


 見える範囲でモンスターの姿はなし……。

 いや、ドラゴニュートが居たんだから念には念を入れてもう一度。


「……コレットさん、遺跡の入り口前で何回も中を覗いたりして何をやってるんっスかね?」


「……たぶん入り口付近にモンスターが居ないかの確認じゃないか? コレットとは初めてパーティーを組んだが。いつもあんな事をやってから入ってたのか……んな面倒な事をわざわざしなくてもいいのに、まったく時間の無駄な事を……」


 よし、問題はなさそ――。


「おい、コレット」


 ――ね!?


「――ギョワアアアアアアアアア!?」


「――うおっ!?」


 っ背後にモンスター!?


「…………って何だ、グレイさんか。もう、驚かせないで下さいよ」


 後ろから声が聞こえてびっくりしちゃった。

 まだ心臓がドキドキいってる。


「そりゃこっちの台詞だ! つかその構えたメイスを下げろ! あぶねぇだろうが!」


「え? あ……」


 本当だ、驚いてとっさにメイスを握っちゃってたみたい。


「アハハハ、すみません。てっきり中のモンスターが外にいたのかと……」


 そもそもグレイさんって大きいから余計そう思っちゃった。


「おいおい、勘弁してくれよ。警戒することは大事だが少しは冷静になれ、モンスターは結界で外には出れないんだぞ」


 あ……そうだった。


「はい、すみません……」


 さすがに過敏になりすぎちゃってたみたいだわ。

 反省……。



「それじゃ俺が先に遺跡に入る、問題なしと判断したら合図をするから、それで2人とも入って来るんだ」


 私が中を確認したのに、結局グレイさんの判断でこうなってしまった。

 信用ないのかしら私……しょうがないか、悲鳴あげてグレイさん相手にメイスを構えちゃったんだし。


「さてと、羅針盤は……下のほうを向いている。だとするとこの近くにドラゴニュートは居なさそうだ、問題はないな――よし」


 あ、グレイさんが手招きしてる、来いって合図だわ。


「おっ合図っスね、コレットさん行きましょうっス」


「そうですね」


 普段は自分の判断で入ってたから、呼ばれて遺跡の中に入るって何か変な感じね。

 ん? グレイさんが壁を見てるじっと見てるけど……あ、あの壁は。


「これがコレットの見つけた古代文字か?」


「……はい……そうです」


 古代文字が書かれた壁を見てたのね……。

 他に新しい書かれた文字はないみたいだから、前来た時と変わってないわね。


「ふーむ。なるほどな」


 あれ? グレイさんが壁の文字を調べだした。確かそういうのは分からないって言ってたよね?

 ……あ、そうか。ドラゴニュートが書いたかもしれないからこれも調べないと――。


「えっ!? 古代文字!? この壁の落書きみたいな奴っスか!? 俺始めて見たっスよ!! すげー!! これってなんて書かれてるんっスか!?」


 ……マークさんが非常にうるさい。


「お前は本当にうるせぇな! 少しは黙ってろ!」


「そんな事言われても、始めて見たっスからしょうがないじゃないっスか! これ触ってもいいっスか!? ねぇ! ねぇ!?」


 ……マークさんが非常にうざい。


「……はぁ……ああ、好きにしろ」


 えっ? いいの!?


「やったっス!!」


 あ~あ、マークさんったらあちこちベタベタと手で壁を触っちゃってる。


「あの、いいんですか? あんなに触っちゃって……」


「ん? 別にいいんじゃないか、俺は文字の痕跡を見たかっただけだし」


 本当にいいのだろうか。

 後にギルドに怒られなきゃいいけど。


「……それで分かったんだが、どうやらあの文字は刃物で削ったみたいなんだ」


 刃物?

 そりゃ壁に文字を刻むのだから刃物を使っても別におかしな事じゃないと思うけど、でもグレイさんの眉間にしわが寄ってるとこを見ると何か引っかかってるみたいね。


「あの、壁に文字を刻むんですから刃物を使うのは普通だと思うんですけど……」


「そうだな、がそれが逆に気になるんだ」


「はあ……」


 グレイさんの額のしわがさっきより濃くなっちゃった。

 逆に気になる? どういう事だろ。


「そもそもドラゴニュートは刃物なんか使う必要がないんだよ……自分の爪があるからな。俺の持ってる奴よりずっと斬れ味がいいぞ」


 切れ味がいい爪……あっそういう事か。


「つまり、自分の爪があるのにわざわざ刃物を使ったのが気になる……って事ですか?」


「ああ、あの文字を爪で書いたとすればもっと切り口が綺麗だ。だがあの文字はそうじゃなかった、刃物で削った感じだった」


 なるほど、そう言われると確かに。

 じゃあ、もしかしたらあの文字はドラゴニュート以外が書いた可能性もあるって事よね……。

 ――どうしてかスケルトンの姿が頭をよぎっちゃうのは何故だろう。


「まあ、文字と同様に気まぐれで刃物を使った可能性もあるがな……そういえばジゴロ爺さんはこれを見て何て言ってたんだ?」


「あ~始めて見た古代文字だそうです」


 あの時のジゴロ所長さんのテンションは一生忘れられないかも。


「そうか……この探索が終わった後に爺さんの所へ行ったほうがいいかもしれんな」


「えっ!?」


 私は行きたくないし、これ以上ジゴロ所長さんに関わりたくない!

 ここは断っておこう、そうしよう。


「あの~私は――」


「ん? 今叫び声みたいなの聞こえなかったっスか?」


 ちょっと、マークさん! 人の話に割り込んでこないで……って。

 ――へ? 悲鳴?

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