目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
コレットの書~仲間・4~

「はあ……え? それはどういう事なんだ? んー?」


 マークさんが額にしわを寄せて考えこんじゃってる。


「……ハッ! それってもしかして隠し財宝って奴っスか!?」


 まあ、事情を知らない人からしたらそうなっちゃうよね。

 たぶん私もマークさんと同じ立場なら同じ事考えちゃいそう。


「さてな、それより遺跡の中に入る準備をしろ」


「ちょっと、そんな! 教えてくださいっスよ!」


 グレイさんがマークさんを無視して遺跡の中にはいる準備し始めちゃった。


「むー……じゃあ、もういいっス! だったらコレットさんに教えてもらうっスよ! コレットさん、どうなんっスか!?」


「えっ!?」


 グレイさんが話そうとしないから私に矛先が向いちゃったし。

 ん~だからといって黙ってるのも悪いし、かといってケビンさんを探してるって言っても納得しそうにもないし……めんどくさいからここはお茶を濁そう。


「えと……私達にとっては財宝より嬉しい【者】、なんです」


 まぁマークさんにとっては財宝でもなんでもないけどね。


「は? ますますわからないっ――」


「おい、いつまで喋ってるんだ。ほれ、2人ともさっさと準備しろ」


 おっと、いけないいけない。


「あ、はい。わかりました」


「ええ!? ――もう、後できちんと話して下さいっスよね!」


 聞かれる前に逃げよっと。

 さて、私も準備しないとね。


「え~と、聖水っと……あったあった」


 これを体にかけて……って、あれ? そういえば前に聖水を使って遺跡に入ったのに普通にスケルトンが襲ってきたよね……もしかして聖水って効果ないんじゃ?


「ん? どうしたコレット、聖水を睨んだりして」


「あ~えと、実は――」



「なるほど、それは妙な話だな。ドラゴニュートに対しては上級モンスターだから効かんのは分かるが、2回もスケルトンに襲われるなんて……」


 何となく言いづらくてその2回とも聖水つけてって話しちゃったけど、ドラゴニュートに会った時は新装備で舞い上がっちゃってて聖水の事をすっかり忘れてたのよね……。


「俺も聖水が効かなかったって話は聞いた事なんてないっス」


 襲われたのがここにいるんですが。


「うーん……気にはなるが、その聖水は大丈夫だろう。何せ今朝、俺が直接教会に行って目利きした奴を買ったし、何より採れたての新鮮だ!」


 聖水に採れたての新鮮とかあるのだろうか、食べ物ならまだしも……。


「そう、ですか……」


 何か納得いかないけど、グレイさんが言うならしっかりと体にかけてっと。


「ふふーんっと――パッパッ」


 マークさんが鼻歌交じりで聖水つけてるけど、どう見ても香水をつけるみたいな仕草だわ。本人は自覚なさそうだし、あれはもうクセになっちゃってるのね。

 香水のせいで聖水の効果が薄くなってそうな気がするのは私だけだろうか。


「2人とも遺跡に入る準備は出来たか?」


「うっス」


「はい――ん?」


 グレイさんの手に持ってるのは何だろう?

 手のひらに収まるくらいのガラスで出来た球体に水が入ってて、その真ん中に針みたいなのがある。

 見た感じは羅針盤に見えるけど、北を指す印がないっておかしいよね。


「グレイさん、それは何ですか?」


 わからないのなら聞く、それが大事よね。


「ん? ああ、これな。魔力感知の羅針盤だ」


「魔力感知の羅針盤?」


 名前を聞く限り、魔力に反応してそっちに針が向く……何て、さすがにそんなシンプルな物じゃないよね。


「一定以上の魔力を感知すればその方向に針が向くんだ」


 そんなシンプルな物だった。


「本来は洞窟内で魔樹を探す為に使う道具なんだ」


 魔樹って、確か洞窟の奥に生える変な性質をもつ変な木……だったよね。

 神父さまが話していたけど、特に興味がなかったから流し聞きしてたわ。


「魔樹とその羅針盤と何の関係が?」


「その魔樹って地面から魔力を取り込むっス。そして辺りの地質を変えて、それが魔晶石になるっスよ」


 あ~なるほど、魔樹自体が持っている魔力にその羅針盤の針が反応するって事ね。

 というか魔晶石ってそうやって出来るんだ、初めて知った。


「その感じだと魔晶石について知らなかったな? 常識のはずなんだが……お前、そういった勉強は聞き流していたんだろ」


「うっ……」


 その通りだから何も言い返せない。


「まあ、今はそんな事は関係ないから話を続けるぞ」


 そりゃ今は関係ないけどさ~、そんな事ってなによ。


「この羅針盤はドラゴニュートみたいな高い魔力を持つモンスターにも反応する、それでドラゴニュートの位置を把握するんだ。幸い、この白竜の遺跡にはドラゴニュート以外大きな魔力が存在しないからな、これが役に立つってわけだ」


「なるほど、そういう使い方もあるんですね」


 だったらドラゴニュートに会う前にそれ教えてほしかったな……。

 ってそれは無理か、白竜の遺跡で最初にドラゴニュートに会ったのは私だし。


「物も使い方次第って奴だな。さっ勉強会もここまでだ、遺跡の中に入るぞ」


「うっス! 待ってましたっス!」


「はい!」


 パーティーで遺跡の探索、グレイさんの足を引っ張らない様にがんばるぞ!


「ファイト私!」

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?