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コレットの書~仲間・2~

「そうか、それは良かった。たった1日前の事だから怖くて拒否するかと思っていたが……助かるぜ」


 本当は拒否したいかったですよ! 怖いですよ! ドラゴニュートなんて見に行きたくはないですよ!

 幼い女の子の姿だったのに、あんなに恐怖を感じたんだから!


「そうなると、出来ればもう一人はパーティーにほしいんだが……俺の知り合いはみんな出払っちまってるし、コレットの知り合いは――」


「残念ながら居ません」


「だよな……」


 受付譲さんの時と同じで、どうして私がボッチみたいになっちゃうのかな。

 この街に来たのは最近だからしょうがないじゃない、それにちゃんと知り合いはいるもん! そう、私の村の人は顔見知りよ! ……全員で50人くらいしかいないけど。


「しようがねぇか……ちょっと時間がかかるが、掲示板で募集の張り紙を出すか」


「そうです……ん? ――スンスン……うっ何? 匂いは……」


 これって香水……だよね? にしてもかなりきつい匂い、悪臭になっちゃってる。

 何処からこんな匂いが――。


「――その話、俺も乗っていいっスか!?」


「きゃっ!?」


「おわっ! なんだお前は!」


 誰この男の人は!? いきなり後ろから顔を乗り出してきたからすごくびっくりした!

 年は私と同じくらいかな、赤毛に逆毛でなんかチャラそう……って見た目よりも――。


「「――くさっ!」」


 悪臭はこの人からする!! 元凶はこの人だったんだ。

 こんなに近く寄られると、さすがに鼻が曲がりそう。


「おい! その臭いはなんだ!?」


「何って、香水っスよ? いい匂いでしょ」


 ええ……悪臭になっている事を自覚してないよ、この人。


「んな事はわかってるわ! どんな香水をつけているんだって事だ!」


「これは何処にでも売ってない、俺オリジナルの香水っスよ」


 だから匂いがめちゃくちゃなのか、納得。


「何でそんな物つけてるんだよ……」


「やだなーおしゃれっスよ、おしゃれ。あ、先輩も加齢臭が気になるようでしたらどうっスか? 俺のを貸すっスよ」


 おしゃれって……。

 度が過ぎてるってまさにこの事ね。


「そんな事は気にしてねぇし! つか、おしゃれとしてもそれはねぇよ!! よく嗅げ!!」


「んー? いい匂いっスけどね。どうしてそこまで怒鳴るっスか?」


 自分で匂いを嗅いでも何とも思ってない。

 この人の鼻は元から曲がっているんだ、そうに違いない。


「――このっ!! こいつ――!!」


 あわわ、グレイさんが顔を真っ赤にして湯気まで出ちゃってる!

 このままじゃこの人を殴り飛ばしかねないよ、何とか落ち着いてもらわないと。


「グレイさん落ち着いて下さい! ここは深呼吸です! 深呼吸!」


「――?」


 私達のやり取りを不思議そうに見てる。

 それにこの人は、こんなグレイさんを見ても平然とした顔をしているし……神経も図太くてグニャグニャね、間違いなく。


「くっうう!! ――――っ!! すぅーはぁーすぅーはぁーすぅーはぁーすぅーはぁーはぁーすぅーはぁー」


 長っ!

 よっぽど頭に来ていたのね……。


「すぅはぁーすぅーはぁー……ふぅぅ……すまなかった……コレット……」


「い、いえ」


 よかった、何とか落ち着いたみたい。


「……改めて聞くが、お前は誰なんだ?」


「あ、自己紹介がまだっスね。俺の名前はマーク、マーク・バウティスタって言うっス。あと冒険者っス。――ほら」


 胸から冒険者のプレートを取り出した。

 星は私と同じ一つ星、って事は同じ新米さん?


「……一つ星みたいだが装備を見る限り、新米ってわけじゃないみたいだな」


 え? そうなの?

 あ~確かに、武器が短剣ってだけで私と同じような装備なのに新品ってわけじゃなくて使い込まれてる感じがする。


「そうっス。前は別の街で依頼を受けてたんっスけど、うまくいかなくて……それで一から出直しって事で最近この街に来たわけっス!」


 色んな人がいるもんだ。


「なるほど、流れ者か……冒険者としてどのくらいたつんだ?」


「5年っス」


「ごっ!?」


 5年もやってるのか~かなりの先輩ね………え? それで一つ星!?

 ギルドってどれだけ査定が厳しいのよ。

 となると四つ星のグレイさんってすごいんだ。


「5年もやってれば最低でも二つ星はいくぞ!? お前どれだけやる気がなかったんだ! 駄目だ駄目だ、そんな一つ星を連れて行けるか」


 一つ星って所なら私もなんですけどね……。


「だから、気持ちを変える為に知り合いの居ないこの街に来たわけっス! でも今日はもう依頼はないって言われたっス」


 アンデッドの討伐に集中してるしね。


「そんな時に人手が足りないって話が聞こえたっス、これはチャンスだと思い声をかけたわけっスよ! コレットさんに……えとあれ、プレートの名前が見えないっスけど……」


 え? あ、本当だ。

 グレイさんのプレートって星の部分は無事だけど名前の部分が摩れててよくわからない。


「あの、プレートってすごく頑丈のはずですよね。どうしてそんな事に?」


「ああ、タワシの様な毛の生えた魔獣を討伐した時にプレートが擦れたみたいでな、こうなった。いや~あいつ固くて剣が通らなくて苦労したぜ」


 プレートより硬い魔獣の毛って一体……。


「でも何で新しいのにしないっスか? それじゃ不便じゃないスか」


 そういえば、プレートって身分証明にもなってたよね。

 名前が見えないんだったら意味が……。


「いんや、別に。俺は基本どこでも顔パスだから別に再発行しなくても問題ないな」


 ええ……なにそれ。


「そんな適当でいいんですか!?」


 いくらなんでも適当すぎると思うんだけど。


「ギルドが何も言ってこねぇし、いいんじゃないか?」


 何も言わないって、それでいいのかギルド!?


「いやでも――」


「まぁまぁ、そんな事はいいじゃないっスか」


 そんな事って何よ!


「それで、四つ星級の先輩のお名前は?」


 ……話を続けられちゃった

 何か納得いかないんですけど!!

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