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コレットの書~金・5~

 ん~これは言葉で説明するより実際に見てもらった方がいいよね。


「はい、これを見てもらいたかったんです」


「どれどれ、拝見しますな。ふむ、これは白竜の遺跡の見取り図で……むむっ!! ここ! ここに書かれているものはなんですかな!? 見た事がない文字が書かれてるですな!!」


 お~さすが全てを研究してる人だ、見た瞬間に落書きじゃなく文字と判断したわ。


「あ、それをですね――」


「これは一体何なのですな、一部は現代文字にも見えますな、でも現代文字にしては形が異なるですな、だとすると古代文字ですかな!? 説明をお願いしますですな!」


「はい、説明を――」


「そもそも何故この白竜の遺跡の見取り図に書いてあるのですな!? これはグレイ氏が書いたものですかな!? それともコレット氏が書いたものですかな!?」


「あの、ですから今から説明を――」


「わかりましたですな! 白竜の遺跡の見取り図に書いてたという事は、この文字は白竜の遺跡に書かれていた物を写したという事ですな! でも今まで白竜の遺跡でこのようなものがあるとは聞いた事がないですな、早く説明をお願いしますですな!!」


 説明しようにも常に遮ってきてるじゃない!

 私にもしゃべらせてよ!


「ですから――」


「この見取り図を見るからに――」


「だぁあああああああああ! いい加減にしてくださいいいいいいいいいいいいい!」



「申し訳なかったですな、つい興奮をしてしまったですな……」


「いえ……」


 何なのよ、この人は……。

 もう簡単にに説明してすぐ帰ろう、そうしよう、そうしないといけない気がする。


「では、説明します。先ほどジゴロ所長さんがおっしゃいました通りその文字らしきものは昨日私が遺跡に入った時に壁に刻まれていたものです。私はここ数日中毎日遺跡に入っていましたがそれまではありませんで――」


「となると――」


 っ! させるか!


「――モガ!?」


 ふう、口を塞ぐのが間に合ったわ。

 危ない危ない、また話が切られるとこだった。


「……喋るのは私の説明の後にしてください!」


 ――コクコク


 でも念のためこのままの状態で続きを。


「それで文字が書かれていた日、私は奥の竜の巣辺りまで進んだんです。そうしますとそこにはドラゴニュートがいたんです」


「ふぉふぁふぉひゅーひょ!?」


「私は命かながら逃げれまして、その後ギルドに戻ってグレイさんにこの事を話しました。そうしたらグレイさんはこれを見て古代文字じゃないかと」


「ひょふぇふぁふはひ――」


 さっきからこの状態でまだ喋ろうとしている!

 少しは我慢してよね!


「さ・ら・に・ですね! グレイさんはこうも仮説を立てました、この古代文字はもしかしたらその出会ったドラゴニュートが書いたのかもしれないと」


「ふょふぇふぁふぁんふぁえふぁふぇふゅ――フグ!?」


 ああもう、この口を縫いつけてやりたいわ!


「それでですね、ジゴロ所長さんの所へ行きこの文字について調べて来る様にと頼まれたんです。わかりましたか? ……あれ? ジゴロ所長さ――」


「――――」


 しまった! 塞ぐ力が強すぎてジゴロ社長さんの顔が真っ青になっちゃってる!


「すっすみません!!」


「――ぷはっ、いやはや、不思議な体験をしましたですな。綺麗な花畑に囲まれた場所で目の前には川が流れてたですな。するとその川の先には死んだ父親が手を振って私を呼んでましたですな」


 それあの世寸前じゃない!

 あぶない、危うく私は人殺しになる所だったわ……。


「ともわれ、色々わかりましたですな。では次は私の質問に答えてほしいですな」


 ジゴロ所長からの質問?

 駄目だ! この人からそんな事されたら質問攻めにあって時間をとられるのが目に見えてる!


「あ~ごめんなさい。私この後に用事がありまして……グレイさんに説明しましたし詳しい思いますので質問はそっちに……」


「いや、これは記録した本人から聞きたいのですな」


「すみません、で用事があるんです! ……それじゃあ!」


 早く外に!!


「待つですな、グイッと」


 なんか紐を引っ張ったけど……なにやら嫌な予感――、


 ――ガシャン!


「――が!?」


 何これ!?

 箱型の鉄格子が振って来て閉じ込められちゃった!

 これじゃ家の外に出れない! というかダンジョンじゃないのに何で家にこんな仕掛けがあるのよ!?


「ちょっと! なんですかこれ!! 出してください!」


「申し訳ないですな、すぐ済みますですな」


 嘘だ!! すぐ済む分けない!

 ハッそうだ、転移石で逃げれば!


「転送石起動! ……あれ? 転送石起動! ……どうして発動しないの!?」


 いつもなからピカって光って登録されてるリリクスの町の入り口に移動するのに!


「ここの建物には転送石を妨害する特殊な方陣が描かれてますな。あの扉からしか外に出られませんですな」


 だから何で家の中でそんな物が必要なのよ!!


「誰か助けてええええええええええ! グレイさぁああああああああん!」



 ◇◆同日同刻・リリクス町の酒場内◇◆


「へ、へっしょん! なんだ? 特に寒くもねぇのに突然くしゃみが……」


 うーん? 風邪の前兆かな、まぁそんなの酒を飲めば治るってもんよ!




 ◇◆アース歴200年 6月14日・夜◇◆


「――以上が……私の……経験した……事……全部で……す……」


 つっ疲れた……。

 もう何時間、この檻の中で質問攻めされたんだろう。

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