目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
ケビンの書~花・2~

 そうと決まればさっそく行動をとらないとな。


『それでその花はどこに咲いているんだ!? 俺がこの遺跡を探索した時には花が咲いてる所なんかなかったぞ!』


「なんじゃ、お前はわしが寝ている間に家を荒らした奴だったのか」


 あ、しまった。

 これは失言だった、まずい機嫌を損ねて花の場所を教えてもらえないかも。


「本来ならその様な人間にわしの家の中を案内するのは嫌じゃが……ケビンは今はもう人間ではなくスケルトンじゃからな。だから別に教えてもいいのじゃ」


 体はスケルトンでも心は人間のつもりなんだがな。

 しかし何故こうもこのドラゴニュート……ナシャータに気に入られたのかわからん。

 でもよかった、場所を教えてくれるのならモンスターでもなんでも利用できるものは利用していこう。


「お~い、何ボーっと突っ立っておるのじゃ? こっちじゃよ」


 ナシャータが手招きして通路を歩き出してる。

 どうやらその場所に連れて行ってくるようだな。


『ああ。すまん、今行く』



 ナシャータの後を着いて来たが、ここは遺跡の中央の広いホールだな。

 真ん中にある1体の少女の石造が特徴の場所だな。

 でもここは特に何もなかったし、そうするとさらにこの奥に――。


「ここなのじゃ」


 ――花が咲いている場所が……えっ?


『……はっ? ここなのじゃってここは遺跡のホールだろ』


 遺跡の中央辺りなんだから太陽の光も届いていない、だから真っ暗だし(ヒカリゴケで多少は明るいが)それに石の床だから土もない。

 無論、花どころか雑草一本も生えていない、まぁコケは生えてるが。


「そうじゃが?」


『そうじゃっがて……おい、俺をおちょくってるのか? 何処に花何て咲いているんだよ!』


 気に入ったとか言いながら俺を騙したのか?

 くそ、やはり所詮モンスターはモンスターだったか!


「そう焦るな、まずわしのモデルにしたこの石造に……」


 ナシャータがホールの中央にある石造をいじりだした。

 あそこは誰が見ても怪しくて、俺も色々弄ってみたが頭が回るくらいで他には何も仕掛けがなかったんだがな。

 てかあの少女のモデルってナシャータだったのか……うん、納得。


「――まずは頭を持って……」


『回せるのは知ってるぞ?』


「普通に回すのではないのじゃ、こうやって勢いをつけのじゃ! ――おりゃ!!」


『っ!?』


 おいおい、勢いをつけてって物凄い勢いで石造の頭が回ってるぞ!

 今にも取れてそのまま飛んできそうな感じがするけど、いいのかあれで!?


 ――ゴゴゴゴ


 えっ、石造の下の土台部分がどんどん上に上がってきた!?


 ――ガコンッ


 止まった……あっ土台の部分に下に降りれる階段がある。

 こんな所に隠し階段があったのか……あの頭は結構重たくてあんな勢い良く回せなかったんだが、ナシャータだからこそ行ける場所なんだろうか。

 ああ、すごくマッピングしたいが書く物も見取り図もないのが悔やまれる!


「何をしておるのじゃ? さっさと下りるぞ、花はこの通路の奥に咲いてるのじゃ」



「ここじゃ」


『ここじゃって……』


 何だここ、上の様に広いホールになってるが壁が虹色に輝いてる。

 そして同じように虹色に輝いてる大きなゴーレムが数体あちこち動いてる。


『おい、この場所とあの動いてるのはなんだ?』


「ここは魔晶石の間、そしてあれはここを守護するミスリルゴーレムじゃ」


 魔晶石……主に転送石等に使われる魔力を含む石だが、それが装飾で使われた部屋なんて初めて見たな。

 そしてあれがミスリルゴーレム、資料で名前は知っていたがこっちも生で見るのは初めてだ。

 だがそんな事より……。


『こんなミスリルゴーレムが徘徊してるような所に綺麗な花なんて咲いてる訳が無いだろ!』


 仮に咲いてたとしても、あのゴーレムに踏み潰されてるだろ。


「何を言っておるのじゃ、咲いておるではないか。ほれミスリルゴーレムの頭をよく見るのじゃ」


『あ? 頭だと?』


 あ、本当だ、ミスリルゴーレムの頭にちょこんと1本の花が咲いてる。

 しかも本当に綺麗だ……花びらが虹色に光り輝いてる、この魔石と間とミスリルゴーレムの影響なのか?


「どれ、わしがちゃちゃっとあの花を――」


『いや、待て』


 危ない危ない、ナシャータがあの花を取りに行きそうだった。


「ん? どうしたんじゃ?」


『あの花は俺が取って来る』


 他力本願ではなく自分で手に入れた花をコレットに渡さないと意味が無いからな。


「いやいや、ケビンではミスリルゴーレムを倒す事なんて――」


 倒す? 誰も倒す何て言ってないだろ。


『フッ、問題ない。ここを使うのさ』


 知恵者の様に頭に指を刺し決めポーズ。

 そう、俺には剣以外にも知識という武器があ――。


「――? そのカラッポの頭に指を当てておるが、どう使うのじゃ?」


 ――るんだ……いや、確かに今はカラッポの頭になってるけど!!

 そう改めて言われると脳味噌がない馬鹿な奴みたいな感じで何か傷つく……実際には脳味噌もないけど。


『物理の頭の中身の事を指してるんじゃねぇよ! 知恵の事を指してるんだよ、知・恵!』


「ああ、そういえば普通のスケルトンとは違いケビンは人間の知力がそのまま残っておったな。してどうするつもりじゃ?」


『フッ、簡単だ。見る限りミスリルゴーレムの動きは鈍い、後から静かに近づきよじ登って花をとるのさ』


「……じゃったらわしが飛んで取ってきた方が明らかに早いのじゃが……」


 そうだけど、そうじゃないんだ!


『確かにそうだ、だけどな自分で手に入れた花をコレットに渡したいの! お分かり!?』


「……なんとも難儀なスケルトンじゃ」

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?