「……あの、自分で言うのもあれなんですけど、この話信じるんですか?」
「ああ? コレットがそんな嘘をついて何の得があるんだ? まぁこの目で見てないか何とも言えないが、嘘だと決め付けてそれが本当だとしたら大問題だからな」
「なるほど……」
グレイさんが相当困った顔してる……そんなに強いモンスターだったのか。
そう考えるとあの時は逃げて良かったわ、じゃないともしかしたら今頃私……想像しただけで背中に寒気が!
「しかし、まいったな……俺の知らない間にドラゴニュートが住み着いていたなんて……こりゃこれからの探索が難しくなるぞ……ん? まてよ、もしかしたら――」
「どうかしたんですか?」
「……この古代文字はそのドラゴニュートが書いたんじゃないか?」
「え? そ、そんな事が可能なんですか?」
モンスターが文字を書くなんて信じられないんだけど。
「大抵のモンスターは文字なんて書けないが……ドラゴニュートは人並みに知識があるからな、書いた可能性も十分考えられる」
「あ、そういえば私が鉢合わせした時に普通に喋ってました」
といっても年寄りくさい口調だったけど。
「それにコレットの話だと、文字が書かれていたのとドラゴニュートがいたのと同じ時だ、偶然とは思えない」
そういえばそうね。
「なるほど……でもなんでそんな事を?」
「それこそ一番わからん、本人に聞かない限りな。想像するのであれば何処かで見たのをまねて落書き程度に書いた、そのあたりじゃないか?」
「落書き……ですか……」
う~ん、それだと入り口の文字は何となくわかる気がするけど、何でわざわざ罠の前にも?
「もはや俺がどうこう考えられる問題じゃないな、これは。――よっと」
グレイさんが席から立って歩き出したけど、どこに行くんだろ?
「え? じゃあ、どうするんですか?」
もしかして探索をやめてこのまま帰っちゃうとか?
ダメダメ! そんな事になっちゃったらケビンさんを神父様達の元へ帰せなくなっちゃう!
「ダメです! グレイさん帰らないでください!」
「ああ? 急に大声を出すな、別に帰る気なんてねぇよ、受付に行くだけだ。こういう場合はギルドに相談にかぎる。どの道ドラゴニュートの事で報告しないといけないしな」
「ア、ソウナンデスカ。スミマセン……」
ぐおおおおおおお、みんな何事かとこっち見てる!
すごい恥ずかしい!!
「おーい、ちょっといいか?」
「あ、はい。――ってどうしたんですか? 2人ともそんな深刻な顔をして……もしかして痴話喧嘩ですか!?」
「何をどうすればそんな結論になるんだ。そもそも何で嬉しそうな顔してるんだよ……ちげぇよ」
「なんだ、つまらない……」
本音くらい口に出さない方がいいと思うな……受付嬢なんだし。
「はぁ、本題に入るからな。これは白竜の遺跡の見取り図なんだが、昨日コレットが遺跡で見つけたものを書き写したやつだ」
「ふむふむ……なるほど、この落書きみたいな部分ですね」
落書きか……まぁそう見えちゃうのも仕方ないよね。
「ん? でも、そんな落書きがあるという報告は今まで受けてませんよ?」
「だろうな、俺も今日聞くまで知らなかったし。んで、その後にドラゴニュートと遭遇したみたいなんだ」
「ドドドドドドド、ドラゴニュートオオオオオオオオオオオオオオ!? ――あだっ!」
「ちょっ大丈夫ですか!?」
受付嬢さんが椅子から転げ落ちちゃった!
「そそそそそそそそれはそそそそそそそその――」
受付嬢さんがすんごく震えてるんですけど大丈夫かな……。
「おいおい、落ち着け。ほら深呼吸しな」
「はっはい! ヒッヒッフー! ヒッヒッフー!」
「いや! それ深呼吸と違いますから!」
ベタすぎる……どんだけ動揺してるのよ。
「……だから落ち着けっての。深呼吸はスーハースーハーだ」
「あ、そうでした……スーハースーハー」
大丈夫かな。
「少しは落ち着いたか?」
「ふぅ……取り乱して申し訳ありません。それで、その話は本当の事なんですか? コレットさん」
冷静に見えても手足がまだ震えてるんですが。
いいのかな、この状態で話を続けて……。
「……えと、はい。先ほどグレイさんにも話したんですけど。竜の巣の手前辺りで一部が鱗で翼と尻尾が生えてるちっちゃい女の子の姿をした――」
「確認しますが……全身鱗じゃなくて一部が鱗だったんですね!?」
「え? そうですが……」
なんか嫌な予感がすごくするんですけど。
「トカゲのような姿じゃなかったんですね!?」
「あいた!」
受付嬢さんが私の肩を掴んできたんですけど!?
この流れはまさか――。
「どうなんですかあああああああああああああああ!?」
やっぱり体を前後に揺らしてきたよ!
「ヒトの姿ですううううううううう! だからあああああ! 体を揺らさないでくださいいいいい!!」
何このデジャヴは!
この話をするたびに私は、体を揺さぶられるはめになっちゃうの!?