『という訳だが……』
さぁ、思った事は全て話した。果たして俺はどうなるのか……。
無言で俺の話を聞いていたナシャータが非常に怖い。
「……むふ、わしの家の事に疑問をもったか。なるほどの」
家というか遺跡についてなんだが。
まぁいいか、ナシャータにとっては家だしな。
「ん~む……よし、ケビンなら教えても良いじゃろ」
『マジか!?』
うおー! 一気にこの遺跡の謎がわかるぞ!
ただ、この姿になる前に知りたかったな。
「ジー……」
『……ん?』
あっそういえば、ポチの存在をすっかり忘れてた。
「ジー……」
出合った時からやっぱりポチは俺の事を見ているよな。
『なぁ遺跡とは関係ないが、ポチの奴さっきから俺を見てる気がするんだが』
「む? あ~そういえば、スケルトンの骨も与えて……あっ!」
なるほど……あの時のポチの行動に全て納得できた。
肉の味を知らないからコレットには目もくれず骨の俺に反応してたのか、まぁ幸いそのおかげでコレットは襲われずに無傷だったが……何か納得いかないな。
それにしても不憫な奴だ、200年もこんな所に閉じ込められてた上にエサはあの木の実のみ。
まぁ普通の木の実なら食えなかっただろうし長生きも出来なかっただろうが……この場合は幸か不幸かどっちなんだろうな。
そうなると俺はポチにとって最高の……エサ……に……。
「ヘッヘッヘッ」
まずい、あの目は完全に俺をロックして主人であるナシャータの食ってよしを待ちしてる!
『おい、ナシャータ! ポチに俺を食わないように言い聞かせてくれ!』
じゃないと食われる!
食われたらさすがに再生出来る気がしない。
「そんな事せずとも――ほれ、扉を開けたから、さっさとここから出るのじゃ。この遺跡の秘密を見せてやるのじゃ」
ナシャータがこの部屋の扉を開けてるが。
どう考えても――。
『ポチはどうするんだよ』
あの扉じゃでかいポチが出られないよな、となると。
「ん? どうするも何もここに置いておくつもりじゃが? ポチをここに入れた時はこの扉の大きさでよかったのじゃが……今はどう考えても外に出すのは無理じゃからの」
ああ、やっぱりそうなるよな。
「ワフッ!?」
ポチも連れて行って貰えると思っていたのか、今の言葉にショックを受けてる。
「何してるのじゃ、早くするのじゃ」
『いや、しかしだな』
このまま置いていくのも可哀想なんだよな。
かと言って出す方法も思いつかんが。
「――ッワン!! ワン!!」
げっポチがこっちに走ってきた!
「ほれ、グズグズしておるからポチがこっちに来たではないか。しょうがない奴なのじゃ! ほれ早く出るのじゃ! ポチも大人しくするのじゃ!」
『ちょっ!? 蹴って外に出すな!』
「キャイン!! ――キャルルルルル!」
俺はナシャータに蹴られ部屋の外に、ポチはデコピン一発で部屋の奥に転がっていった。
あの大きさの魔獣をデコピン一発で弾き飛ばすとは、さすがはドラゴニュートと言うべきか……しかし――。
『おい、また動けなくなってしまったじゃないか!』
蹴られた瞬間に、また俺の体がバラバラになってしまった!
「あ、すまん。まさかその程度でバラバラになるとは思わなかったのじゃ。許すのじゃ」
その程度って、結構威力あったようにも思えたぞ?
あの100mほど飛んだ骨は何処の部分なんだろうか。
「――それじゃまたなのじゃポチ、今度はちょこちょこ顔を出すからの」
「ワン! ワン! ワ――」
――バタン
躊躇なく閉めちゃった。
《ワオオオオオオオオオン!》
ああ、中からすごく悲しい遠吠えが聞こえる。
そして、俺も再生できるまでしばらく動けなく……あれ?
『なぁ今もそうだが、能力アップして防御力が上がっているのに何で簡単にバラバラになるんだ? コレットにメイスで殴られた時もそうだったが』
ミスリルゴーレムに蹴っ飛ばされた時は頭だけ飛んでいって体の方は保ってたのに。
「ん? それは能力アップはあの部屋限定みたいなもんじゃからな。意識があるのはまだ魔力が残っておったからじゃろ、防御力は完全に戻っておるみたいじゃな」
限定強化とか意味ねええええ!!
「あ、そういえばあの花は小娘にちゃんと渡せたようじゃな。良かったのじゃ」
…………え? 花?
そういや渡そうとして、そして……。
『ポチのせいで渡せてねぇ!!』
「え? ケビンは持っていなかったし、部屋にも落ちていなかったから渡したとばかり……」
何だって!?
『じゃあ、あの花は何処にいったんだよ!?』
コレットにあげる為の花!!
「わしに聞かれても困るのじゃが……」
『本当に部屋の中には落ちていなかったんだな!?』
「あんな輝く花、見過ごせと言うのが無理じゃ」
あれだけ苦労して取ったプレゼントだったのに、それが消えるなんて――。
『そんな馬鹿なあああああああああ!!』
《ワオオオオオオオオオオオオオン!!》
「……やかましい1体と1匹じゃな」