え~と、バザーを道沿いに真っ直ぐ行くと森が……あった、あった。
この奥に建物があるんだよね、でもへんてこなってどういう事なんだろう?
「……ここで考えてもしょうがないか、行ってみればわかるよね」
※
「…………」
ここだ……この建物に間違いなくジゴロ所長さんがいる。
「……でも、何なの……これ……」
へんてこの意味がわかった、1つの建物なのに真ん中の部分は黄色、右側部分は赤色、左側部分は青色に塗られてる。
3色に分けてある時点でおかしいのに、黄色の部分はあちこちにモンスターらしき形を模した石造が突き刺さって、赤色の部分はありとあらゆる所が捻じ曲がって、青色の部分はあらゆる所が角ばってトゲが付いてる。
なんでこんなへんてこすぎる建物を建てたんだろう……。
「……って、あれ? これってどこから入ればいいのかしら?」
入り口らしき扉がないんですけど、それに窓もないし。
「ん~? あ、そうか。たぶんこっちが裏側で向こうが表なんだわ」
仕方ない向こう側に行ってみよう。
でも結構大きい建物よね~、ギルドの建物と同じか少し大きいくらいかしら。
向こう側に行くだけでも結構歩かないといけないなんて変な話……だよ……。
「って! 何これ!? きもちわる!!」
こっち側の地面にはアフロヘアーのまん丸メガネをかけたちっこいおっさんの全裸の銅像がいっぱい並んでる!
それも1体1体よくわからないポーズで大事な所を隠してるし、てかあの女豹のポーズに一体何の意味があるんだろ……ただただ気持ち悪いだけなんだけど。
「……うん、見なかった事にしよう」
その方がいい。
じゃないと私自身おかしくなりそうだし。
「――さて入り口は……え? 嘘でしょ!? こっち側にも扉も窓もないし!!」
何で? どうして? さっきの側とほとんど同じ形じゃない!
あ、もしかしてこれ建物じゃなくてオブジェかも。
「そうだよね~いくらへんてこと言ってもこれが人が住む建物じゃおかしいもんね~」
「ここに住んでいるもんですけどな、そんなにこの建物はおかしいですかな?」
「おかしいも何も――ひっ!?」
あの銅像が話しかけてきた!?
「何をそんなに驚いているのですかな?」
いや、違う、普通の人だ。アフロヘアーのまん丸メガネをかけたちっこいおっさんが目の前に。
という事はあの銅像のモデルがこの人なんだ……さすがに服は着てるけど。
「あ、いえ、突然話しかけられもんで……すみません」
驚くなって言う方が無理があると思う!
「おおぉ、それは申し訳なかったですな。それで家に何用で来たのですかな?」
やっぱりこれ家だったんだ。
この人は助手さんかな?
「あ~グレイさんの紹介でジゴロ所長さんって方に会いに来たんですけど……いらっしゃいますか?」
「ほう、グレイ氏に聞いて私に会いに来たとですな、はてさてどんな用件ですかな?」
ん? 私に会いにって。
「……え? じゃあ……まさか……あなたが……」
「おお、自己紹介が遅れましたな。私はここの研究所の所長のジゴロといいますですな」
やっぱりいいいいいいいいいいいいい!?
「あー外で立ち話もなんですな。中へどうぞですな」
どうぞって言われても、どこから入るの? これ。
「今カギを開けますな」
え? カギを開けるってどこに鍵穴が……。
ジゴロ所長さんがカギを取り出した。
そして黄色い部分にある1体の石造の口に……カギを差し込んだ?
――ガチャ
カギが開く音!?
――キィ
石造の首を回したら中に入れる入り口が現れたし!
「さぁどうぞですな。入ってくださいですな」
口の部分がカギで頭はノブ……つまりあの石造が扉だったの!?
そんなのわかるか!!
※
「えーと……そういえばお嬢さんのお名前を聞いてなかったですな」
「あ、私はコレットといいます」
外もおかしかったけど中も負けず劣らずおかしなものでいっぱい……。
「コレット氏ですな。――ではお茶をどうぞですな」
「あ、ありがとうございます……」
あれはモンスターの骨かな? あっちの水の入ったビンには何かうかんでるけど……え!? あれって目玉じゃないの!?
怖い、純粋に怖い!! このお茶も飲んで大丈夫なのかな?
さっさと遺跡の事を話して早くここから去ろう!
うん、絶対その方がいい!!
「それでコレット氏、先ほどグレイ氏の紹介で私への所へ来たといってましたですな」
「あ、はい。そうです」
「グレイ氏は元気にしてますかな? しばらく会ってなかったですからな」
そういえば一時この町から離れてたんだっけ。
「はい、グレイさんなら先日に冒険からリリクスに戻られました。元気にしていますよ」
「そうですな、それは何よりですな。おっと私に話がありましたな。話がそれて申し訳ないですな、本題をどうぞですな」
この時の私は思ってもいませんでした。
このジゴロ所長さんの真の恐ろしさを味わう事を……。