~ナシャータ~
さて、ケビンの位置は大丈夫じゃな。
後はあの3人の前に行ってと――よっと。
「え? うそっ? 何でここに……」
小娘は恐怖の顔に歪んでおるの。
「ちっ、今はドラゴニュートとの接触は避けたかったんだがな!」
親父は苦虫を噛んだ様な顔をしておるな。
「ほえーあれがドラゴニュートっスか。見た目は子供みたいっスね」
くっさい男は飄々とした顔か、臭いといい、本当にいけすかない奴じゃ。
まぁよい、用事があるのは小娘だけじゃからな。
「では小娘、お前だけ飛んで行ってもらうぞ」
狙いはケビンの所じゃ!
「「「『え?』」」」
「エアーショット!!」
「うそおおおおおおおおおおおお!?」
「コレット!?」
「コレットさん!?」
お~我ながら綺麗に飛ばせたのじゃ。
そのまままっすぐケビンの元へ飛んでいくのじゃぞ~。
『――ダハッ!!』
「――グエッ!!」
よし、計算通り小娘をケビンに届けられたのじゃ。
後はわしの魔力を送って――。
――ガコン。
扉を開いて――。
『――え? 壁が動いて……』
「――え? 今度は何なのおおおおお!?」
――バタン。
そして閉める。
うむ、我ながら完璧じゃな。
「コレット! ――くっドラゴニュート! 貴様一体何をした!?」
あ~あの親父が剣を抜いてこっちに向けてきたのじゃ、相手をするのは面倒じゃし。
あの扉はこいつらにどうこう出来るはずもないしここは――。
「悪いの、わしは無益な争いは好まぬし用事があるのは小娘だけなのじゃ。じゃあの!」
逃げる1択じゃ。
「なっ待て! ドラゴニュート!!」
誰が待つか。
さて、後はケビン次第じゃな。
中の様子が気になるがわしまで入るのは野暮ってもんじゃから……ってあれ? そういえばあの部屋に何かあったような気がするが……何じゃったかな?
ふ~む……思い出せないのなら大した問題ではないって事じゃな、さっさと身を隠して木の実を食べるのが一番じゃ。
~グレイ・ガードナー~
「悪いの、わしは無益な争いは好まぬし用事があるのは小娘だけなのじゃ。じゃあの!」
こいつ飛んで逃げる気だ!
「なっ待て! ドラゴニュート!!」
くそ! あっという間に奥に飛んでいってしまった。
あれじゃ追いつけない。
「いやーすごい速さで飛んでいったっスねー。あれがドラゴニュートなんスか、俺はじめて見たっスよ、感激!」
いやいや、感激しとる場合か。
つかこいつはこいつで喋るだけで剣すら抜いてないし、やる気あるのか?
「まぁいい。おい、町に戻る準備をするんだ」
壁の前にはスケルトンが待機していて、コレットと一緒に壁の中に入って行ってしまった。
恐らくあれがコレットの言ってたおかしなスケルトンだろうか?
だがコレットには緊急時用のアイテムを渡してある、今頃はそれを使って町に戻ってるはず。
「え? コレットさんをほっといていいっスか?」
まったく、何を言ってるんだこいつは。
「コレットにもお前にも緊急時用のアイテムを渡したがろうが、だから――」
「その一式が入ったコレットさんの袋がここに落ちてるっス、さっきの衝撃で落としたみたいっスね」
あの袋は間違いなくコレットの奴だ。
「…………マジかよ!!」
――大問題じゃねぇか!
まずいまずい、非常にまずい!
「っおい! 早くコレットを助けるぞ!」
……くそっ俺とした事が!
だが、まだ飛ばされたのが直線でよかったかもしれん。
もしテレポート系だったら見つからなかったぞ。
「えーと、確かこの辺りの壁が開いたっスよね。よいしょ! ふん! ……駄目っスね、押してもまったく動かない」
ここに隠し扉、この遺跡にはどれだけ隠し扉や部屋があるんだ。
そもそもそこまで必要か? ここを作った奴らは何がしたかったんだ。
っと今はそんな事を考えてる場合じゃねぇ。
「おい、そこをどけ」
「うっス……ってグレイ先輩、何鎧を脱いでるんっスか!? あ、俺はそんな趣味ないっスよ!?」
こんな非常時に何を言ってんだこいつ!?
「アホか! 俺もそんな趣味はねぇよ! 鎧が邪魔だから脱いだんだ」
鎧を脱いだだけで、そんな発想が出て来るなんてどんな頭をしてるんだこいつは!?
仕方がなかったとはいえ、こんな奴連れて来なければよかった。
「とにかく――フン!」
「おお、すごい筋肉」
こんな壁如き、俺のタックルでぶち破ってやる。
「すーっ……どりゃあああああああああああああ!!」
――ドスン!!
「……音だけで壁に変化はないっスね」
くそが! 今度こそ!
「どりゃあああああああああああああ!!」
――ドスン!!
「…………」
何だ、この壁。
硬すぎるだろ……。
「おい、お前も見てないで手伝え」
「ええ……まぁ、しょうがないっスね」
中のコレットが心配だ、早くこの壁を――。
《ガアアアアアアアアアアアアアアアア!》
は?
「……今の雄叫びは何だ?」
「何っスかねぇ……」
雄叫びはこの壁の向こうから聞こえた。
すごく嫌な予感がする、コレット無事でいてくれよ!
~ナシャータ~
《ガアアアアアアアアアアアアアアアア!》
「んぐ!? ゲホゲホッ! 何じゃ!?」
びっくりして種まで飲んでしまったのじゃ。
まったく、どの獣が吠えてるん……獣?
……あああああああああああ!!
「しまったのじゃ!! あの部屋には!」