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コレットの書~仲間・3~

「あの、聞いてるっスか? お名前は……」


「……」


 グレイさん、すごく嫌そうな顔してる。

 関わるなオーラがすごい。


「もしもーし、お名前は?」


 この人もある意味すごい。

 グレイさんのオーラをまったく感じとっていない。


「――ちっ……俺はグレイだ」


 あ、グレイさんが折れた。


「グレイ先輩っスね、そしてコレットさん、覚えたっス。――おっと、出身も言ってなかったっスね。俺の出身はラスブアっス」


 ラスブア……あれ? どこかで聞いたような。


「……なるほど、アースの影響で冒険者になりたいって奴の一人だったのか」


 ああ! そうか!


「【英雄五星】の一人、アース・カルデナス様の生まれた街ですね!」


「そうっス!」


 200年前に起こった、人と魔神ファルベインとの戦争。

 魔神を倒す為に各地から集まった実力者のパーティー、アース・カルデナス、ジョシュア・ティリス、レイン・ニコラス、オーウェン・サンティア、オリバー・ジョサム。

 そして魔神を倒した5人は【英雄五星】と呼ばれ、魔神と共に散ったアースはその栄誉を称え今のアース歴になった……。

 よくシスターが話してくれた英雄五星の伝説。

 ん? 五星?


「あ、冒険者の星ってもしかして」


「何だ知らなかったのか? そうだ、英雄五星にかけてるんだ。だから最高クラスは五つ星ってわけだ。そして、五星の一人オーウェンがこの冒険者ギルドを作ったんだ」


 へぇ~そこまではまったく知らなかった。


「それじゃ他の方はどうなったんですか? アース様は魔神の自爆から世界を守る為に、自分の持つ全ての魔力を使って結界を張って魔神と共に散ったというのは知ってますけど」


 アース様は英雄伝として語り継がれてるけど残りの4人……あ、オーウェン様はギルドを作ったのか。

 となると残り3人は名前だけしか語られてないのよね。


「それに関しちゃ謎だ、ジゴロの爺さんも調べたらしいが結局判らなくて諦めたそうだ」


 ジゴロ所長さんが諦めたって……よっぽどの謎なんだ。


「あの~自分から話をふっといてなんっスけど……」


 あ、マークさんの事すっかり忘れてた。

 つい夢中で語っちゃった。


「俺をパーティーに入れてくれる話は……」


「は? 却下ってさっき言っただろ!」


「ええ!? そんな事言わずにお願いします! お願いします! お願いします!」


 すごい勢いで頭を上げ下げしてる。


「何なら今日はお試しって事で報酬はいらないっスよ! どうっスか!?」


 お試しって……物を買うんじゃないのに。

 もう涙目になっちゃってるし……しょうがない。


「グレイさん、ここまで頭を下げていますし、いいじゃないですか? 調査だけですし」


「あー? いや、しかしだな……」


「お願いします! お願いします! お願いします!」


 今度は床に頭を擦り付け始めた……ん? 今度は何か焦げ臭い匂いがするような。

 え? マークさんが擦り付ける所から煙が出て来たし!!


「このままじゃ火事になっちゃう! 水! 水はどこ!?」


 どうしてそうなるのよ!?


 ※


 すごい、額で擦り付けてた床の部分が完全に焦げて真っ黒……。

 どれだけ擦り付けたのよ、この人は。


「……申し訳ないっス」


 水をかけたら、その水に香水が混じったのか臭いが更に物凄い事になっちゃった。

 そのせいか、受付譲さんのこっちを見てる目が怖い……私のせいじゃないのに。


「……はぁ、わかった。連れてってやるよ、しょうがねぇな」


「――えっ!? 本当っスか!? やった!!」


 ちょっと、濡れた体を動かして嬉しさを表現しないで。

 臭いの滴がこっちに飛んでくる!


「今日限りで報酬はなしだからな……。後はコレット、これを渡しておく」


「あ、はい」


 渡されたのは何か入れてある袋ね。

 なんだろ?


「これ開けてみていいですか?」


「ああ、構わんぞ」


 え~と、これって……転送石? 後は聖水だ。他にも見た事のない物も入ってる。


「これって……道具袋ですか?」


「そう俺選別、冒険者必要道具袋だ。薬とかも入っているから携帯しとくんだ」


 おお、グレイさん選別って事はこれを覚えておけば今後に役に立つはず。

 よし! 入ってる物を確認して覚えよう。


「あのーちなみに俺のは……」


「――お前のは俺の予備を渡してやるよ」


「まじっスか! どうもっス!」


 何だかんだ言っても優しいな、グレイさんは……。


「だが、使ったらその分は自前で返せよ」


「え? ちょっと! 扱いがコレットさんとかなり違うっスよ!」


「当たり前だ! 連れて行ってもらえるだけありがたいと思え!」


 グレイさんってば優しいのか優しくないなのか、よくわかんないや。



 ◇◆アース歴200年 6月15日・昼◇◆


「よし、白竜の遺跡に到着だな」


 そういえば白竜の遺跡って今までは一人で来てたけど、パーティーで来るのは初めてね。


「それじゃ今からする事を説明するぞ」


「うっス」


「あ、はい」


 っと今日はグレイさんの手伝いなんだから説明はきちんと聞かないとね。


「まずはコレットがドラゴニュートと遭遇した場所に向かう。その場所に着いたら、ドラゴニュートが居ないかどうかを確認。居た場合はすぐにその場所から離れて様子見をする」


 ふむふむ……。


「居なかった場合は、そこがドラゴニュートの巣になっているかどうかを調査する」


 え? どうやってそこが巣かどうか判断するんだろ。


「あの、巣かどうかどうやって判断するんですか?」


「ん? フンや寝床のような物とか……まぁそこは俺が判断する。それでお前達は俺が調べてる間にドラゴニュートが戻ってこないかどうかを見張ってほしいんだ」


 あ~だから3人以上で行きたかったのか。

 1人と2人とじゃ見張れる範囲が全然違うものね。


「んで、調査が済んだら帰りは遺跡を捜索しながら帰る」


 ――っ。


「探索? もうここって探索されまくった後で何もないっスよね? 何でまた……」


「あるんだよ。俺とコレットにとってはな」


「グレイさん……はい、そうですね」


 ケビンさんの捜索の事も考えてくれてた。

 神父様、シスター、もしかしたら今日にでもケビンさんを見つけられるかもしれません!

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