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ケビンの書~接触・3~

『ぜぇーはぁーぜぇーはぁー』


 燃え尽きるかと思ったぞ……。

 ん? 燃え尽きる? ああ! そうだ、花はどうなった!? 

 寒さといい、熱さといいもう駄目に――なっていない……無傷だ。


『……無事で良かったが、あれだけ凄まじい魔法を食らったのに何で無傷なんだ?』


「ああ、その花は魔法耐性があるからなのじゃ」


 そうだったのか、通りで無傷なはずだ。

 ミスリルゴーレムの頭に生えていた事と関係があるのかな。

 まぁ無事ならそれでよし、ではさっき出来事を追及しますか。


『ナシャータ、何でさっきは逃げたんだ? お前なら人間が襲ってきても余裕だろ』


「あ~……わしが逃げた理由か。え~と、それは言わなきゃ駄目かの?」


 そりゃそうだ、ドラゴニュートが一目散に逃げる何て不思議すぎるからな。


『そりゃそうだろ、明らかにおかしかったからな』


「う~……」


 モンスターがもじもじするなよ……。


「……あのくっさい男のせいなのじゃ」


『はっ?』


 くっさい男?

 ああ、あの香水野郎の事か。


『……ええ!? ドラゴニュートがたかが香水をつけた男一人に逃げ出したのか!? 確かに良い香りを超えて悪臭になっていたが、たったそれだけで!?』


 俺の中でドラゴニュートというモンスターのランクが大幅に下がった。


「仕方あるまい、わしは鼻が利く分お前ら人間より臭く感じるのじゃぞ。それにじゃ、あの男はわしの大嫌いな匂いの花の香りまで体から発していたんじゃ。それが近づいてきたら逃げたくなるに決まってるじゃろ!」


 俺の中でドラゴニュートというモンスターのランクが更のに下がった。

 そんな下らない理由で俺は放置食らったのかよ、納得いかねー。

 にしてもドラゴニュートは匂いに弱いか、上級でも苦手なものってやっぱりあるんだな。


「――っ! そんな哀れな目でわしを見るな!! 仕方ないじゃろ生理的に受け付けないもはどうしようもないのじゃ!」


 今の俺には目がないのによく哀れみの目で見てるのが分かったな。


『まぁ理由はわかった。それじゃお喋りはここまでにしてコレット達の後を追うぞ。ほれナシャータ、あの香水男の匂いを辿って道案内してくれ』


「なっ!? わしは犬ではないのじゃぞ!!」


 鼻が利くから近いものだろ。



『おお、いたいた。さすがナシャータだな』


 いい鼻のおかげですぐに追いつけた。


「ぐぬぬぬぬ、覚えておれよ貴様……ん? ここは……」


 しかし、追いついたのはいいが……。


『くそ! あの男2人が邪魔でコレットに花を渡せないじゃないか!!』


 そもそも何だよ、あの2人!

 ずっとコレットの側を離れずに――。


「はぁ? 別に男が2人いようが普通に渡せばいいと思うのじゃが」


 フン、何を言うか。


『いいか、プレゼントを渡すといっても大人数がいる時と男と女の2人きりの時ではまったく違うんだ。そして、この花は男女2人きりの時に渡すものなんだよ!』


 そう、大事なのはシチュエーション。

 男が女に花束 (今は1本だが) を渡すのは2人きりの時こそ意味があるんだ!


「よくわからんのじゃが……とりあえず、あの小娘とケビンが2人きりになりたいのじゃな? じゃったらここには誂え向きの隠し部屋があるぞ」


 一体どんだけ隠し部屋があるんだよ、この遺跡は。

 まぁいい、誂え向きならそこを利用するまでだ。


『で? その部屋は何処なんだ?』


「ケビンの後ろ、その壁の向こう側じゃ」


 ここかよ!


「この部屋は頑丈で扉はわしの魔力に反応して開閉するんじゃ、つまりわしが鍵というわけじゃな。どうじゃ? 2人きりになるには誂え向きじゃろ」


 なるほど……それならあの男2人に邪魔されそうにはないが。


『それはいいが、どうやってコレットだけをこの部屋に導くんだ?』


 あのおっさん、さすが四つ星級だけあって常に周りに気を配りつつ3人が固まるように誘導してる。

 あれじゃコレットだけっていうのは難しいぞ。


「ふふん、そこはわしに任せるのじゃ」


 ナシャータが自信有り気に手を無い胸にたたいてるが、何故だろうか不安でしかない。


「まず、ケビンはその壁を背に立って待機なのじゃ」


 とはいっても他に思いつかないし、こいつの言う事を聞くか。


『――こうか?』


「そうじゃ、じゃあちょっと待つのじゃ」


 ナシャータが飛んでいった。

 ――っ!? おいおい、あいつ3人の目の前に降り立ったよ!


「え? うそっ? 何でここに……」


「ちっ、今はドラゴニュートとの接触は避けたかったんだがな!」


「ほえーあれがドラゴニュートっスか。見た目は子供みたいっスね」


 この位置じゃ3人の顔が見えないが声を聞く限りコレットは恐怖の顔、おっさんは苦虫を噛んだ様な顔、くさい奴は飄々とした顔と言った所か。

 ただナシャータのあの笑顔はなんだろうか。


「では小娘、お前だけ飛んで行ってもらうぞ」


「「「『え?』」」」


「エアーショット!!」


 あれは風魔法だ。


「うそおおおおおおおおおおおお!?」


 ちょっもの凄い勢いでコレットがこっちにぶっ飛んできた!!

 どんどんコレットが近くに、寄って、……ああ、見れば見るほどかわいい娘だな。

 って見惚れてたら駄目だ! このままではコレットが壁にぶつかってしまう、受け止めない――。


『――とおっ!?』

「――グエッ!!」


 受け止められたが、俺の体じゃクッションにすらなかなかった。

 その性でまともに壁にぶつかった大丈夫か? 今すごい声が聞こえたが……。


 ――ガコン。


『え? 壁が動いて――』

「いたた……って今度は何なのおおおおお!?」


 そうだった、ここは扉になるんだった!


  ――バタン。

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